アンデッド
久しぶりの食べ物を口にし、段々と気力が湧いてきた。
「チェリーコードちゃんもたくさん食べなさいね。大分無理をしたみたいだけど、あと少しここに着くのが遅かったら死んでいたかもしれないわ。いくらバースくんのことを想っていても、自分の身体を厭わなきゃ」
「あ、あはは、ご心配ありがとうございます」
「バースくんもか弱い女の子に無茶をさせるものじゃないわ。自分のためだけに力を取り戻したかったのなら別に構わないけれど、あなたはそうじゃないでしょう?」
「は、はい、まあ……」
「あら、嫌ねぇ。年を取ると説教臭くなっていけないわ。さあさあ、どんどん食べて」
果実と木の実で腹が膨れてきた頃、俺はレティがまだ何も口にしていないことに気付いた。
俺たちがいるから遠慮してくれたのか。なんだか申しわけないな。
チェリーコードと無我夢中で食べていたせいもあり、バスケットはほとんど空。もうレティの分は残っていない。
「レティさん、ごめんなさい。俺たちばっかり食べちゃって」
「いいのよ。残りも全部食べて。私は食べなくても平気だから」
「そんな。そこまで気を遣ってもらわなくても――」
「あら、気なんて遣ってないわ。不老不死者が食事をする意味もないでしょう」
不老不死者――そういうことか。これが仙人と呼ばれる所以か。
「アンデッド――未だ前例がない特殊なクラス。死なない代わりに死を見続けなければならない呪いをかけられた、憐れなクラスよ」
俺はレティの中に孤独を見た。それも、永劫の時を経て深く沈んだ底知れない孤独を。
死を見ない唯一の方法は、人間と関わらないこと。レティはそのためにこのレテイシア山の頂上で暮らしているのだろう。
「バースくん、憐れな私のお願い、聞いてくれる?」
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