就学旅行1日目だけど料理が冷めていて美味しくないのは駄目だよね

 その後いろいろ準備などをして修学旅行当日。


 俺は必要なものを確認している。


「まず修学旅行のしおり、筆記用具、なんかあったときのために親の緊急連絡先を書いた紙、親の保険証のコピー、財布とお小遣い一万円、腕時計、4日分の着替えの下着や靴下と体操着に寝巻き用のジャージ、ハンカチとポケットティッシュ、タオル、バスタオルに石鹸、歯ブラシと歯磨き粉なんかの洗面用具、雨が降ったときの雨合羽、ビニール袋にゲロ袋、絆創膏、あとはお菓子とかウノやトランプなんかの暇つぶしのゲームっとまあこんなものかな?」


 荷物は小さいリュックと大きいリュックに分けて詰めてきた。


 小さいリュックには就学旅行のしおり、緊急連絡先、修学旅行のしおり、筆記用具、なんかあったときのために親の緊急連絡先を書いた紙、親の保険証のコピー、財布と現金、レインコートなんかを入れてバスから降りるときの持ち歩き、残りは大きいリュックにいれてバスや宿泊先に置いておく。


 全部持ち歩くと大変だからね。


 あとこの頃はまだ旅行にはキャスター付きのスーツケースとかは一般的じゃない。


 このときはまだ舗装されてない道路も結構多い、エレベーターやエスカレーターとかがついていない駅などの公共施設とかも結構あるから。


 まだ安価なデジカメやスマホはないし、この頃のカメラは高いうえに、自動化は進んでいたとは言えうまく写真を撮るというのがまだ簡単じゃないから、多くの中学生個人では持っていけるようなものじゃないので写真撮影は専門業者に頼んだり部活動の写真部に頼んだりしてると思う。


 素人がきれいに写真を撮れるようになるのは翌年の 昭和60年(1985年)にミノルタのα-7000がでてからで、素人がマニュアルでピントを合わせるよりも早く正確にピントを合わせてくれるAFが登場したということで、このカメラが実質的な世界初のオートフォーカス一眼レフカメラと呼ばれたりする。


 もっともこの頃の海外旅行客でメガネを掛けて、首からカメラをぶらさげていたら日本人だとか言われていたりもするんだけど。


 そして写ルンですみたいな安い使い捨てフィルムカメラも残念ながらまだないんだよね。


 集合場所は船橋駅で船橋駅の改札前に200人近い同学年の男女の生徒が集まってクラスごとに列を作っている。


 点呼をして、来ていない生徒の親に公衆電話で確認をとったら急な病気とかみたい。


 もったいないよね。


 そして総武快速線で東京まで向かって、東京駅で新幹線に乗り換えだ。


 新幹線のホームには青と白のカラーリングで先頭が丸くてずんぐりむっくりとした0系車両が停まってる。


「新幹線て先頭は丸いんだよね」


 俺がそう言うと今田くんが言う。


「そりゃ当然だよ」


 でも将来の新幹線の500系とか700系、N700系なんかはジェット戦闘機やスーパーカーみたいな流線型なんだよね、いや0系車両のほうが新幹線って感じはするんだけど。


「せっかくだから写真をとっておきましょう」


「あれ斉藤さんカメラ使えるの?」


「ええ、お父さんがカメラ好きで貸してくれたの」


 斎藤さんが持ってるカメラは最新機種に近いキヤノンのカメラかな?


 このカメラは誰でも簡単に撮れる一眼レフカメラをコンセプトとしていて、プログラムAEのみで露出調整がすべてカメラ任せなんだよね。


“ジーコジーコジーコ、パシャリ”


「うまく撮れてるといいのだけど」


「動いてるものを撮るわけじゃないから、多分大丈夫じゃないかな」


 そうこの頃のカメラのピント合わせはかなり時間がかかるから、動いているものを撮影するのは大変だったんだ。


 それから今回ちょっとだけある自由行動で一緒の班なのは俺、今田くん、斎藤さん、男子はサッカー部仲間の宮崎くん、女子は野球部のマネージャをやっている朝倉さんと家庭部の細川さん。


 体育会系の男子三人と文学少女、体育会系マネージャーに家庭的な女の子と一見するとよくわからない組み合わせだけど、新幹線の席もこの6人でまとまって座る。


「宮崎くん、朝倉さん、細川さん、みんなよろしくね」


「ああ、よろしくな」


 宮崎くんが笑って言う。


「ええ、もし気分が悪くなったりしたら言ってね」


 朝倉さんも笑顔で言う。


「う、うん、よろしく」


 細川さんはチョットおどおどしてるけど大丈夫だよね。


「じゃ、みんなんでウノでもやる?」


 俺がリュックサックからウノを取り出して言うとみんなうなずいた。


「うん、いいんじゃないかな?」


「話しながらでもできるしね」


 みんなでワイワイとウノをやりながら富士山が見えたとか浜名湖が見えたとかやりながら京都に無事到着。後はバスで清水寺や金閣寺、銀閣寺なんかをみんなで見て回って初日の神社仏閣の見学は終了。


 ホテルにバスで向かったら広い座敷で夕食なんだけど……。


「うーん……」


 味がいまいち微妙なんだよね。


「あんまり美味しくはないわね」


 斎藤さんも同じ感想みたいだ。


「そうかな、普通だと思うけど?」


「俺もそう思うぜ」


 今田くんと宮崎くんはあんまり気にしてないみたいだけど、朝倉さんや細川さんはやっぱりいまいちって顔だね。


 200人近い客になるべく同じ時間に膳を配っていくのには当然短時間で大量の食事を一度に作らねばならず、そのためにバイトを雇うなどして料理の質が落ちるとか、そもそも修学旅行でそこまで予算は学校も掛けられないから客単価が低いので当然原価の高い料理はだせないとか、さらに修学旅行や林間学校などの教育機関の団体旅行は、何処の旅行代理店を使うのかという決定権を持っている権限がある人を、旅行代理店が接待漬けにして自分のところに契約を結ばせようとするのでその分の費用が中抜きされるとか、大型バスの駐車場があるホテルは少ないので味より駐車場の設備のあるなしで選んでいるとかいろいろ理由はあるみたいだけど。


 結局、接客サービス業として大事なサービスを疎かにして、工場の流れ作業のような調理、配膳、接客となってしまい、それによって嫌な思いをしたら当然リピートはないから客が増えない。


 そんなことが観光地全体で起こってしまっている感じがする。


 熱海とか日光鬼怒川とかは特にそんな感じだったように思うけど、観光客を呼ぶことよりも、満足してもらってまた利用してもらうのが大事なのに、結局は同じ客が二度と訪れない状態になっていくわけだね。


 そしてこの時期から増えていく卒業旅行の海外旅行とかでは当然旅行代理店の無茶ぶりはできないのだけど、円高でそれなりのホテルでも安めに使えるようになるから、国内よりも海外旅行のほうがいいと思う人間も増えていくんじゃないだろうか。


 結局はネットのブッキングサイトとかにシェアを奪われていく旅行代理店も自分で自分の首を締め続けたんだよね。

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