文学少女が目覚める時

「厭世的なギャルが文学少年の色に染まる」とタグにあるが、本当にそうだろうかと私は思った。

隣の席にいるクールな文学少年が気になる女の子。彼が読んでいる本をつい買ってしまう。関わりを持ちたくて。その切っ掛けが欲しくて。可愛い思考だ。

ただ彼女の思考は軽いギャルって感じではないのだ。まさに文学だ。

──自身の背丈を超える水位の活字の海に溺れそう
──ワイングラスの持ち手のように薄い唇
──250円前後で切り売りされる非現実的な愛の歌
──太陽を拒んだ孤独な漆黒と、その優しい黒に寝そべる星々
──ハルジオンみたいに控えめに笑った
──霜が溶けるほど真っ赤に染まった耳

美しい。どの表現も美しい。
文学少女じゃないか! こんなに美しい表現で日常を言い表す彼女は。

びっしりと活字が埋まった本に、尻込みする彼女。
しかし、彼女の中にはもう、びっしりと文学が息づいている。

二人はもっと近づいていけると感じた。
美しい活字の海を軽やかに泳ぎながら。

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