情報開示
「……そもそも、この妖の活性化が、人為的なものであるという根拠はあるんですか?」
苦し紛れのように聞こえるかもしれないが、水野の反論には静夜も「確かに」と静かに頷いた。
《平安会》、特に竜道院家は、この騒動が誰かの悪意によって引き起こされたものであると確信しているようだ。
いくら仲間が傷付いたからといって、冷静さを欠いた犯人探しを始めるほど、彼らも愚かではない。
静夜たちに
「――それは、
突然、鳴りを潜めていた怪物が、目を覚ましたかのようにその存在感を輝かせる。
会場の視線は一斉に声の主、竜道院
降り
「単刀直入に教えてやろう。……東の
雷が落ちる。比喩ではなく。
夜の闇を斬り裂く閃光が、すべての雑音をかき消す轟音が、京都の街を駆け巡った。
「せ、〈青龍の横笛〉やと?」「んな、あほな! アレはただのおとぎ話とちゃうんか?」「せやったら、これは何か? 妖どもが暴れとんのは、神の
慌てふためく陰陽師たちの様子は、まさにバケツをひっくり返した大雨の如く。
羽衣から飛び出した単語はまさしく、天からの
〈青龍の横笛〉。これはまた、とんでもない代物が出て来たと、静夜からは思わず苦笑いがこぼれる。
羽衣は話を続けた。
「
さらにどよめきが増す中、唯一竜道院家の席だけは取り乱すことなく黙って姫君の話を受け入れている。一族の者には事前に話が済んでいたのだろう。
静夜の隣に座り直した舞桜も、
故に、これが悪い冗談だとか、姫様の気まぐれの悪ふざけだとか、そういう笑い話では済まないことも分かっている。
「……一刻も早く〈青龍の横笛〉を探し出すのじゃ! ただの伝説、伝承と軽んじるのは勝手じゃが、かの東の神獣が本気になってからでは全てが手遅れぞ!」
皆が同時に息を呑み、呼吸を忘れる。
無理もない。伝説の
「……さて、
羽衣は最後に楽しそうな笑みを浮かべ、静夜たち《陰陽師協会》京都支部に向けてそう告げた。
再び、非難と疑念の視線が、会場中から集まって来る。
羽衣の話はこの事件において大変重要な情報の開示であった。それと同時に、犯人の存在を明確に示すものでもある。
この中で最も疑わしい静夜たちはより一層、騒動に対して動きにくくなったと言えるだろう。
《平安会》の中にはもう既に、彼らが黒幕に違いないと、決めつけている人たちもかなりいるようだ。
羽衣は話し終えるとそのまま高座を降りて、総会を途中退席してしまう。
この話をするためだけに、彼女はわざわざ総会に顔を出したのだ。
〈青龍の横笛〉が盗まれたことに本気で危機感を抱いているのか、それとも強者の戯れか。
どちらにせよ、羽衣のもたらした情報によって陰陽師たちの顔付きは変わった。
今回の事件、気を抜けば、もしかしたら京都の街が滅びるかもしれない。
総会に集まった陰陽師たちは、誰もがその地獄を頭の片隅に思い描き、羽衣が去ってからは誰一人余計なヤジを飛ばすことなく、話し合いは雨と
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