期末試験はチートな記憶力や理解力のおかげで全教科百点満点だったぜ。
修学旅行が終われば6月には進学懇談会が行われ、ここの卒業生が在校生にいろいろなアドバイスをしてくれる。
勉強の仕方とか、その後の進路の選択などについてのアドバイスだな。
いつものように通学途中で今田くんと合流して一緒に学校へ向かうんだけど、ちょっと挨拶してから進路についても話すことにしてみた。
「今田君おはよう」
「前田君おはよう」
「結局、今田くんは進路はどうするの?」
「ああ、俺はやっぱり市船に行こうと思うよ」
「へえ、今田くんはサッカー選手に本気でなるつもりなんだ」
「うん、そうだよ、やっぱワールドカップに出たいじゃん」
「うん、応援してるよ」
なんだかんだで今田くんはサッカー部でレギュラーになってるからね。
俺は補欠だけど。
そして自分たちの教室へはいり斎藤さんにも挨拶をする。
「斎藤さんおはよう」
「あらおはよう、そういえばあなたたち進路はどうするの?」
「俺は市船に行ってサッカー部に入るよ」
「前田くんは?」
「俺は千葉経済高等学校に行きたいと思ってる」
俺がそう言うと斉藤さんは首を傾げた。
「千葉経済高等学校?」
「うん、情報処理でコンピューターのプログラミングも学べるはずだし」
「そうなのね」
「斉藤さんは短大の付属高校?」
「いえ、それはやめようと思うわ。
前田くんが行く千葉経済高等学校に私も行こうかしら」
「短大出て銀行事務員になって銀行員と結婚するんじゃなかったの?」
「銀行もそんなに安定してないって聞いたし、なら自分でちゃんと働ければいいと思ったのよ」
「そっか。たしか男女雇用機会均等法、正式名雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律も来年には制定されるみたいだしね」
「法律ができてもすぐ変わることもないと思うけど」
俺と斎藤さんがそんな話をしていたら今田くんが首をひねっていた。
「二人が何言ってんだかさっぱりわからん」
この法律自体元は昭和47年(1972年)にすでに「勤労婦人福祉法」として制定・施行されている法律があったのだけどあまり実効的でなく、当時の国会が男女の差別を無くすために制定したというよりは、昭和54年(1979年)に、国際連合第34回総会で採択され、アメリカでは昭和56年(1981年)に発効した、女子差別撤廃条約、正式名称女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、が昭和60年(1985年)年に日本でも発効され、そのために法律を整備する必要に迫られていたためのものでもあったらしいからもうすでに今年にはいろいろ話は出てるんだよね。
もっとも時代的にバブルの時期は人手不足だったために女性の社会進出は大きく進んだわけで、現在はまだ専業主婦世帯の方が断然多いのだけど、後5年もしたら共稼ぎ世帯が追い抜いてしまうんだ。
そして後日、母親と教師と生徒での三者面談も行われる。
これはほぼ「高校受験」の受験校を決定する場だ。
この時期はまだ学校の先生が生徒の学力や内申点を基に生徒に受験校を提案することもよくある。
県外などの遠くの高校へ行くことはまだ考えられていない時代だしね。
が、俺は行きたい場所を先生にはっきり言った。
「先生、僕は千葉経済高等学校へ行きたいです」
俺の言葉に先生はちょっと首をひねった。
「千葉経済高等学校?」
「はい、来年新設される情報処理科に行きたいんです」
「情報処理な、最近はマイコンを買ったようだが、それに関係するのかね?」
「そうです」
「まあ、あそこは部活も強いし、偏差値もそこまで高くないし、それもいいかもしれないな」
体育会系の部活をやるつもりは別にないんだけどな。
「お母様もそれで問題ないでしょうか?」
「はい、問題ないと思います。
将来のことも考えているようですし最近は勉強もしっかりやっていますし」
「そうですか、期末試験は期待できるかもしれませんね」
「はい」
まあそんな感じで俺の面談は終わった。
子供の成績に主に上の方に合わない偏差値の高い学校に行かせたがる親も多いみたいだけど。
で、期末テストの結果だが、全教科で百点満点という今までは得意な教科で80点台、苦手な教科は40点台とそこまで良くなかった成績が一挙に上がった。
これは伊邪那美さんの与えてくれた能力なのか、記憶力や理解力などが異常に上がっていたからだろう。記憶というのは詰め込んでもそれを要領よく取り出せるようにしないとあまり意味がないのだが、その記憶の取り出しに関して一度教科書や参考書を読んでノートに書けばスムーズに内容を理解でき、しかもそれをすぐに思い出せるというレベルになっているんだからまさしくチートだよな。
今田くんと斉藤さんも驚いてるというか呆れているというか。
「何この点数」
「全教科百点満点とか初めて見たわね」
「勉強を真面目にやってみたらなんとかなったよ」
「いや普通は無理だろ」
「そうよね」
これを使って来年には『ウルトラスペシャル 全国高等学校クイズ選手権』に参加してみてもいいかもしれない。
クイズ王の伊沢拓司氏はもともとはサッカーをやっていたらしいし、そういったことで名前を売っておくのは意味のあることだろうからな。
「前田、お前もっといい学校に行ったほうがいいんじゃないか?
共立学校(後の開成)とか」
「いえ、僕はやっぱり千葉経済高等学校へ行きたいです」
「そうか、それなら仕方ないがな」
まあ、東京大学に一番近い学校へ外部から進学した生徒がいればこの中学の自慢にはなるんだろうけど東大に行って卒業後に高級官僚になって何かをやろうとするにはもう時間がなさすぎるんだよね。
父親が40代で年収一千万円というのは決して貧乏ではないけど、この時期だと中流に含まれるレベルだし。
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