第28話 瑞波の部屋
「今から私の部屋に来て!」
そう言って俺の手をずんずん引っ張って2階に連れて行かれてしまった。そして「みずは」と可愛らしい文字で書かれたところの前まで到着。
「ちょっと待ってて。お部屋掃除してくるから。汚いわけじゃないんだけどやっぱり恥かしいっていうかさ」
「あ、うん」
そして瑞波は部屋に入って行った。いや、そんなことするくらいなら部屋に入れなくてもいいんじゃないかと思う。
入ってみたいけどやっぱり俺もかなり緊張するし、いきなりだったから心に準備が出来てない。今から俺は生まれて初めて女の子の部屋に入るのか…やばいなドキドキする。
「お待たせ」
俺が覚悟を決める間もなく瑞波がドアの隙間からひょっこりと顔を出してちょいちょいと手招きする。部屋の掃除するって言ってまだ5分も経っていないけど何をしたんだろう。
「それじゃあお邪魔します」
遂に俺は瑞波の部屋に入ってしまった。すごい片付いているだけど。ぬいぐるみとかあってなんだか可愛らしい部屋って感じだ。
ただ何故かめっちゃ甘い匂いがする。なんだろう。ローズ系の香り?
あ、これ中学の女子ソフトボール部の集合写真だ。懐かしいなぁ。このころから俺は瑞波のことすごい好きだったからな。
「ちょっとあんまりじろじろ見ないで……恥ずかしいよ……」
「あ、ごめんごめん。それで俺はどうしたらいいの?」
「そうだね。じゃあそこにある私のベッドにうつ伏せで寝て貰っていい?」
「は?」
おっと。瑞波があまりにもおかしなことを言うから変な声が出てしまった。瑞波はこういう冗談も言うんだな。それで本題はどうなんだろう。
「あれ、聞こえなかった? 私のベッドがそこにあるからうつ伏せで寝て欲しいんだけど」
まさかのガチだった。冗談じゃなかった。瑞波がビシッとベッドの方を指さしている。なんだか覚悟決めた顔もしてるんですけど!
「あ、あの瑞波。さすがにそれはレベルが高いっていうか、瑞波だっていやだろ? 男が自分のベッドに寝転がったら」
「そりゃあ普通の男の子だったら嫌だけど、私の大好きな大樹くんだし何の問題もないよ。男の子家に上げたのも大樹くんが初めてだし……とりゃあ!」
「うおっと!」
急に瑞波に強く手を引っ張られてしまったせいでバランスを崩してベッドにうつ伏せで不時着。
「ぐぇっ」
その上から瑞波がダイブして来た。いやいや足怪我してるんだよね?
「ちょっと大樹くんぐぇはないでしょ! 傷つくよ!」
「急に乗って来たから条件反射でさ。それより足大丈夫なのか? 今、結構足踏ん張って引っ張ったよね?」
出来るだけ冷静を装って瑞波に話しかけるけど内心はやばい。瑞波の布団と瑞波本人に挟まれて瑞波サンドイッチが完成した。してしまった。俺が肉の部分。
360度から瑞波の甘い匂いが…。あぁやばい幸せホルモンオキシトシンがドバドバ出てきてる気がする。
「足は大丈夫。大樹くんにテーピングして貰ったおかげで今のは余裕だったよ」
「マジか…」
しまった。さっきの完璧なテーピングが仇となってしまったらしい。
「ふふふ。これでようやく大樹くんにお礼できるね」
「この状況で何をしようと言うんだ」
「まぁまぁ。はい、力抜いて~」
「ヒョウッ!」
瑞波はそれだけ言うと俺の背中辺りを触って来た。正確には押して来たというべきか。びっくりしてたぶん人生で二度と発しないだろう声を出してしまった。
「あはは大樹くん変な声~。ほらほら動かないでね~」
そのままグッグッと俺の背中を押していく瑞波。やばいくすぐったい。
「大樹くんへの私からのお礼はマッサージです。ネットで調べてお母さんたちで実践してるから腕は確かだよ。だから私に身を委ねて。気持ち良かったらそのまま寝ちゃってもいいよ~」
なるほど。これはマッサージだったのか。そう思ったら急に身体の力が抜けて来た。言葉通り瑞波に身を任せるように…
すごい気持ちいい。丁度いい力加減で的確に押してくれてる。本当にこのままだと寝てしまいそうでやばい。
気持ちよさと疲労と風呂まで入ってもう寝る要素が完璧にそろっている。
「ほらほら~このまま寝ちゃえ~」
「ちょっ、それはダメだって寝たらもう明日の朝まで起きられなくなりそう」
「それでもいいよ。今3時だからいつまで寝るんだって話だけど。それなら今日の夜は一緒に寝ようね。明日は一緒に部活に行けるし…あっ良いこと尽くめじゃん!」
確かに魅力的だけど! 自分の親に女の子の家で一晩過ごしましたとか言える訳がないし、瑞波のご両親にもなんて言えばいいんだよ。
「そうとなったら本気出しちゃお」
ここで恐ろしい声が聞こえた。さっきまでのが本気じゃない? アップくらいの感覚だったってことなのか?
これ、本当にこのまま寝てしまうんじゃ? 俺耐えきれるだろうか。
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