さあ、ゲーム制作に取り掛かろうか

 さて、おおよそ準備もできたので早速制作に取り掛かろうか。


 まずは俺が会長と斉藤さんの書いてきたシナリオをミックスさせて物語を書き上げる。


 タイトルは桃の子太郎討鬼伝説で行くけどな。


 おじいさんが芝刈りに行ってる間に河で洗濯をしていたおばあさんが拾って、熟してから食べようとした桃が割れてそこから男児が誕生し、桃の子太郎と名付けられた彼は、老婆老爺に養われて大きな体を持ち真面目に働く青年に成長し、同じ村で育った幼馴染の小夜さよともうすぐ結婚するかもしれないと考えていた。


 そんなある日のこと、鬼ヶ島からやってきた鬼たちに村が襲われ、その時にこの辺りを治めていた領主が殺されてしまう。だが、鬼たちが奪おうとした鬼切丸だけはなんとか奪われずにすんだ。


 しかし、領主の一族の者でなければその刀を鞘から抜くことができずに困っていたところ、桃の子太郎が試すと鞘から刀はすっと抜けた。


 実は桃の子太郎は、領主が側室に産ませた子供だったが、正室によって川に流されてしまったのだった。


 桃太郎は小夜にお守りをもらい見送られながら鬼切丸を携えて鬼ヶ島の鬼退治の旅にでた。


 その道中で空腹で行き倒れていた剣士の犬丸いぬまる、忍者の猿田さるた、巫女の雉子きじを持っていたきび団子を与えてそれぞれを家来にして従え、時には襲ってきた盗賊を切り伏せ、盗賊の隠れ家を調べて彼らを討伐したりしながら、桃の子太郎は家来の力を借りて、鬼ヶ島の近くまでやってきた。


 そして雉子の祈りに応えて善なる竜神が桃の子太郎の助力を誓い、龍の背に乗って鬼ヶ島に渡った桃の子太郎たちは、激闘の末に鬼の親玉と邪悪な妖術師を打ち倒して、さらわれていた姫様である美姫みきや彼らが集めていた財宝を村に持ち帰った。


 ここで誰と結婚するかはプレイヤーが選択でき、お姫様の美姫、巫女の雉子、幼馴染の小夜と結婚して末永く幸せに暮らしましたというパターンと、誰も選ばずに犬丸や猿田と共に他の場所の悪を討伐しに行くというパターンもある。


「こんな感じでどうかな」


「ええ、いいと思いますわ」


「うん、私もいいと思う」


 会長と斉藤さんも納得してくれたので、俺は必要な場面を抜き出してどのような絵を描いてほしいかの指示を最上さんに出しつつアドバイザーとして会長に見てもらい、同じく場面によるBGMやSEの指定を朝倉さんに頼んでそっちのアドバイザーは斉藤さんにお願いする。


 こういったゲームの制作時間は、ゲームの制作時間=ゲームのプレイ時間×100が平均で、ファミコンソフトでは制作者が少なければ一人、多くても5人ぐらいで作ってプレイ時間60〜90分の作品なら2週間から1ヶ月ほど、2〜3時間かかるものなら3〜4ヶ月、長くても半年くらいが普通らしい。


 まあ24時間すべてゲーム制作に充てるわけじゃないのは当然だしな。


 これはゲームシステムやシナリオの構想期間、絵や音楽などの必要な素材の制作期間、ゲームのプログラミング期間、テストプレイやデバッグ期間をすべて含めてで、プレイ時間が長くなればなるほどそれぞれに必要な時間が増えるし、ゲームの内容によってもこのあたりは変わる。


 アドベンチャーゲームやノベルゲームの制作はアクションなどに比べれば簡単で、必要なグラフィックやサウンドも基本的には立ち絵と背景が中心なので、RPGやシューティング、アクションに比べれば少なくてすむから素人の俺たちで挑むのにはちょうどいい。

 

 そのうちにハードの性能が上がってプレイ時間や音声やグラフィックも美麗になったり3Dになったりすると小さい開発チームでも20~30人、大作ゲームだと100人を超える体制になって開発にかかる時間も一年以上かかったりするようになるから、ゲーム開発のために必要な人件費が馬鹿みたいに上がるのも当然だったりする。


 SAGAの“専務 第一章 横須賀編”というゲームでは総制作費70億円とか言われていて当時ではかなり高かったのだが、それ以降ではそのくらいかかるのも珍しくなかったりした。


 もっとも、ゲームづくりに素人が個人的にチャレンジしても9割は完成にこぎつかずにエタり途中放棄、その理由はやりたいことをなんでもかんでも詰め込もうとして収拾がつかなくなる、オリジナル性を出しすぎようとしてアイデアに詰まる、時間がかかりすぎて単調なプログラミング作業に飽きる、作ってみたけど反応がイマイチなどらしい。


 なんでどっかで見たような話でプログラミングが比較的簡単で特殊な動作などでのバグも出にくいアドベンチャーゲームから取り掛かったってわけさ。


 できれば4月中には完成させたいな。


 ちなみに4月17日には、甲子園球場の阪神タイタンズと-読売ガイアンツ戦でロランディ・敷布・岡畑の3選手がバックスクリーン3連発のホームランを叩き込むということが起きてタイタンズファンが狂喜するということがあった。

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