第124話 父親への憧れ
「父ちゃん!肩車してよ!」
「よしきた息子よ!父の上から世界を見るがいい!」
「わーい!」
賑やかな親子のやり取りを偶然にも目撃する。
父親としてのイメージは俺とは違うが、ああいう子供に近い父親も悪くないとは思う。
とはいえ、俺は一応貴族でもあるし、ローリエの中のカッコイイ父親像を崩す訳にもいかないので、やるとしてももう少し上品に受け入れることにはなりそうだなぁと思っていると、同じく見ていたセリュー様が羨ましそうな視線を向けていた。
「セリュー、どうかしたの?」
「い、いえ。なんでもないです」
ローリエと楽しそうに話していたセレナ様が気になったのかそう声をかけると、何でもないように視線を逸らすセリュー様。
しかし、気になるのかチラチラ視線を向けているセリュー様の様子から、何に反応したのかを敏感に察したセレナ様は何とも良い笑みを浮かべてセリュー様に言った。
「せっかくだし、セリューもお父様に肩車して貰ったらどうかしら?お父様の上はきっと見晴らしが良いわよ」
「で、でも……」
「やった事ないのだし、せっかくの機会だから頼んでみたらどうかしら?ねぇ、お父様」
……この王女様の思惑通りに動くのは何となく尺ではあるが、セリュー様の様子からこういう親子の触れ合いの少なさを感じ取れてしまったので拒否するのも可哀想に思えてしまう。
「そうだね、おいでセリュー」
「い、いいんですか……?」
「勿論だよ。親子だしね」
そう言うと、どこか嬉しそうに駆け寄ってくるセリュー様。
そのセリュー様をひょいっと持ち上げると自分の肩の上に乗せて立ち上がる。
「わぁ……!高い……!」
実に嬉しそうにセリュー様。
こういう所はまだまだ子供なのだろうなぁと思っていると、ローリエが俺の傍に来てクイクイと服を引っ張った。
少しだけ頬が膨らんでいて、それはそれで可愛らしい我が娘。
その様子から、セリュー様にヤキモチを妬いてるのだろうと察して俺はローリエを抱っこすることにする。
「ほら、ローリエ。どうかな?」
「……うん、ここが一番落ち着く」
お姉さんモードを保ちつつも、少しだけでた素に微笑ましくなるが、肩の上で楽しげなセリュー様に、腕の中で寄り添ってくるローリエ。
なるほど、これがモテ期かと思ったが、ミントやバジルが大きくなったらこういう事もありそうなので慣れておくのも悪くない。
「ふふ、お父様は人気者ね。私も後で肩車か抱っこをして貰おうかしら」
実に楽しげな王女様。
俺をからかうような口調が半分、そして弟のセリュー様を微笑ましく思っているのが半分というところかな?
そのセレナ様の言葉に、ローリエは絶対に譲らないと言わんばかりに俺に寄り添ってくるのだが、その様子がとても愛らしくて、ウチの娘は本日も大変可愛らしかった。
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