第13話 決闘☆リラ工房vsアリ・ハリラー党

「強情ですね。リラ・シュヴァルべ」

「貴方は強欲です。アリ・ハリラー」


 睨み合うリラ・シュヴァルべとアリ・ハリラー。

 アリ・ハリラーは静かに右手を下ろした。それに対応し、エクセリオン三機は武器を収めた。


「あら、攻撃しないのですか?」

「このような兵器を使って脅迫するのは、やはり大人げないと思うのですよ。ここは……そうですね。一つ勝負しませんか? 勝った方がその魔石を自由にできる」

「貴方の言いなりになる気はない。さっさと退散することが肝要ですよ」

「強情ですねぇ。リラ・シュヴァルべさん。貴方には選択の余地はないと思いますが?」


 相変わらずニヤニヤと笑っているアリ・ハリラー。リラは彼を睨みつつも静かに頷いた。


しゃくさわりますが仕方ありませんね。貴方の策に乗って差し上げましょう。それで、勝負の方法は?」


「野球拳!」


 自信満々に答えるアリ・ハリラー。

 しかし、その場の全員が、アリ・ハリラーの部下でさえ、彼を白い目で見つめていた。エクセリオン三号のパイロットも、ヘルメットのシールドを上げて後部座席のアリ・ハリラーを見つめていた。


「冗談だ。冗談だ」


 アリ・ハリラーが慌てて前言を撤回する。

 リラ・シュヴァルべだけでなく、その弟子の子供にさえ白い目で見つめられたのだからある意味必死なのだろう。

 咳払いをしながら話始める。


「バトルですよバトル。血沸き肉躍る壮絶なバトルで決着をつけようではありませんか。貴方ご自慢の魔導生命体と私の部下が戦います。その結果によって勝者を決め、その陣営が魔石を自由にできる。いかがですかな? リラ・シュヴァルべさん」


 自信満々に語るアリ・ハリラー。

 反対にリラの表情は暗い。それは恐らく、魔導士の戦いにおける大原則に関するものであろう。即ち、いかなる結果となろうとも自己責任の原則が適用される。怪我をしたり死亡したりしても、全てその者の責任に帰すというものだ。


「魔法戦の原則は知っているのでしょう? アリ・ハリラー」


 物憂げ返事をするリラ・シュヴェルベだが、アリ・ハリラーは逆にハイテンションだった。


「全てが自己責任。死んだ者は死に損ですからね。望むところですよ」

「そう。では約束なさい。この件に関わるのは私一人だけ。後ろにいる弟子二人は参加させないと」

「勿論ですよ」


 ニヤニヤしながら答えるアリ・ハリラーだった。しかし、グスタフとフィーレが不満顔で抗議する。


「ししょー。僕も戦うよ」

「私も戦います。師匠だけに危険を背負わせる訳にはいきません」


 リラは頷きながら、そして笑みを湛えながら二人を見つめた。


「その気持ちだけで十分です。貴方たちは後ろに下がっていてください。いいですね」


 有無を言わさない強い態度のリラだったが、同時に片目を瞑って合図をした。フィーレはその意図を悟ったようで、グスタフの手を引き後方へと下がっていく。グスタフはまだ納得していない様子で何度も後ろを振り返るのだが、フィーレは強引に彼の手を引いていた。


「さあ、誰が戦うのか? 私の可愛いアズダハーとフォルカスと」


 リラの正面に立つ黒龍の騎士フォルカス。

 黒い鎧で覆われた体に竜の尻尾がある。そして黒い大盾を構えながら、腰の剣を抜いた。


 双頭の大蛇アズダハー。

 リラの周囲を一回りした後、その二つの大顎を開きアリ・ハリラーを威嚇している。


「貴方の魔導生命体は二体。ならばこちらも二人出しましょう。それで構いませんね」


 アリ・ハリラーの問いにリラは頷く。


「リュウヤ、ブレイバ。出番ですよ」


 アリ・ハリラーの掛け声に頷いて、エクセリオンの操縦席から二人が飛び降りた。エクセリオン一号から飛び降りたのがリュウヤ。背が高く、がっしりとした体格をしている。エクセリオン二号から飛び降りたのはブレイバ。リュウヤと比較すれば華奢な体格だが、金色の髪と狐の耳と尻尾を持っている。


「そこの化け物を始末すればよいのですね。アリ・ハリラー様」

「いかにも雑魚って感じの面構えだぜ」


 ブレイバとリュウヤがうそぶく。


 アリ・ハリラーは頷きながら右手を前に出す。


「さあやれ。あの化け物を叩きのめせ!」


 アリ・ハリラーの言葉を受け、リュウヤとブレイバの体が輝き始めた。

 リュウヤは一回り大きくなり、漆黒の鎧をまとった騎士へと変化していた。そしてブレイバは体が1.5倍ほどに膨れ上がり全身毛むくじゃらの獣人へと変化した。


 地面から土の粒子が舞い上がりリュウヤの右手に集まっていく。それは黒々とした大剣へと変化していく。


 そして、漆黒の騎士と巨大な獣人が、リラの魔法生命体へと襲い掛かった。

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