第112話 庭師長とヤンチャ坊主
「ゼン、新人の様子はどうかな?」
庭師長であるゼンの元に行くと、ゼンは厳つい顔を引き締めて言った。
「これはカリス様。ええ、なかなか生意気ですが度胸はありますよ」
「それは良かった。簡単に音を上げたらどうしよかと思っていたからね」
「クソジジイ共め……」
忌々しげにそういう言うオレンジにゼンは一発軽く頭を殴ってから言った。
「その口調は直せと言っただろうが。馬鹿者が」
「そう簡単に直ったら苦労はしないだろ」
「全く……頑固な奴だな」
面白い会話に笑ってから俺は聞いた。
「ゼン。率直に聞くが、お前の引退までにオレンジは使えるようになりそうか?」
「……問題ないかと」
「引退って、ジジイ引退するのか!?」
「ああ。って言っなかったのか?」
そう聞くとゼンは視線を反らして言った。
「ま、すぐにじゃないさ。少なくともお前が一人前になるまでは面倒見るつもりだ」
「引退して、孫夫婦と住むなんてなかなか素敵な老後じゃないか。素直に羨ましくなるよ」
「カリス様は奥様とお嬢様がいれば幸せでしょうに」
「まあね」
二人がいるのなら確かに幸せだ。ローリエはいずれ嫁に行ってしまうと思うと寂しい気持ちもあるけど、やっぱり幸せになってほしいからね。その相手がセリュー様なのかどうかはわからないけど。こないだ新しいフラグが立ったセリュー様がどんな選択をして、ローリエがそれをどう受け止めるのか。場合によってはあの少女を側妃にという展開もあり得そうだけど、複雑な気持ちには変わりない。別にハーレムを否定はしないけど、いざ自分の娘がハーレム要員になると考えるとかなり嫌ではあるよね。
まあ、ローリエが幸せなら別にいいけどさ。もし、ローリエと婚約解消してあの少女と婚約するのならそれはそれでセリュー様を大きく見直すことになるだろう。ローリエの反応からして今のところはセリュー様への想いはあまりなさそうだし、セリュー様が淡い恋心をどう変化させるのか。まあ、将来的な話ではあっても油断は出来ないだろう。
「とにかく、頑張って一人前になってくれたまえ。オレンジくん」
「くんはやめてれ……ください」
「うんうん。よく直した」
反射的にゼンの拳骨が見えたのでとっさに言い直したのはいい判断だろう。やっぱりこういうタイプは体に教える方が早いだろうからね。そんな風にしてオレンジの様子を見てから新しく植えた花を見てからサーシャの元に向かうのだった。やっぱり好きな人に会うときは花も必要だからね。
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