第22話

「よう、先ほどぶりだな」

画面には、堕落先生がいた。


「堕落先生」

「こうくん、堕落じゃなくて田倉だってば」

「同じようなもんだろ?」

「全然違う。それに全国の田倉さんに失礼よ」

「ギャンブルで全財産なくした人と同じにする方が迷惑だ」

「そうかもしれないけど、もう高校生なんだから、ちゃんと田倉と言いなさい」

「言わないと、嫌いになるの?」

「うん、なる」

「みやちゃんに、嫌わるの・・・ぼく、やだ・・・・」

「じゃあ、きちんと田倉と呼ぶ?」

「うん。呼ぶ」

「うん。素直なこうくんは、大好き」



・・・なんていうほのぼのしたやり取りは出来るはずもなく、画面にいたのは田倉先生ではない。


その顔を見て、現実逃避をしたくなった。

雛乃さんは・・・知っていたみたいだ。



「山沖に雛乃、両名いるな」

画面にいたのは、茂手泰奈先生。


今年で、50歳のオールドミスだ。

そのくせ、この好みのタイプはとても贅沢。

まったくの妥協がない。


そのために、結婚相談所でもブラックリストに載っている。


そして、その不満をぶつけてくる。

それだけならいいが・・・


「こうくん、説明はいいから」

「へいへい」


この教師は国語担当だ。


まさか漢字の書き取りとか、やらせないよな?


「山沖、うじうじしない。だからあんたは、もてないんだよ・

一生独身だよ。

雛乃は、すぐにお嫁に行けるけど、私よりも先には行かないわよね?」


こいつ、教育委員会に訴えてやろうか?


まあ、悪い意味ではあるが、誰に対しても平等で差別はしないので、まだましかもしれない。

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