第51話 アナタの声を
「さて、エレナさんはどうなってるかしらね?」
学校への道を歩きながら雪花がそう言う。
相変わらず俺の腕は埋まった状態だ。
「どうって?」
「昨日の事があったのだもの。いきなり様付けで呼んできたりるかもしれないわよ?」
んなアホな
「そんな事になったら俺はますます教室に居場所がなくなるんだが?」
「あら、元々そんなに無いじゃない。私もだけど」
まぁ、そうだけど……
「二人ともそんな悲しくなること言わないで……」
今度は逆側の腕にいる紗雪がそう言ってきた。埋まることはないが、指を絡ませてきてちょっとこそばゆい。
「だって……なぁ?」
こればっかりはどうしようもない事実なので、雪花にも同意を求めた。
「えぇ。だって今の私達の状況で何も言われないもの。これがラノベなら、前髪を上げた私が実は美少女で、髪型を変えた悠聖君が実はイケメンで大騒ぎ──なんてなるんでしょうけど、イケメンはどんな髪型でもイケメンだし、私は元々美少女だもの」
もっと悲しくなること言い始めた。
「まぁそうだけどぉ」
そうだけど!?
「でも、悠くんはあたし達から見たら一番かっこいいからね!」
「姉さんは何当たり前の事言っているの?私の彼氏よ?当然じゃない」
「アタシ達の!でしょ!あっ……」
「悠聖君、ねぇ聞いた?今姉さんがハーレム認めるような事言ったわよ」
「ち、ちがう!今の無し!」
「ふふっ、時間の問題ね。姉さんの唯一の味方のエレナさんはきっともう陥落済みよ」
「うぐぅ」
なんだこの会話。
「おはようございます。みなさん」
後ろから声がして振り向くとそこには、相変わらず笑顔なエレナがいた。
輝く白銀の髪に透き通るような白い肌。吸い込まれるような蒼い瞳に、その目の下のひどいクマ。……クマ?
「なぁ、その目の下のクマなんだ?凄いぞ」
「え?目立ちますか?一応ファンデで軽く誤魔化したつもりだったんですけど」
化粧してそれ!?
「寝不足なんじゃないか?」
「寝不足?違いますよぅ。寝てません。悠聖さんが寝かせてくれなかったじゃないですかぁ……」
ザワッ
おぉーい!他の生徒もいるところでそんな根も葉も無い事いうな!誤解されるから!
「な、何言ってんだ?俺はちゃんと家で寝たぞ!」
「あぁ、すいません。脳内の悠聖さんでした。もう、どんなお仕置きされるのかと思うとゾクゾク……じゃなくてドキドキして眠れませんでした……。ワタシってバカでしょう?」
「あ、あぁ。バカだな……」
ピロンッ
ん?なんの音だ?
「はい、悠聖さんの「バカだな」録音させていただきました。目覚まし音に設定しないと♪ふふっ」
おぉぅ……
「ねぇ悠聖君。これ、どう責任とるのかしら?さすがに予想外なのだけど?」
雪花が右袖を引っ張ってくる。
「せ、責任?」
「うん。もうエレナちゃん手遅れだよ。堕ちきってるよ。悠君のせいでしょ?コレ」
紗雪が左の袖を引っ張ってくる。
「さ、みなさん。早く学校にいきましょ?」
エレナがすんごい笑顔で俺の背中を押してくる。
これ、来年奈々が入学してきたらどうなんの?
◇
エレナは、通学中の一件以外では普通だった。化粧をなおしたのか、クマはほとんど消えていて目立つ様子はない。
今は授業中だが、しっかりとペンを持ち、黒板を見ていた。
「ねぇ、はしも……」
藤田黙れ
ちなみに教科書はまだ届いてないらしく、いまだに俺と一緒に見ている。
そこで先生が次のページにいったので、俺もめくろうとしたが、エレナの肘が乗っていてめくれない。
「なぁ、肘どかさないとページめくれないぞ」
「……」
「おい、エレナ?」
おかしい。目は開いてるんだが……
エレナの目の前でペンをプラプラさせてみるが反応がない。
これは──寝てるな。まず間違いなく。
まぁ、一睡もしてないならしょうがないか。けど俺は悪くない!
俺は力抜けして、ページをめくるのを諦めて、手をだらんとおろした。
それがマズかった。
俺は右利きでエレナは右側に座っている。そして教科書を一緒に見ているため距離も近い。そのため──俺の持っていたペン先がエレナのふとももにかすった。
「アッ……っっ!」
ゴフッ!ちょっ!声!
艶かしい声と共にエレナが目を覚ました。
幸い、回りには聞こえないみたいで助かったけど、エレナは顔を真っ赤にして震えている。うわぁ、やっちまった!これはさすがに怒られる!
「あ、ゴメ……」
「ま、まさか授業中にお仕置きしてくるなんて……んっ!思いませんでしたぁ……。さすが悠聖様……」
様つけやがった。謝るの無し。てかこれ予想した雪花がすげぇな!
おい、そんな潤んだ目で見てくるな。少しずつ寄ってくんな。授業中だぞ。
早く授業終わってぇぇ!
──
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