第38話 報告と癒し
「旦那様……お帰りなさいませ」
ローリエを母上に任せてからサーシャの部屋に入ると、いつもよりは体調が良さそうな愛しの妻が俺を笑顔で出迎えてくれた。
うん、これだよこれ。この笑顔を見たかったんだ……!
内心でその笑顔に悶えつつ表情はあくまで優しく、紳士なカリスさんで俺はサーシャに近づいた。
「ただいま、サーシャ。体調は大丈夫かい?」
「はい。今は比較的落ち着いてます」
「そうか……良かったよ」
そうはいいつつも俺は少しサーシャを観察してみる。俺の愛しの嫁はいつも我慢してしまうことがあるので、常日頃からの観察が何よりも重要なのだ。そんな風にじーっとサーシャを見つめていると、サーシャはその視線を受けて少し恥ずかしそうに言った。
「あ、あの……旦那様。そんなに見つめられると、その……」
「ん……ああ、すまない。可愛い嫁の顔を見たくてついね」
「か、可愛いって……」
照れくさそうに微笑むサーシャ……やべーよ。可愛いすぎるんだけど!?俺の心に刺さっていた刺が浄化されるような可愛い反応をする嫁……うん、やっぱりこれこそ俺の守りたかったものなんだと改めて実感する。
そんな風に照れていたサーシャだったが……ふと、こちらを見てから何かに気づいたように言った。
「あの、旦那様……何かありましたか?」
「うん?何かって?」
「あ、あの……私の思い違いならすみません。けど、なんだか旦那様の表情が少しいつもより疲れているように見えたので……」
その言葉に俺は少なからず驚いてしまった。完璧にいつものカリスさんの表情を保てていたはずなのに、内心の疲れを言い当てられるとは……
「そう見えるかい?」
「ええ……あの、もしかしてまた私かローリエのためにご無理をなさったのですか?」
「無理って……私は二人のために無理なことは何一つしてないよ」
とはいえ、疲れていることを見透かされたので俺は今日の出来事をかいつまんでサーシャに話した。まあ、もちろん乙女ゲー関連のことは口にはしなかったけどね。あとサーシャが心配するようなことは話さずに俺はあくまで何人かで悪い連中を片してきたと説明することにした。
そうして一通り話が終わるとサーシャは俺の手を握って優しく撫でながら言った。
「旦那様……私は私やローリエのために一生懸命になってくださる旦那様のことが大好きです。でも、無理はしないでください。もし旦那様がいなくなったらと考えたら私……私は……」
悲しげな表情を浮かべるサーシャ。俺はその表情を見て自分の愚かさを呪った。俺はサーシャとローリエにこんな表情をさせたくなくて行動することを選んだんだ。それなのに乙女ゲーム関連で身を削る思いをして、挙げ句にサーシャにこんな表情をさせるなんて……許されるはずがない。
俺はサーシャをゆっくりと苦しくないように抱き締めて言った。
「大丈夫……私はずっとサーシャの側にいるから」
「……本当ですか?」
「ああ。本当だ」
「私が……私が死ぬまで旦那様は側にいてくださいますか?」
「むしろ私はサーシャを手放すつもりはないから覚悟してくれ」
「旦那様……」
ぎゅっと抱きついてくるサーシャ。その体は少し震えており、俺はそれを優しく抱きしめながら改めて二人を守ろうと強く誓ったのだった。
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