第8話 龍の目覚め

「くっ・・・」

本校舎、1年の教室が並ぶ廊下。

2人の侵入者をはね除け、1組の教室へとたどり着いたアイギスとキバ。

「先生!大丈夫ですか!?」

「助けに来たよ~」

「おうお前ら!なんで入ってきた!?」

「ジャスティンのピッキング~」

(おい何ピッキングしてんだよ!)

またしてもクラスの心が一つになる。

「まぁいいや。おーい!タマモ!いるか!?」

「はい、ここに」

掠れきった少女の声。1組の霊術士、タマモだ。

「ボスどこだ?探せる?」

「任せてください」

言って、膝から崩れるタマモ。

今、タマモの肉体には魂がない。生霊となって周囲を見渡している。

「・・・!見つけました。本校舎三階、空き教室。敵の持ち物は魔道書。色と、中の呪文を見る限り、鏡、もしくは影。自分を増殖させる魔法です」

「さっすがタマモ!頼りになる!」

「じゃ~、先生もいっしょに~」

「行かないぞ」

「はぁ!?」


「い、行かないってどういうことですか!?」

「その通りだが?」

「あーもー通じねぇ!!」

「あれだ、お前ら7人で行けっつー話だ。お前らはもう「第二段階」に入ってる。今回は突発的で抑えきれてない。それを制御したうえで、奴を倒してこい」

「えぇ・・・。もし倒せなかったら?」

「死ぬ前に回収して、俺が倒す。まぁ面倒臭いから、自分達でやってくれや」

「大丈夫かこの先生・・・」

「メイルー、カーバンクルよろ」

「なんで私がこんな雑用を・・・」


5分後、集まった7人。

「じゃあ、それぞれの「第二段階」を教えて」

「じゃあ俺から。<溶岩の弾丸バレット・オブ・ラーヴァ>。溶岩を弾丸にして、相手へ発射!って感じ」

「俺が<自操人形マリオネット>。剣から生成した糸を天井に刺して、自分にも刺して、操る。骨折れるのはご愛敬!」

「<迅雷>。速度をめっちゃ上げる。」

「<隠者の衣インビジブル>。不可視にする」

「<大地の願いホープオブガイア>~。「空を飛ぶ」とか「地面から棘を生やす」とかの実行可能な願いを実現させるよ~」

「<惑星の領域プラネットフィールド>。コインとかを周回させる領域だよ」

ポートは領域、他の皆もなかなか個性的だ。

ただ、キバだけ「第二段階」に到達していない。

「・・・まぁ、普通は目覚めないものだから」

「今平均は発動するな~!!」

「まぁ何はともあれ、全員揃ったのなら、いってこい。死ぬなよ!」

「はい!!」



本校舎三階、空き教室。

「お邪魔します!どーも1年1組、出席番号6番、キバ・ロンギです!あなたが今回の襲撃の主犯で間違い無いでしょーか間違い無ぇなお前は倒す!」

なんか高速でまくし立てるキバ。

それに続くかたちで残りの6人が来る。

「いやぁ、びっくりしたなぁ。まさか君達みたいな学生に、選抜したメンバーがやられるとは思って無かったな」

「そりゃどーも!お褒めにあずかり光栄です!!」

「でも、君達は邪魔だ。僕はそこの彼が持ってる最上級呪術物品オーバー・カース・アーツが欲しいんだ」

「へっ!そう簡単にお前に渡すわけにはいかねえな!!」

「そう言うと思ったよ・・・。でも、その為に僕がいる」

魔道書を開き、呪文を唱える。

「〔おいで、僕の分身。君達の敵が前にいる〕。<ドッペルゲンガー>」

主犯の分身が、6人。

「さぁ、じゃあお友達は分身に任せて、僕が相手だ!」

「・・!」

一瞬。約3メートルあった筈の距離を一気に詰められる。

「言ってなかったね。僕の名前は、マルクだよ!」

主犯、マルクの出す短剣に胸元を切られる。

「・・・っはぁ、んだよ、この魔術師!」

悪態をつく。しかし、気づけば胸元の傷が癒えている。

「な・・・傷が」

瞬間、右目に痛みが訪れる。

周りに魔方陣が十数個浮かぶ。

キバの中で、何かが啼いた気がした。

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