ベルズの説得
まどろみから覚める前に俺の手は懐の銃を握っていた。
「バースちゃん、遊びましょう!」
ぼやけた視界の中で赤いシルエットが蠢いた。眼をこすると、そこには俺が捜していた大女がいた。
「ん、ベルちゃんか。今は乗り気じゃないから出直してきてくれ」
「そんな! せっかく来ましたのに!」
「寝床を壊されちゃ困るんだよ。今日は帰ってくれ。話をするだけなら別だけど」
「話、ですか?」
「ああ」
「仕方ありませんわね。じゃあ、お話しましょうか」
ベルズは大人しく床に正座した。
聞きわけがいい。刺客にしてはあまりにも素直すぎる。
「とりあえず、二人を紹介しておこうか。こっちがチェリーコード、こっちがアレシャンドラ」
「よ、よろしく」
「よろー」
「チェリーちゃんとアルちゃんですわね。ワタクシはベルズ。ベルちゃんと呼んで」
フレンドリー。やはりどうしても敵とは思えない。
俺はベルズに缶ジュースを勧め、スナックの袋を開けた。
「ベルちゃんはギャングのメンバーなのか? ギャングは悪いやつらの組織なんだぜ?」
「ワタクシはギャングのメンバーではありませんわ。悪い人でもありませんわ」
「じゃあ、なんでギャングの命令に従うんだ?」
「破壊できなくなってしまうからですわ。ワタクシ、破壊するのが大好きですの。でも、命令に従わないと破壊させてもらえませんの」
本来なら命令に従う道理はない。破壊したければギャングごと破壊してしまえばいい。
これは一種の洗脳がかけられてるな。改造人間にする段階で従順な道具に変えられてしまったんだ。
ギャングへの怒りが沸々と込み上げてきた。
「ベルちゃん、そんなやつらに従うことはない。破壊したいなら俺につけばいい」
「どういうことですの?」
「好きなだけ破壊させてやるよ、ギャング共を」
そう言うと、ベルズは無垢な子供のように目を輝かせた。
「本当ですの!?」
「ああ、本当だ。これからは自分の意志で破壊するんだ。破壊したら駄目なものは俺が教えよう。君は自由だ」
「自由……ワタクシ、自由になれるのですね!」
ベルズの説得は成功に終わった。これで強力な味方が手に入った。
――明日、ギャングは完全に消滅する。
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