第4章
第41話 焦り
私は人気声優の日菜。
アニメ好きがオタクである事を馬鹿にされたら腹立たしいし悔しいだろう。
それは声優本人も同じ、いや、恐らくオタク以上に腹が立っている。
オタク仲間である楠木さんがアニメオタクを気持ち悪いと馬鹿にされ心配になって朝早くに学校に来てみれば……。
私が登校したすぐ後に、私よりも遥かに忙しない様子の祐が登校してきた。
楠木さんのことが心配なのは私も同じだけど、他人にはあまり興味が無い祐がここまで楠木さんを心配している姿を見て嫌な気持ちになった。
いや、なんで私が嫌な気持ちになってるの。嫌な気持ちになる必要なんてないし楠木さんに失礼だ。
モヤモヤした気持ちのまま楠木さんが登校してくるのを待
その間も祐は落ち着かない様子でソワソワしていた。
そんな祐が、楠木さんが登校してきた途端、ふっと気が抜けたようにいつもの優しい表情に戻った。
私の心の中は楠木さんに対する嫉妬と、それを抑える自制心がぐるぐると渦を巻いている。
祐と楠木さんの2人で盛り上がる会話に私も作り笑いで混ざる。
しかし、何故か私だけ疎外感があるような気がした。
「はい‼︎ 祐くんのおかげで今日は学校に登校して来れました」
私はこの楠木さんの言葉に驚き、思わず椅子に座ったままずっこけた。
あれ? 楠木さんって今まで祐のことを渋谷くんって呼んでなかった? いつの間に下の名前で呼ぶようになったの?
まあ渋谷って名前を呼びづらかったのかもしれない。祐って呼ぶだけなら2文字発音すればいいから楽だし。
「祐奈が元気そうでよかった。これからよろしくな」
祐が発したこの一言に、私は1回目以上にダイナミックにずっこけた。
どちらか片方が下の名前で呼ぶだけなら気が変わっただけなのだろうと思うが、2人共が互いを下の名前で呼ぶということは何かしらの進展があったということに他ならない。
一昨日祐が、楠木さんを追いかけて行った時に何かがあったに違いない。
さ、流石に一線を超えてしまったなんてことはないよね?
高校生だしそれは流石にないか。うん。きっとない。
結果的に楠木さんは陽キャグループのメンバーとも仲直りしたようで楽しそうにアニメの話をしていて良かった。
でも、それとこれとは話が別。
声優活動で忙しいし、こんな地味で根暗な男子のこと、好きになる物好きな女子なんていないって余裕ぶっこいてたけど。
私もうかうかしてられないなぁ。
よし、ここはひとつ、勝負に出るとしますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます