第68話 陰キャな僕の夢とは
「そういえば気になっていたんだけどぉ」
「ん、何が気になるの? 風花さん?」
「来人くんってさぁ、将来の夢ってあるのぉ?」
「夢、かぁ……へっくしょい」
どうも、高校の放課後の薄暗い帰り道に風花さんと楽しく会話をしていたら、彼女からなんだかはっとした表情でそんなことを訊かれた阿久津来人だよっ!
連なる街灯に照らされながら鼻を擦った僕は、風花さんからの唐突な問いに思案しながらゆっくりと通学路を歩く。
ああー、肌寒い……。どうやら高校内でもインフルエンザが流行中っぽい。風花さんと一緒にコンビニで素晴らしき読書会(?)をした後日にわかったことだけど、その後料理部の面々が次々にインフルエンザだったことが判明。
幸いまだ学校中には広がってないけど、結果全部の部活が活動停止になったみたい。
その決断下した校長勇気あるかもー。
「むぅ、考えてるぅ?」
「あ、あぁっ! もちろん考えてるよ風花さん! 将来、夢、ドリーム、フューチャー……うーん」
口を少しだけ尖らせた風花さん。彼女はつぶらな瞳で僕の顔を覗き込むが、僕はそれから逃げるように空中に視線を彷徨わせながら呟く。
うっ、やめて! そんな純粋で砂糖菓子が詰まったようなキラキラおめめで僕のハートを撃ち抜かないで! ……いやもうとっくにハチの巣どころかツァーリ・ボンバで焦土だけどねっ!
うーん、でも夢かぁ……。
「正直これまでの人生でそんなこと一回も考えたことなかったなぁ」
「えぇ、うそぉ? 全然? これっぽっちもぉ?」
「うん。まぁしいて言えば安定してた方が良いから公務員の方が良いんだろうけど……」
「うん……うぅん?」
僕が将来に就く職業について必死に頭をひねるも上手く出てこない。
ラノベやウェブ小説読んだりするのにも体力がいるから、出来れば時間にゆとりがある超ホワイト職業の方が良いんだよね。
就職したら実はそこはブラック企業で、上司や同僚のパワハラ・モラハラが原因で体調を崩したらガチで笑えない案件だからねぇ(ガタガタッ)!
……あれ、だとしたらコミュ障の僕って詰んでね?
風花さんだからこそ普通に話せてるけど、その他大勢となると僕の
『あれ、これは案外思った以上に深刻なことだぞ……!?』と僕は考えるが、その後風花さんは申し訳なさそうな表情で言い辛そうに言葉を続ける。
「あぁー、えっとね来人くん。そっちじゃなくてねぇ……?」
「え? ごめん風花さん、違った?」
「まぁ"夢"っていう言葉も漠然としてるしぃ、厳密にいえば違うことも無いんだけどぉ……。私が言うのは将来のお仕事も大事だけどぉ、したいって強く思える"何か叶えたい夢"はあるぅ?ってことぉ」
「したい……叶える…………」
なる、ほど……。風花さんが僕に訊きたいのは職業的な将来じゃなくて、僕自身が心に
僕のしたいことは……、えーっと……。
――――――。
―――。
―。
(―――なんだっけ?)
固まった僕は数瞬だけ過去を遡って思考する。
どの場面を思い返しても、"叶えたい夢"など希望に満ち溢れた素晴らしいものなんて僕の中の記憶には無かった。
それとも、ただ僕が忘れてしまっただけだろうか。
うーんどうしよ、全っ然思い浮かばないや。いや……ま、そりゃ当たり前か。自分の意見なんて持たないまま、周りに流されるまま生きてきたのは僕なんだし。
夢を持ってないのもしょうがない……って、そんなわけあるか!?
え、もしかして僕って夢も希望も何もない結構枯れてて寂しい人間だった!? いや陰キャだけど! 人見知りだけど! ただのライトノベラーだけれども!?
「え、どうしよう風花さん助けて! 全然思い浮かばない!」
「~~~っ! ご、ごほん。やだなぁ来人くん、そんな雨に濡れた子犬みたいに見つめないでよぉ。…………そんな可愛い顔されたらきゅんきゅんしちゃうじゃぁん」
「ご、ごめん風花さん。僕、少し女々しくて気持ち悪かったよね……あと最後なんて?」
「もうっ、ネガティブに考えるのは来人くんの悪い癖だよぉ! あとなんでもなぁい♡」
「そ、そう……?」
何かに耐えるようにして俯きながら胸を押さえてた風花さん。どうしたのかと思い訊ねるも、にこやかに返事をした彼女からとてつもない圧を感じました。
なので深くは追求しないことにしました。はい!
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