第133話 ピンク髪の女の子
「あ、あの〜、まだですか〜?」
ローリエとの触れ合いを楽しんでいると、そんな声が近くから聞こえてくる。
そういえば、元々のこの騒動の発端の少女を袋詰めにしたままだったなぁ……その割には俺の一声ですっかり落ち着き払ってるのだけど、大物なのか脳天気なのかは今のところ判断できなかった。
「すまない、今開ける」
袋からその少女を出すと、袋詰め前に一瞬見た、ローリエと同い年くらいのピンク髪の女の子が「ふぅー」と、外の空気を吸って落ち着いていた。
「助かりました〜。本当にありがとうございます〜。わぁ、何だか大きな穴ができてますねぇ」
整った容姿に、ぽわんとしたような表情のその女の子は何とものんびりとした口調で俺の暴力の爪痕に驚いていた。
あれ?何か見覚えがあるような……どこでだ?
「お怪我はありませんか?」
そんな風に考えていると、座ってるその子にローリエが優しく手を差し伸べていた。
ウチの娘ったら、凄く頼もしい。
これでも俺はローリエやサーシャの前では紳士でいようと考えるより先に行動するのだけど、俺よりも少し早くその子に手を差し伸べるローリエさん、マジ天使!
まあ、俺が自分と同い年の子に触れるのが嫌だった可能性も無くはないけど、それだったらそれで可愛いので、娘の様子を見守っていると、女の子はローリエの手を取ってから立ち上がるとお礼を言った。
「ありがとうございます〜、えっと父娘でしょうか?とっても似てますね〜」
ローリエは見た目は完全に妻であるサーシャに似ているので、初見だと俺とローリエが親子だとは分からない人も多いはずだけど、この子は一発で言い当てた。
袋詰め状態の時にローリエの俺への呼び方を聞いてた……にしては、今ひとつ納得できないくらいにぼんやりしているように思える。
「そ、そうですか?」
「はい!特に雰囲気がそっくりです〜」
その言葉にローリエが凄く嬉しそうにする。
ナチュラルに間合いに入ってくる子だなぁ……天然なのだろうか?
計算にしては違和感が無さすぎるし、天然の可能性が高そうだけど、さっきの連中……というか、公国はこの子を攫って何かしら企んでいたようだけど、それも調べないと。
「綺麗な銀髪ですね〜、これはお母様譲りですか〜?」
「はい、私の大切なお父様とお母様からの贈り物です」
そんな嬉しいことを言ってくれる娘に感動していると、セリュー様と少し離れてセレナ様もやって来る。
とてもキラキラした瞳のセリュー様とは対照的に、どこか含みのある笑みを浮かべるセレナ様に嫌な予感を覚えていると、その子は思い出したように言った。
「あ、自己紹介忘れてました〜。私はアカリと申します。訳あって今は孤児院に住んでます〜」
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