プロローグ2

じんにーちゃん、久しぶり。」

かえでは人気の少ない新幹線のプラットホームで待っていた。

五年ぶりだが、当時の面影があったのですぐにわかった。

そばには新幹線を見送ったばかりの駅員さんが赤い旗をくるっと巻いて立ち去ろうとしていた。

「ああ、久しぶりだな」

「側衆は元気だった?」

側衆そばしゅう

じいちゃんのことか。

かえではときどき時代劇用語を使う。例えば学校のことを藩校とか銀行のことを金座きんざとか言う。

「元気なんてもんじゃない。あと百年は生きそうだよ」

「そうね。フフフ」

かえではじいちゃんの顔を思い浮かべたように笑った。

やがて、乗車予定のこだまが入線してきた。

通勤で使っている電車とは違う重厚な音を立て、新幹線こだまのドアが開く。

特急券は指定席だった。

見慣れない座席番号と切符を交互に見ながら二人の席を探した。

かえでは、なぜか制服スタイルだ。事務所から通っている学校の制服で来るように言われたのだろうか。

「あったよ」

かえでが席を見つけてくれた。

ふわりとプリーツスカートをはためかせながら、シートに背を預ける。

どう見ても修学旅行生にしか見えない。

東京までは一時間ほど。

近況報告しているうちにターミナル駅に着いてしまった。

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