今年の学校オリエンテーションは筑波万博へGO!

 さて、健康診断と生徒会長がゲーム部の設立を認める代わりに自分も入れろと言ってきた翌日はオリエンテーションだ。


「orientation」は、新しい環境への「適応」「順応」という意味で、そこから、新入生が「新しい学校環境に適応できるように教育、指導すること」のための会合やイベントのことをおもに「オリエンテーション」と呼ぶ。


 で、実際になにをするのかと言えば、校内の新入生オリエンテーションでは、学校内の教室や特別教室・部活棟などの場所や使用目的を理解するため、またクラスメイトと仲良くなるために指定された教室をグループごとに回る。それぞれの教室などで直接教室の使い方等を学んで簡単なゲームを行なったりしたあとで、改めて希望者を募って委員会や係を決め、それと共に校則の説明や、交通安全講習会、校歌の練習なども行う。中学とは違ってあちこちから来ている見知らぬ人間が多いので、新入生の友達作り・仲間作りを促進するわけだ。


 それとは別に行われる校外オリエンテーションのほうも目的は同じ。


「今年の校外オリエンテーションは筑波万博の見物みたいだね」


「そうね、今年は遠足で万博に行く学校が多いみたいね」


 例年なら上野やら鎌倉やら舞浜の夢の国やらにいって遊ぶらしいけど、今年だけ開催の万博にはやっぱり行くよな。


 小学校や中学校の遠足も首都圏だと今年はすべての学年が科学万博に行ったりすることが多いようだし。


「班分けはまた席近くでグループを作るのか」


 斉藤さんや武田くんと同じグループらしいのは助かるな。


 そしてもうひとりはやっぱり席が近い女の子。


「私、千葉夏美ちばなつみ、みんなよろしくね」


「うん、俺は前田健二、こちらこそよろしく」


「私は斉藤千秋よ、これからよろしく」


「俺は武田和博だ、よろしくな!」


 といった感じで、グループ分けは今回は強制だけどまあ問題はなさそう。


 で観光バスでみんな筑波万博会場へ。


「つい最近来たばかりだからどこに行くか迷うな」


「そうね」


 俺と斉藤さんがそう言うと武田くんが提案してきた。


「どこになにがあるかわかってるんならお前らのおすすめの面白いところへ行こうぜ」


 千葉さんもそれに賛成みたいだ。


「うん、それがいいと思う」


「じゃあわかりやすい、画像系のパビリオンにいこうか」


 俺がそう言うと斉藤さんもうなずく。


「それがいいと思うわ」


「画像が飛び出す3D」とか見るとやっぱり反応がわかりやすい。


「おおこりゃすげえ!」


「本当に飛び出して見える?!」


 360度の全周スクリーンとかも、やっぱりよろこんでくれたよ。


 まあ俺は前に見てるからそこまで感動はなかったけど。


 ハイビジョンテレビの実験放送でも、その画像の綺麗さや明るさに驚いてるね。


「すげーきれいに映るな」


「このテレビ幾らくらいするのかな?」


「多分車一台と同じ一千万円とかじゃないかな」


「一千万円?」


 俺が言った値段に武田くんが驚く。


「それはたかすぎるよ!」


 千葉さんも驚いたみたいだね。


「いや、今の時点だとね」


 将来的にはそれが標準規格になるわけだけど。


 リニアモーターカーなんてそれこそ億とか余裕でかかってるだろうし、一つのパビリオンの展示の品のために費やされた費用が10億単位も珍しくないからね。


 まあとりあえず俺や斉藤さんみたいに春休みにもう来てるという人間はともかく、初めて来た人間には目新しくて面白かったようで、これで結構仲良くなれたグループが多かったみたいだ。

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