第106話 偽物ローリエ
「お父様!」
今日も今日とて、攻略対象に剣術を教えているときにそれは起こった。ローリエの姿をしたそれは慌ててこちらに駆け寄ってきて言った。
「お母様が大変なのです!すぐにお部屋に!」
「そうか。わかった」
そうして俺が背中を向けると、それはナイフのようなものを取り出して背後から俺を狙ってくるが……俺はそれを普通に避けてから片手で地面に抑えつけて言った。
「おいおい、わざわざ家の娘を真似てやることが暗殺かい?」
「お、お父様何を……」
「私は君の父親ではないよ。私の娘のローリエの姿を真似ようと私にはすぐにわかるからね」
確かに見た目はローリエにそっくりだ。声も近いし普通なら騙せるだろう。だけど……
「相手が悪かったね。私は子供達とサーシャの見極めに関してはかなりの眼力を持ってるんだ」
チラリと攻略対象を見ると皆唖然とした表情をしていた。
「フォール公爵。その人はローリエ嬢ではないのですね?」
唯一、婚約者のセリュー様は俺の行動でその結論に至ったようなので、頷いてから言った。
「私は今から屋敷の中を調べます。皆はこのままここで訓練を続けてください」
「お一人で大丈夫ですか?」
「ええ。問題ありませんよ」
「……どうして気付いたの?」
そんな会話をしていると、ローリエの姿をしたそれはそんなことを聞いてきた。
「だから言っただろ?君の変装は確かにレベルが高いけど、私は愛する者を間違ったりはしない。そもそも本物のローリエなら服の下にそんな物騒な物を隠したりはしないよ」
「……それで?私をどうするの?殺す?」
「まさか。子供を殺したりなんてしないよ。だから一つ提案。私に雇われないかな?」
「なんですって?」
「君のお仲間も一緒にね。君、孤児でしょ?行く宛なくて、こんなことしてるなら、私の元に来なさい。仲間が不安ならその子達も助けてあげよう」
どういう経緯でここに来たのか大雑把に推察すると驚いてフリーズするその子。俺はその子に微笑んで言った。
「大方君の雇い主はマッシュ伯爵辺りだろう。最近ローリエとセリュー様の婚約でかなり頭にきてたみたいだしね。少なくとも彼よりも厚待遇を約束しよう。私を襲ったことも水に流しても構わない」
「なんでそこまで……」
「子供の過ちを許して正すのも大人の役目ってね」
そう笑いかけるとその子は俯いてからポツリと言った。
「お願いします……私達を助けてください」
「ああ、構わないよ」
「屋敷に忍び込んだのは私を含めて4人です。私はどうなっても構いません。だからその子達を助けてください」
「大丈夫だよ。私は約束は守るからね」
念のため保険をかけてその子を連れて屋敷に戻る俺。一仕事やるしかないな。
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