西園寺遥香専属隠密部隊

side:相沢 桔梗


先生改め奥様が完全に眠りについたのを確認したお嬢様はすぐに起き上がりました。私はそれに合わせるようにお嬢様に薄手の上着を羽織らせます。


「春雨。秋雨。小雨。いますね」


『ハッ!!!』


お嬢様がそう呼びかけると、どこからともなく黒装束を着た3人の女性が姿を現しました。

彼女達は、先程奥様との夕飯でのやりとりで出てきた西園寺隠密部隊の一部、お嬢様専属の隠密部隊である。基本、西園寺隠密部隊は西園寺家に絶対忠誠を誓っている者で構成されている。が、お嬢様専属の隠密部隊は、西園寺というよりはお嬢様に忠誠を誓った者達の集まりだったりする。その中でも、春雨・秋雨・小雨はお嬢様専属隠密部隊のトップ3である。ちなみに、この名前はもちろん偽名である。


「話は聞いていましたね?」


お嬢様は問いかけているが、それは最早断定したような問いかけだ。まぁ、それもそのはずで、奥様は全然気づいてないが、この3人はずっと隠れてお嬢様の様子を見守っているのである。故に、先程の会話も聞いているのである。だから、彼女達は一切頷く事すらせずに沈黙を肯定の意としている。


「先生に「果たし状」を送りつけた輩について調べ、その動向をくまなく観察しなさい」


お嬢様は3人にそう命令する。3人にとってお嬢様の命令は絶対なので拒否する事はないのだが、春雨が代表してお嬢様に意見をした。


「遥香お嬢様。私達はその「果たし状」を送りつけた犯人に心当たりがないのですが……」


確かに、先程の会話では特徴だけで名前は出なかったので犯人が誰なのか見当もつかないだろう。しかし


「安心なさい。犯人の目星はついてます。この子です」


お嬢様は何故か持っていた写真を春雨に渡した。


「おぉ!流石は遥香お嬢様!もう犯人に目星をつけているとは!」


「口よりも手足を早く動かす者が私の好みです」


『ハッ!!!』


お嬢様の一声で3人はあっという間に消える。私も気配を殺してやって来るのを得意としているが、やっぱり本職であるあの3人には勝てそうにない。あれで、3人共私より歳が一つ下で、普段は普通の女子高生をやっていて、3人共彼氏がいるという……


「ふぅ……やれやれ……全く……あの子にも困ったものね……」


お嬢様は本当に迷惑だと言わんばかりの表情をして溜息をつく。


「恐らく情報源はあの人でしょう……明日こってり絞り上げるとしましょう……」


お嬢様はニッコリと黒い笑みを浮かべてそう言った。きっと今頃、その人はクシャミして身体を震わせている事でしょう。


「しかし……何でまたあの子が先生を狙ってくるやのやら……?」


お嬢様は心底分からないといった顔で首を捻ってそう言った。私は何も言わなかったけれど、私は知っている。




その人が、どれだけお嬢様を愛していたかを……その人が幼い頃からずっとお嬢様と結婚するんだと言い続けていたことを……

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