なんか生徒会長がゲーム部の設立を認める代わりに自分も入れろと言ってきた
翌日は健康診断で、これは当然だが男女に分かれて行われる。
問診票の提出後に、身長や体重などの体位測定・触診や聴診などの内科検診・眼科検診・歯科検診・尿検査・視力検査・聴力検査にくわえて、心電図検査・胸部レントゲン撮影が行われる。
こういうときには医者が男で女生徒を上半身裸にして触診するなどが問題になったりするのだが、ここは元は女子校で女性優先の雰囲気も強く女子は女医さんが担当してるらしい。
「そのあたりの配慮は見習うべきところはあるよな」
そして身長を測るあれの上に乗って頭にコツンとあたった所で現在の身長が173.4cmとでて、体重計に乗ると体重も70kgとでた。
「お、去年より身長伸びてるな、体重も増えてるし、いい感じだな」
16歳は成長期としては最後に差し掛かっていて、ここからはそんなに大きく背が伸びないことも多い。
だから今の時点で身長が170を超えてるのはある意味安心だ。
それが終われば今日は部活見学だ。
殆どの生徒が部活見学なり帰宅なりして閑散とした教室で俺は斉藤さんに話しかける。
「さて、斉藤さん。部活はどうしようか?
すでにある情報処理部はかなり真面目な感じらしいし、俺たちが考えてる内容とは違うみたい」
俺の言葉に斉藤さんがうなずいてから言う。
「そうね、だったらまずは私と貴方の二人で同好会から始めるのでもいいのではないかしら?」
「まあ、そうだね、あとは顧問をしてくれる先生をまずなんとかしないと駄目だけど」
そこへガラッとドアを開けて入ってきたのは生徒会長。
「話は聞かせてもらいましたわ。
私もその同好会、いえなんなら部活動に、入ってあげましょうか?」
生徒会長が世界は滅亡するとでも言い出すかと思ったけど、さすがにそんなことはなかったのはまあいいが……。
「……いったいなんでですか?」
唐突にそんなことを言い出す意味がよくわからない。
「無論それがこの学校の宣伝になるかもしれないからですわね。
それにそちらの女性も特待生として入学して入学費用や学費を免除しているのですから、その分学校へ貢献していただきたいともおもいますし。
で、あなた方が実際に作っているゲームとやらを見せていただけます?」
「いいですけど、多分会長には意味がわからないと思いますよ」
俺がそう言うと生徒会長が答えた。
「そもそも私が楽しめないようなものが商品化して売れると思っているのですか?」
そう言われるとぐうの音もでない。
俺たちはパソコンの置いてある情報処理室に移動して、パソコンを立ち上げてフロッピーディスクからゲームを起動させてスタートする。
「ではどうぞ。
ゲームとしてはテキストアドベンチャーゲームになりますから、リターンキーを押して文字を読みすすめ、選択肢が出たら上下キーで正解だと思う選択肢を選んで話をすすめてください」
「わかりました」
生徒会長は暫くキーボードをいじっていたが途中でため息を吐いて俺の方を見た。
「正直に言えば私には全く面白くありませんし、そもそも内容の意味が全くわかりませんわね。
ゴブリンっていったいなんなのですの?」
「ああ、それはファンタジーによくでてくる主人公の敵になる雑魚怪物です」
そういえばこの頃の普通の日本人はゴブリンとかドラゴンとか言われてもわからないか。
「あなた方はそういう前提知識があるからいいのでしょうけど、私みたいな一般の人間には書かれている文字の内容が全くわからないものが結構あるのですが、これはなんとかなりませんか?」
そう言われて俺は腕を組んで唸る。
「うーんわかりやすいようにするなら、やはり絵とかをつけるのが手っ取り早いですが、今のところグラフィッカーはいないんで、例えば内容を桃太郎の鬼退治をアレンジしたものにして敵を鬼にするとかですか」
「そうですわね、それなら私にもわかるでしょう」
今まで俺と生徒会長のやり取りを見ていたらしい斉藤さんに声を掛ける。
「斉藤さん、和風伝奇物のシナリオに話を書き変えることってできるかな?
陰陽師とか侍とか忍者とかが妖怪や鬼と戦うような話とか」
斉藤さんはそこで首を傾げた、
「それはできるけど……それでいいのかしら?」
「え、どういうこと?」
「パソコンでも家庭用でもアーケードでもゲームにファンタジー要素が加えられたものがどんどんでてきているのだから、その人の意見だけ取り上げて無理に和風にする必要はないと思うわ」
そう言われてみればたしかにそんな感じもする。
「うーん、それもそうかな?」
しかし、会長ははっきりと言った。
「そんな一部のマニアしかわからないようなもので名前が売れたら苦労しませんわ。
なんでしたら私がお話を書いて差し上げましょうか?」
会長がそう言うと斉藤さんがムッとしたように言った。
「その必要はありません会長、部外者は口を出さないでください」
「あら同好会にせよ部活動にせよ、私に承認が得られなければ設立は認められませんわよ。
それに私が入れば絵をかける人や音を鳴らす部分を担当する人を紹介もできますけど」
そこまで言われると俺としてもちょっとという感じがしてきた。
「俺たちは会長や学校の宣伝のためだけに働かされるようなことをしたいわけじゃないんですよ。
俺たちの意向をまるっきり無視するなら無理して同好会なり部活を設立してもらわなくても構わないです」
俺がそう言うと会長はえ? みたいな表情で固まっていた。
「いえ、そういうつもりはないのですけど……」
「ああ、でも絵をかける人や音を鳴らせる人の紹介をしてもらえれば正直助かりますけど。
なにせ俺たちにはこの学校の生徒にどんな人がいるか全然わかりませんし」
俺がそう言うと生徒会長は一転して笑顔になった。
「そうでしょう、そうでしょう。
ならまずはそちらから始めましょう。
そちらの人」
と会長が言うと斉藤さんがムッとしたように言い返す。
「そちらの人ではなくて私の名前は斉藤です」
「その斉藤さんのお話をわかりやすく伝えられれば売れるかもしれないってことですものね」
「ええ、俺はそう考えてます」
「具体的にはどの程度に?」
「ファミコンゲームだと100万本以上売れてるものも多いですし、パソコンゲームでも1万本から10万本くらいは普通はうれますね。
1万円のパソコンのゲームソフトが1万本うれれば1億円ですし、10万本なら」
俺がそう言うと会長が言葉を続けた。
「10億円ですわね。
思っていたよりもゲームって結構お金になるのですね」
それを聞いた会長は俄然やる気を出したみたいだけど、この人お金大好きな守銭奴なのかな?
「ではまずは売れるゲームを作るということが実現できる環境を作りましょう。
顧問の先生への声かけも私がしましょう」
「それは助かりますよ会長」
「では、失礼しますわね」
そう言って会長は教室からでていった。
そして斉藤さんは俺に聞いてきた。
「貴方はなんであの人の言うことを聞くのかしら?」
「社会に出たらもっと大変だろうからね。
他人の人脈の紹介を使うのも大事だろうし、会社を起業して経営を軌道に載せたら、そこで乗っ取りをはかってくる人間だっていっぱいいるはずだし。
そういうことに予めうまく対応できるようにする予行演習だと考えておけばいいと思うよ」
斉藤さんはため息を
「私はそんなに簡単には割りきれないけど、言いたいことはなんとなく分かるわ。
私もあの人にも面白いって言われるようになるよう話を考えてみるわね」
「うん、斉藤さんならきっとできるよ」
まあとりあえずなんだかんだでゲーム制作部は作れそうだ。
本当はもっとも世界で売れたゲームの一つである落ち物パズルゲームの元祖であるテト&リスの日本での販売権を手に入れればそれだけで相当な金になるんだけどな。
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