第125話 距離感と気持ち
「あの、フォー……お、お父様。重くありませんか?」
落ち着いてきたセリュー様が、控えめにそんな事を尋ねてくる。
「問題ないよ。そこからの景色はどうかな?」
「えっと……凄く、高いです」
どうにも父親口調で接するのを躊躇ってしまうが、そんな事は表に出さずに聞くと、何ともシンプルな答えが返ってきた。
カリスさんはかなり背丈が高いので、肩車をすると景色はそこそこ広がりそうではあるが、まさかセリュー様に肩車をする日が来るとは思わなかった。
ローリエには何度かしているが、ローリエは肩車よりも抱っこがお好みらしく、今も俺の腕の中でギュッと抱きついてきていた。
本当に甘えん坊だが、そこがまた可愛い。
「お父様……」
そんな事を思っていると、ローリエが見上げるように上目遣いで俺の名を呼ぶ。
「どうかしたのかな?」
「お父様の一番はローリエだから……」
「……うん、そうだね」
思わず良い子良い子したくなるが、それを堪えて優しく微笑む。
ローリエ的には、セリュー様やセレナ様が俺の子供設定で少し思うところがあるのだろう。
それでも、それらの事情を飲み込んで、でもやっぱり思うことはあるので言葉にしたのだろう。
本当に可愛い子だ。
言葉はなくても、互いに想い合えば気持ちは通じるもの。
俺の微笑みに安心感でも覚えてくれたようで、少しだけ表情を緩ませてから更に抱きついて甘えてくるローリエ。
「ふふ、モテモテですね、お父様」
そんな親子の触れ合いを見て、からかってくる王女様。
「普段、お父様はお忙しいから、あんまり構って貰えないので、こうして3人で出掛けられて良かったですね」
その言葉には、セリュー様と王女様のリアルが隠れてるように思えた。
父親が国王ともなると、忙しさは比ではないし、触れ合いどころか話す機会も少なくなりがちなのだろう。
だからこそ、親子っぽい肩車にセリュー様は喜んでいる……そんな事を伝えたいのだろうと分かってしまうのが何か嫌だった。
セリュー様の件はともかく、王女様と以心伝心というのが親しく思えて嫌なのだが、向こうとしては俺は面白い存在みたいなので、今後も絡まずには居られないのだろう。
厄介だが、向こうの知識も必要な時があるし、ローリエの友人でもあるので今後も交流は必至と分かってしまう。
「苦労をかけてすまない。今日は存分に見て回ろうか 」
そして、利害も一致してるのでそれがまた悲しいことに今後も付き合いがありそうだと分かって悲しくなる。
とはいえ、それは仕方ないので、ローリエのついででもセリュー様のお相手はすると遠ましに伝えると、満足気な表情を浮かべる王女様。
そんな秘密のやり取りをしている間も、俺に甘えてくるローリエと肩車に嬉しそうなセリュー様は和みではあった。
うん、これくらい子供は本来可愛いものだよね。
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