また再びイケメンに出会う

あれだけ騒いだ日から再び約一週間が過ぎた……


結論から言えば、あのイケメン生徒が私に接触してくる事はなかった。西園寺さんからも何度も


「あのバ……その不審な生徒が接触してきたりしませんでしたか?」


と、何度も聞かれたけれど、私は素直にないと答えた。それが2、3日も続けば、西園寺さんもそれについて尋ねる事をしなくなった。私自身も彼の存在の事はほとんど忘れかけていき、西園寺グループがうまくなんとかしたんだろうなぁ〜と思うようになり始めていった。


で、そうなれば最早私の目下の悩みは今の西園寺さんとの生活が2週間以上も続けてしまっている事である。

私もいい加減どうにかしなきゃいけないとは思っているのだけど、これがなかなかどうしてうまくいかない。実は、私達の結婚後も西園寺さんにアプローチする男性が多数いたらしい。やはり、結婚相手を秘密にしている為か、結婚報道は男避けのデマではないか?と考えた人が続出したようだ。中には、結婚してようが自分の魅力で西園寺さんを振り向かせようという人もいたらしいが、前者も後者も揃って西園寺さんに玉砕の言葉をくらったらしい。

こうまで様々な男性がアピールしているのに、振り向かないのは西園寺さんの好みは実は特殊ではないのかと思って、前に何とか聞き出してみたところ……


「そうですね…………私に魅力があるかは分かりませんが、私の魅力に一切振り向かないような鈍感な人が好みです」


と、ニッコリと私の方を見てそう言った。やっぱり、散々あの容姿や肩書きばかりに惹きつけられた人達ばかりが寄ってきてウンザリしてたんだなぁ〜……モテるのも大変だ……。


まぁ、そんな感じでこれといった策や案も思い浮かばず、今日も西園寺さんとの暮らしを継続したまま、いつものように教師として働いている。そして、今現在私は授業で使う教材を運んでいた。


「ふぅ〜……やっぱり重いなぁ〜……やっぱり誰かに手伝ってもらえばよかったかな……」


こういう時、うまい先生だとお調子者の生徒を捕まえて言葉巧みに手伝わせるんだろうけど、あいにく私はそんな器用な真似が出来ない為、1人でコレらを運ぶしかない。

そういえば、いつも私が重そうな教材を運んでいる時は、西園寺さんがいつも駆けつけて


「重たそうですね。先生。私も手伝います」


と言って、私の荷物を半分受け取って一緒に運んでくれる。本当に、西園寺さんは気がきくいい娘である。そんないい娘の将来を酒の過ちで奪った私は最低最悪の人物だ……本当に胸が痛い話だ……

まぁ、そんないつも私の小さなピンチに駆けつけてくれる西園寺さんだが、実は現在は学校にいなかったりする。

と言うのも、西園寺さんは現在、西園寺グループが開発する新商品のイメージガールモデルを務める事になり、その打ち合わせやら撮影やらで、学校をここ何日か休まなくてはいけなくなった。まぁ、何日か休んでも成績優秀な西園寺さんなので、あまりその辺は問題なかったりするのだが、私より帰りが遅くなる事の方が西園寺さんはとても不満そうにしていた。何故かはよく分からないが……


まぁ、そんな訳で今日は1人で重い教材は必死で運んでいたら……


バンッ!!


「あっ……!?」


バサバサバサバサッ!!!


生徒の誰かと肩がぶつかってしまい、その衝撃で私は持っていた教材を落としてしまった。私は慌ててその教材を拾い始める。ちなみに、ぶつかった生徒は私に見向きもせずに行ってしまった。私って存在感薄くはあるけど、こんな状況でも気づかれない程薄いかなぁ〜……


「先生。大丈夫か?」


そんな風に私が考えながら落とした教材を拾っていたら、突然声をかけられて顔を上げると……


(なっ!?この子は!!?)


その声をかけてきた男子生徒の顔を見て私は思わず身構えてしまう。その男子生徒は、私に「果たし状」を叩きつけた男子生徒にソックリだった。しかし、よく見てみる……


(あれ?よく見たらネクタイの色が違う……)


その男子生徒のネクタイの色は緑色。つまり一年生である事を示す色だった。前に「果たし状」を叩きつけた男子生徒のネクタイら黄色で2年生だった。

それに、落ち着いてよく見てみると、顔はなんとなく似ているけれど、前に会った彼は中性的な綺麗な感じのするイケメンなのに対して、目の前の彼はちゃんと男性的などことなくヤンチャな感じがするイケメンである。

まぁ、世の中には似た顔の人が何人もいるって話だし、とりあえず問題の彼でないと思った私は内心でホッと安堵していた。


「先生。手伝うよ」


と、目の前の男子生徒はそう言って素早く私が落とした教材を拾いあげる。そして、全部拾い上げた彼はすぐに立ち上がり


「それで、先生。これはどこまで運べばいいんだ?」


「えっ?いや、いいわよ!拾ってくれただけで十分よ!後は私1人で大丈夫だから!」


私は彼にそう断りの言葉を述べたのだが……


「そういう訳にはいかないって。さっきみたいにぶつかって落としたら大変だろ。それに…………こんな綺麗でか弱い先生にこんな重い荷物を持たせて無視するなんて男として恥だろ」


「はい?」


私は思わず聞き慣れた事がない言葉に思わず目が点になってしまう。が、チラッと確認した時計がもうすぐ授業開始の時刻になりそうなのを見て、私は申し訳ないとは思いつつも、彼の言葉に甘える事にした。



こうして、私はこの男子生徒と奇妙な縁が出来てしまったのである。

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