第31話 血の雨
応接室に戻ってきた。
レインを出現させる。
「やっぱ楽だなこれ。じゃあまずは、国家間の関係について知りたかったんだな」
もう転移には慣れた様子だ。
「まあ、そんなところかな。Aランクが他国に出ていったら、力のバランスはどうなるか気になったんだ」
「早い話、世界大戦の後に平和条約が結ばれて、それぞれの国は互いに関与しない決まりとなっている」
「争わないという意味においては世界全体が一つの大きな国家連合ということか」
「あくまでも国家という意味なので、貿易や観光などは自由だ」
「だからギルドも世界共通の組織になっているんだな」
「国内で起きた問題は、他国の力を借りずその国が対処する。借りを作れば、上下関係に
「だったら、優秀な人材が他国に出ていくのは都合が悪いんじゃないのか?」
「どうしても自国で解決できないときは、ギルドを通して冒険者達が派遣されるのさ」
「それでも、
「国にはギルドとは別に優秀な戦士がいるから、いよいよとなったときは彼らの出番だ。街にいるような衛兵のことではないぞ」
「そういうものなのか」
「元々交流の深かった国同士では、個別の友好条約を交わしている。例外的にそういった関係においては国が直接抱えている軍が、他国へ派遣されることもある」
「後もう少し全体的に仲良くなってもいいのにな」
「戦争しないだけ随分と進歩はしているよ。ちなみに、世界大戦のときから、他国と関わっていない国もあって、それらは連合にも加盟していない」
「国家連合に侵略されたら終わりだな」
「力が無ければそうなるが、それらの国は手を出してはいけないような強国だ。他国に興味がないようで、逆にこちらが一方的支配を受けずに救われているぐらいだ」
「そんな面白そうな国があるのか。なんという国だ?」
「大きいところで有名なのはクレイミル共和国とウェヌムダ王国だ。それらの国には、ここと同じ組織のギルドは無い。もしこの先、行く気なら、それだけは覚えておけ。俺はサポートできないからな」
「覚えておこう」
「この国はその逆でとくに平和だからな。他国に比べると冒険者の平均レベルは低い。のんびりした国で俺は気に入っているが」
「たしかにギルドの酒場でも、冒険よりも酒に明け暮れているやつらをよく見かけるな」
「まあ、ここでの依頼はそれほど頻繁に高難度のものが出るわけではないからな。だから、お前のようなタイプのやつはスリルを求めて新天地へ旅立っていくのさ」
「地下洞窟はまだ最深部にいっていないが、手応えがありそうな予感がしている」
「あそこの二十五階層より先は未知数だしな。
たしかに依頼の資料にも危険なので侵入するべからずとあったな。
また今度行ってみよう。
「依頼が無くても、もっと探せば強い魔物が潜んでいるところぐらい他にもありそうな気もするが」
「その通り、探せばいるだろう。ただ、人が暮らしていく上で、影響を与えるような困ったことは少ない。そういう意味でも平和なんだ」
「なるほど」
「ただ、最近変わったニュースが増えてはいるが」
「西の森林の魔物、地下洞窟のアンデッド、それから山賊のことか?」
「そうだな」
「山賊って急に発生するようなもんではないと思うのだが、下手な奴らが増えて目撃例が多くなったのだろうか」
「どうだろうな。それについてはジグやウィリアムの件で明らかになるかもしれない」
「そこはプロに任せておけば問題ないか」
「それじゃあ、ブラッドレインについての話だったな。ま、俺のあだ名みたいなもんだ」
「伝説とか言ってたな」
「現役の頃は、いつものように魔物を切って切って切りまくって、血しぶきを雨のように降らせていた。そんな返り血を浴びていた俺の姿から名付けられたんだろう」
「解体が趣味なのも納得できる」
「それだけの話さ」
「それだけじゃないだろう?」
いつの間にか部屋の隅に、見たことのない美青年が立っていた。
「アルベルト!?」
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