とりあえず現状をまとめて、女の子たちのアイデアを会長と話し合うか
さて、会長の祈りが通じたのかどうかはよくわからないが、伊邪那美様が月に10トンずつ金をくれるというなら一年で5400億円相当にはなるだろうから、これで大きな企業の買収も可能になるかもしれない。
ただまあ100トンもの金塊をいっぺんに現金化はできないだろうから、実際にそれをやるとしても金塊を担保にして名目上は一旦銀行とかに金を借りるという形になるかな……。
借金はしたくないが金塊を単純に現金化するのは何百万円の何キログラムとかの少額少量の取引であれば問題ないだろうけど、4500億円100トンとかいう単位でやるのはちょっと難しいだろう。
俺がゲーム会社の高校生社長という微妙な肩書だと特にな。
宗教法人への寄付は現金にかぎらず、たとえば土地や社殿などの建物、鳥居などの神具の物納でもよく、金塊もその物納に当たるのでそれそのもの問題はないが、企業買収のための株取得には金塊は使えない。
「株を取得する時に金塊を出されても相手も困るよな」
俺がそう言うと会長が呆れたように言った。
「当たり前ですわ。
でも金は大きく価値を崩すことはないはずですから持っている分には安心ですわ」
「ああ、そうなんだよな」
人間の長い歴史で銅とともに金や銀は通貨として東西の区別なく使われてきた。
最も東アジアでは銅銭が長い間、通貨としては主流で金や銀は貨幣として鋳造されることなく、重さで取引されることが多かったが西洋などでは金貨や銀貨は古くから使われている。
「そう言えば会長、俺たちの役員報酬って今いくらぐらいになってんの?
どうせ高校や大学を出るまでまでは全部会長に管理してもらうから、聞いてもあんまり意味ないかもしれないけど」
「一人当たり月100万円で年収にして1200万円相当にしていますわ」
「え、俺たちそんな給料もらってんの?」
「これくらいであれば法人税より安くなりますから、節税のためにそういう設定にしていますわ。
もっとも厚生年金や雇用保険社会保険などの社会保障費を含めれば会社側の負担はおよそ2倍になりますし、逆に税金で4割ほど持っていかれますから、実際に口座に残るのは年で700万円ちょっとですけど」
「それでも十分多いよな、俺は月一万円の小遣いで十分だったのに」
朝倉さんもそれを聞いて驚いている。
「700万円もあれば最高級のシンセが買えるです」
「ああ、そういった機材がゲーム開発に必要な物であれば、会社として購入すれば損金計上ができますからそうしてくださいな」
「うう、そういう意味ではないです。
でも、どうせ買って家においていても使う暇もないですか」
「そういや俺も去年、父さんに無理言って秋葉原で買ってもらったパソコン殆ど使ってないな……」
なにせ今は家に帰ったら宿題してほぼ寝るだけになっちまってるからな……。
そして年収1200万円って言えば、いい会社につとめてる課長部長ならもらってるだろう金額だけど今年の平均月給が237,400円、年収が3,648,900円という時代だとこれはかなり高い。
給与は物価などの上昇に遅れて上がるんで平成9年(1997年)までは上がっていくんだけど。
「自分の銀行口座なのだから自分で管理したいというのでありましたら、親御さんの許可を得ていただければ通帳などはお渡ししますから、自分で管理していただいても構いませんわ」
「いや、どうせ使う暇も特に買いたいものもないし会長に任せるわ」
俺がそう言うと斉藤さんも頷いていった。
「私もそんなにたくさんお金があっても困るし別にいいわ。
もしあなたが横領でもしたなら警察に届け出るけれど」
「そんなことをするはずがありませんわ。
私も同じだけありますし、個人口座から横領などしても失うもののほうが多いですもの」
会長がそう言うと最上さんも言う。
「まあそうですよね。
私も別にいいです。
お父さんにお小遣いはもらってますし」
朝倉さんや明智さんも特に自分で管理したいわけではないようだけど、いきなり高校生が月100万とか言われてもそりゃ実感わかないよな。
島津さんや毛利さん、明智さんのお兄さんたちはバイトなのでそのまま時給換算だし厚生年金とかの負担はないから払う額は少ないみたいだけど、それでも普通のバイトよりは割はいいはずなんだよな。
まあ、厚生年金に実質加入させなくてもいいと言うのが”前”の派遣会社の派遣社員がもてはやされた理由だったんだろう。
それはさておき現状をちょっとまとめておくか。
まずメインのゲーム制作に関して。
プログラミングは俺が恋愛アドベンチャーのエイサー王伝説、島津さんがテーブルゲームの桃の子太郎討鬼電鉄、毛利さんはSLGの九州三国志、明智さん兄妹はTCGのアイデアをねってる所で、斉藤さんはそれぞれのゲームシナリオの補完、最上さんはイラストなどのグラフィック担当、朝倉さんはBGMの担当、会長はゲーム関係のSAGAやフェニックス、ゲーセンで納入した取引先などに加え、谷津遊園の方の宣伝広告や取引先との交渉、金銭の入出金や書類関係の作成の補助や全体にスケジュール行程の管理等の雑事を全てやってる。
「そろそろ会長の補佐に誰か必要かな?」
「別にこのくらいの人数の会社の仕事くらい私一人で大丈夫ですわ」
「あ、ああ、そうなんだ、さすが会長」
「ふふふ、もっと褒めてくださってもいいのですわよ」
ちなみに普通ならこのくらい一人で大丈夫とか言える仕事の質や量ではないはずなんだけど……会長も化け物じみてる能力の持ち主なんだよな。
いくら司法書士や税理士の先生、ベイサイドリゾートの元谷津遊園社員などにも仕事をだいぶ投げてるとは言え、投げたら投げたでそれがちゃんと出来てるかを確認しなきゃいけないんだけど。
アニメ製作会社の方ではアニメの製作の方も現状の3本、日曜朝の女児向け枠で考えてる”二人はプリティファイター”は藤テレビ系列 、夕方の男児枠で考えてる原作の漫画家さんの許諾を得て作ってる”ギガンティックロボ 地球が止まる日”、同じく夕方だけど青年向けの”メガゾーン22パート2”の二つははテレビto-kyoでの冬からの放映が決まった。
これは谷津遊園の取材の生放送の受けが結構良かったからのようだ。
出版関係は同人作家の発掘自体はコミケで行なうつもりなんでそっちはまだだけど、同時にコンビニのラックで売る、いわゆる日常系4コマ漫画雑誌やゲームアンソロジーを作る計画をしている。
コンビニ雑誌のメリットはこれから増えるコンビニや駅売店などで扱ってもらうことで書店ではない場所や書店が空いていない時間でも気軽に買ってもらえること、書店よりは取次の影響が強くないことや扱われている本が少ないので目立つことなどだ。
後これからは残業漬けになったりしてお疲れ様な人が増えるんで、多分日常系が受ける要素は出てくると思うんだ。
「谷津遊園のオープニングコンサートの方はどうかな?」
「皆さん快く引き受けてくださいましたわ。
もちろんギャラは相応以上に高くしましたが」
これは現状そこまで売れてるというわけでもないというあちらの事情も当然あるだろうけどな。
「うん、それでいいよ。
下手にギャラをけちると後でこじれるし、これから先のことも考えれば他所より優遇したほうが絶対いいと思う」
「人と広告に金は惜しむな、は私のお母様や祖母も言っていることですわ」
「ああ、それはさすがだね」
斉藤さんも納得したように頷いた。
「伊達に長いこと学校経営してないということね」
「ゲーセンのゲームについては今日あたり納入されそうだからいいとして、谷津遊園を使ってやりたいアイデアが、みんなからも色々でたからそれを整理してやるかやらないか決めていくか」
俺がそう言うと会長が頷いた。
「ええ、そういたしましょう」
「まず、食べ物や飲み物の持参や園内での飲食は可能にする」
「ええ、それは構いませんわ」
「じゃあまず最上さんのアイデアの入り口のプラムナードで「似顔絵師」に似顔絵を書いてもらうだけど、これはイニシャルコストもランニングコストもかからないし、儲けはあんまりないけど損する理由がない上に、いい記念品になるだろうからやっていいと思うけど会長はどう思う?」
「特に損失が出る要素がないならやるべきですわ」
「じゃあそういうことで。
最上さんに似顔絵師さんへの声かけは任せるな。
一応場所代で1割はもらいたいって伝えておいてくれる?」
俺がそう言うと最上さんは嬉しそうに頷いた。
「わかりました」
「朝倉さんの提案のうちゲームセンターに隣接してのジュークボックスルームはすでに実現してるからこれはいいとして、カラオケルームを設置するのと原宿のようにアマチュアバンドを呼び込んだり、筍族のような踊りを踊らせたりはどうだろう?
ちなみにカラオケルームは国鉄がダイヤ改正でで大幅に貨物列車を減らしてるから、そのコンテナを譲り受けてその中を改装してソファーとかテーブルを置いて、LDのリモコン操作方式のやつを置けばそこそこ安上がりにできると思うよ。
何ならお客さんに酒とかソフトドリンクとか軽食を提供してもいいと思う」
船舶用コンテナを改造した屋外型カラオケボックスが岡山県に登場したのが今年の1985年で、それまでのカラオケはスナックなどの飲み屋やホテル旅館の座敷などに設置されていて、テープやLDなどを交換するのも手でやるものだったりしたが、80年代初めに、「映像カラオケ」と「リモコン操作が可能なオートチェンジャー」が登場して画面に映る歌詞を見て歌うことが可能になった。
それまでのカラオケはテープなどの曲に合わせて歌詞カードを見ながら歌うのが普通だったんだ。
でこの頃のカラオケボックスはあくまでも歌うのがメインで飲食物などの提供はなくて料金も結構高額だったりする。
敷地自体は結構あいてるからコンテナをいくつか譲り受けて、それをカラオケルームにするのも問題はない。
「それはもとが取れるのですか?」
「間違いなく取れると思うよ」
「ではやりましょう、できればイニシャルコストは最低限に抑えたいですけど」
「ある程度見てくれは整える必要はあるし防音対策もしないとだけど、高級ホテルじゃないから内装にそこまで金はかけないよ」
「もう一つの方はお金もかかりませんし良いのではないですか。
ゴミなどの放置や施設の破壊。破損に及ぶ行為は厳禁としますけど」
「まあそりゃそうだよなあ、女性ロックバンドグループのベッキーもオープニングコンサートに呼べないかな?」
「それは交渉次第ですが有名な方ですの?」
「今はまだそこまでは、だけどこれから伸びると思うよ」
「であれば狙い目ですわね。
出演交渉をしてみましょう」
「バンドへの声かけは朝倉さんよろしくな」
俺がそう言うと朝倉さんは頷いた。
「はい、私にまかせろです。
ロックブームを千葉にも起こすですよ」
「あと、ここへ呼ぶアイドルたちの曲のレコードやCDを許可をもらってレコードCDショップを作って売ったらどうってことなんだけど」
「それは良いですわね。
司法書士の先生や行政書士の先生と相談してみましょう」
「うん、呼ぶアイドル側にもメリットは有るだろうし。
この近くに住んでる人向けにレコードやCDの貸出をしてもいいし、中古の買い取りをしてもいいし、ついでにアニメのビデオテープの販売やレンタルをしてもいいと思うんだ。
貸し出したものをその場の近くで喫茶スペースを作って個室ブースで漫画を読め、CDを聞け、ビデオを見れるようにしたり、家に持ち帰って聞いたり見れたりしてもいい。
管理はバーコードシステムを導入してみたい。
貸出料金は時間や期間、新作か旧作か変えるけど」
「貸出をするとなると管理が大変になりそうですが?」
「だからバーコードシステムを導入して対処したい。
まあ借りパクするやつはいるかも知れないけど、そういう奴は弁護士を通じて延滞遅延金の請求をしよう。
もちろんレンタルする時は身分証明証で身元を確認するけど。
でも一度買えば割と長く金にできそうだとおもうよ」
「ならば、それもやりましょう」
「あと最近倒産したレコード会社の名義を買うのもいいと思うんだけど」
「それはなぜですの?」
「これからヒットしそうなロックバンドとかを俺たちで抱えたいからさ。
最終的にはそういった人たちが有名になった時に所属してるレコード会社と交渉したりするより金もかからなくなると思うよ」
「ならそれもやりましょう」
「あ、うん、取り敢えず儲かればいいってことかな。
会長的には」
「当然ではございませんか。
全てそれを考えた上で提案しているのでしょう?」
「まあそうなんだけどね。
谷津遊園のなかだけじゃなくて、谷津遊園駅の駅前商店街やららぽーとや船橋の駅前デパートにも店を出してみてもいいかもしれないな。
もっともこれは利益が出るかを確認してからだけど」
「そうですわね」
「斉藤さんの提案はまずCDやビデオショップで一緒に大衆小説や漫画などの古書の買い取りや販売と貸出をするってやつ」
「一緒にやるならそれもよいのではないでしょうか」
「まあ、これは利益はそこまででないかもしれないけどね。
ただ小説や漫画は買いたくても置くためのスペースがなくて買えないやつも多いみたいだし俺はいいと思うけど」
「なるほど、ではそれもやりましょうか。
ショップや喫茶スペースはプレハブで立てればすぐですわね」
「ああ、うん、それでいいと思う」
「あとは、似顔絵もいいけど来場者にカメラをフィルム付きで貸し出したり、プロカメラマンに記念撮影させたり、その場ですぐ写真を渡せるようにポラロイドカメラでの撮影を一枚いくらでやってもいいし、ビデオカメラをフィルム付きで時間あたりいくらかで貸してもいいかな」
「ふむふむ、確かに記念にと写真を残したい方はいるでしょうね」
「カメラを貸した場合はカメラのレンタル料以外にフィルムを買い取ってもらって現像は自分たちでやってもらうか、現像室を作って現像料も取るか、ただフィルムを渡したほうが持ち帰りの邪魔にはならないと思う」
「そうですわね。
まずは一台ずつ購入して試してみましょう」
「明智さんの提案は経営状態が悪いボードゲームを作ってる会社を買い取って、お金になりそうな短時間で楽しめるカードゲームを開発してもらうというものだけど」
「それは明智さん兄妹でやるのでは?」
「ああ、既に実績のある人を取り込みたいっていうのと、そういった会社が持ってる販路も重要だと思う」
「ゲーム会社やアニメ制作会社、出版社とレコード会社やボードゲームを作ってる会社の考え方は同じということですか」
「うん、ファンを持ってる人がいても会社が倒産したらどうにもならないからね。
会社はアドバンスド・テクノスがいいと思う、後は飛翔企画かな」
「では、交渉してみましょう」
取り敢えず女の子たちの提案はだいたい通ったな。
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