TRONプロジェクトの中心人物である坂元健さんと話をしたよ

 さて伊東への慰安旅行も無事終わって、千葉へ戻ってきた俺達は相変わらず学生らしく遊ぶわけでもなく、バイトに明け暮れるわけでもなく、宿題をこなしつつゲーム製作の毎日に戻っている。


 そこで会長からの報告がはいった。


「坂元健様とのお話の予定日時が決定しましたわ」


「ああ、助かるよ」


「場所は東京大学理学部情報科学科の応接室でとのことです」


「ああ、東京大学理学部情報科学科で今は働いてるんだっけ。

 了解、服装は学生服でも大丈夫だよな」


 ゲーム会社や出版社への持ち込みにはわざわざ堅苦しい服装で行く必要はないが、今回はちゃんとした礼服で行ったほうがいいんだろうけど、学生なら多分学生服でいいはずだ。


「ええ、それで問題ございませんわ」


 それから俺は他の女の子たちに言う。


「今回は俺と会長だけで行ってくるから、その間はゲーム製作を進めるなり、宿題を終わらせるなりしておいてくれるかな。

 ああ、いやせっかく夏休みなんだから遊んできてもいいけどな」


 俺がそう言うと斉藤さんがうなずく。


「そうね、たまにはのんびりと書店でも見て回ってくるわ」


「あ、じゃあ、私もいっしょに行って目ぼしい絵本でもみてこよー」


「あ、わ、私もいきたいです。

 園の小さい子たちに絵本を買っていってあげたいですし」


 斉藤さんと一緒に最上さんと浅井さんも本屋へ行くらしい。


「私は谷津遊園でバンドの連中がどうしてるか見てくるです」


 朝倉さんはまあそっちへ行くよな。


 というわけで俺と会長でやっぱり夏休みの東大へ行くことになった。


「東大かぁ、いずれは来るつもりだったけどなんか緊張するな」


「あら珍しいですわね」


「おいおい、俺だって普通の高校生だぜ」


「普通の高校生と言っても全く似合いませんわよ?」


 というわけで俺達は上野駅に比較的近い東京大学理学部へ電車で向かった。


「失礼します、本日このお時間でのアポを取っています北条と申します」


「はい、確認いたしました。

 応接室へご案内いたしますのでどうぞ」


 というわけで俺たちは応接室に通された。


「やっぱゲーム会社や出版社とは雰囲気がぜんぜん違うな」


「営利が優先の会社と、学術の研究機関である大学では違うのは当然ではありますわね」


 ああ、坂元健さんなどが大学の助手という立場だったりしたのも、TRONプロジェクトが潰されてしまった原因の一つだったのかもな。

 

 というわけで応接室へ案内されしばらくして坂元健さんがやってきた。


「今日はTRONプロジェクトについての話と聞いてるけど、高校生で興味を持ってくれるというのは珍しいけど嬉しいね。

 僕が坂元健だ」


「株式会社ライジング代表取締役の前田健二です。

 よろしくお願いいたします」


「秘書の北条精華です。

 よろしくお願いいたします」


「うん、君たちはTRONプロジェクトに対してお金を出してくれるそうだね」


「はい、そのために40億を用意していますわ」


 流石にその金額にちょっとびっくりしているらしい。


「それだけの金額があればとても助かるけど……」


 と坂元さんは少し歯切れが悪い。


 日本の大学の研究費は決して多いとは言えない。


 特に地方の国立大学などは深刻でそれは即時に金になると見られていないということなども理由にある。


「ええ、すぐに回収できる金額ではございませんでしょうね」


 会長がそういった後で俺は漫画のコミックを取り出しながら言った。


「ですが別にそれでいいのです。

 この漫画をご存じですか?」


 俺は北東の拳のコミックス一巻を坂本さんに見せてみた。


「いや、あいにくそういうのはあまり興味がなくてね」


「この漫画は核戦争が起きて文明が完全崩壊した世界ですが、その中に種籾爺さんと言われる人物の話があります」


「ん? 種籾?」


「ええ、モヒカンの暴力的な連中が爺さんから種籾を奪って行こうとするのですが、その爺さんは種籾を蒔いて育て増やすことで食糧が今よりいっぱいになり、それにより争いをなくそうとしました。

 そして大事なのは今日より明日、今より未来、個人より全体と言っています。

 もっとも爺さんは悪役によって殺されていますけどね。

 TRONプロジェクトも明日より今日、他人より自分、の連中に潰されそうになっていたのではありませんか?」


「あ、ああ、そうだ、よく知ってるね。

 なぜかその連中が突如逮捕されたのではあるのだけど。

 もしかしてそれも君たちが関与しているのかい?」


「いやいや、まさか、僕たちはただの高校生ですし、そんな事はできませんよ。

 ただいずれ身の回りのもの多くの物にマイコンチップが組み込まれて、制御される時代がくることは間違いがないと僕たちは確信しています。

 そしてそれを標準となるTRONによって連携させる事が重要ですし、その開発が利益を産めば、返ってより早くより大きく、世の中に広まり使われることになります。

 しかし今のままでしたらアメリカにすべて押さえられてしまうでしょう」


 実際はTRONに関して組み込み型OSとしてのシェアは“前”でも6割以上は押さえたんだけど、結局アメリカに買われるんだよな。


「ああ、うん、大体はそんな感じになるのではないかと僕も思ってるんだ」


「だからこそTRON推進財団を設立し著作権と特許を取得し、それなりの利益を上げながらも、許可制かつ少額でその利用を可能としたいんです。

 むろんこれは僕たちが暴利を貪りたいからではありません。

 日本の未来のために著作権と特許を取ることがTRONを守る最善の手段だと思うからです」


 いやもちろん個人的な利益を放棄するつもりはないけどな、慈善事業だけで40億を投資するわけじゃないし。


「できればオープンソースでの無償提供にしたいのだけどね」


「理想としては素晴らしいと思いますが、それではTRONを守ることはできません。

 そして世の中には只より高いものはないんです。

 なお財団に協力してくれる研究者には事実上無償提供に近い状態にはしたいと思ってます」


「なるほど、今日より明日、今より未来か……。

 わかったよ、君たちにTRONの発展のために協力してもらいたい。

 政府が今行ってる第五世代コンピュータ計画についても現実的な方向に舵を切れるように協力してくれないかい?」


「わかりました、そちらに関してもできることはしましょう」


「うん、ありがとう」


「いえ、最終的には日本の未来が明るくなれば自分たちの未来も明るくなりますから。

 種籾を奪って食おうとする連中からそれを守ろうとするのは当然です」


「確かにそうしなければ日本の未来はないからね。

 通産省の局長が日本の技術発展を阻害するなんて馬鹿な話だと思うけどそれが現実だよ」


「大変残念なことだと思いますけどね。

 ただこれで少しは未来を変えることもできると思います。

 会社でパソコンをどこでも使うようになるのもそう遠くないでしょう。

 ですから教育にパソコンを導入するには早いほうがいいですし」


「ああ、その通りだと僕も思うよ」


 というわけで「TRONプロジェクト」は俺が出資した財団で引き続き研究を行うが特許や著作権は申請してオープンソースでの無償提供も取りやめてもらった。


 もっとも財団関係の研究者に関しては事実上自由に使え改変も可能だがな。


 また123便の墜落事故もリコールや整備点検の徹底の結果か航空域での演習がなくなった結果かはわからんが、結局起きなかったのでこれに乗っていたとされるTRONの研究者17人が死んだということもなくなっただろう。


 これについては本当か嘘かそもそもわからんのでなんとも言えないが、本来死んでしまうはずだった著名人の死もなくなったのは多分いいことじゃないかな?


 もっとも航空業界の信用失墜はすでに起きてるんで国内移動で飛行機を利用する人数は目に見えて減っているようだし、海外旅行を取りやめて、国内旅行に切り替えた奴も結構いて、その原因となったパオーイングはかなり窮地みたいだけど。


 そう言えばやわらか銀行の孫忠義はまだ帰化していない在日朝鮮人で彼の父親は日本での密造酒の製造販売、パチンコ、消費者金融で大儲けしていたし、京都陶器の米盛和夫も妻が韓国農業の父と呼ばれる人物の娘で朝鮮と深くつながっていて、中国や朝鮮に日本は詫びるべきだといっていたらしいから、朝鮮人脈による日本つぶしだったのかもしれないな。

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