第103話 報告会
「バジルとミントが言葉を話したのですか?」
夕飯の席にて、驚いたようにそう言うサーシャ。最近は部屋を移してサーシャも前のような生活に戻ってきているが、それでもちょくちょく様子を見に行ってるので驚くのだろう。
「ああ、バジルは侍女のユリーの名前を。ミントは私のことを呼んでくれたよ」
「そうですか……嬉しいですが、私はまだ呼ばれてないので少しだけショックです」
「お母様、私もです。後で部屋に行ってお姉ちゃんと呼ばせてみせます」
そして、ローリエもまたここ最近になってさらに大きくなった。だんだんきちんと女の子として育っているローリエは最近は王妃教育のために城に行く頻度が増えた。大変そうだが、本人はかなり楽しんでやっているようなので一安心である。
「そういえば、お父様。今日何やらまた知らない方がお父様の剣術の授業にいましたが、新入りさんですか?」
「ん?ああ、ビクテール侯爵の息子さんだよ。前から指導をしていたんだけど、今日からこっちに定期的に通ってもらうことになったんだ」
本来の乙女ゲームであれば、ローリエの義理の弟である存在がビクテール侯爵家にはいる。名前はマスクと言うのだが……まあ、色々あって俺が剣術などの面倒を見ることになったのだ。
「そうなのですか。なんだか凄く熱心にその方を見ている侍女さんがいたのですが」
「ああ、うん。その彼の侍女だね」
マスクの侍女にはメリーというショタコンの気が強い少女が居るのだが……前よりもショタコン具合に拍車がかかっている。これからどうなるのか気になるところだがやぶ蛇はごめんなので静観することにする。
「そうそう、お母様。王妃様が近いうちにお茶をしたいと仰っていたんですが……ご予定は大丈夫ですか?」
「ええ、いつでも大丈夫ですよ」
「大丈夫なのか?なんだか最近顔色が良くないように見えたけど」
「大丈夫です、旦那様。少しだけ気分が優れないだけです」
「もしかしてと思うけど……吐き気とかの体調不良と酸味が欲しくなったりしないかな?」
そう聞くとサーシャは少しだけ心当たりがあるのか視線を反らして言った。
「少しだけです」
「そうか……念のため医者を呼ぶ方がいいかもね」
「だ、旦那様。私は大丈夫です」
「いや、あくまで可能性だけど……もしかして、サーシャ妊娠したんじゃないかな?」
初期症状がそっくりで、前回のことを思い出しながらそう言うとサーシャはキョトンとしてから思い当たるのか呆然として言った。
「た、確かに似てますが……」
「まあ、凄く愛してしまったから当然の結果なのかもしれないけど……もしそうならありがとう、サーシャ」
「旦那様……はい」
「お母様。おめでとうございます」
「気が早いわよ、ローリエ。でもありがとう」
病気の可能性もあるが、もしそうなら何がなんでも治してもらう。でも、きっとこれは新しい命の誕生であるとなんとなく確信するのだった。
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