【109本目】キートンの探偵学入門(1924年・米)
何かのドキュメンタリーで動のチャップリン、静のキートンって紹介されてたけど、この二人のスタイルの違いってとんねるずとダウンタウン(というか松ちゃん)のそれに近いと思う。
【感想】
考古学には、【オーパーツ】という言葉が存在します。
ナスカの地上絵のような、発見された場所、作られた時代とはまったくそぐわない技術が使われている遺物や工芸品を指す言葉です。
転じて映画ファンの間では、製作・上映された年代に対して視覚効果などの技術がハイクオリティすぎる映画やシーンが【オーパーツ】と呼ばれたりします。
【2001年宇宙の旅】とか、【ガメラ3】の空中戦なんかが言われがちですね。
1924年の【キートンの探偵学入門】は、映画に色も声もなかった時代の映画でありながら、並みはずれた特撮技術や命懸けのアクションによってシーンの一つ一つがオーパーツづくしになっている映画です。
この映画、前半は「確かに面白いけど、歴史に残るほどかな……?」という感じなんですが、中盤から後半にかけて、主演・バスター・キートンの命知らずのアクション、スクリーンの中に入ったりトランクの中に入ったりの「え、今何やったの!?」と思わせる特撮技術(当然CGは使えない時代)、B級映画商業映画も何のそのな勢いで畳み掛けるシナリオなど、現在の視聴者にも全然通用する笑いと白熱の展開が続きます。
見終えたころには、1世紀近く前に製作された映画であるということに改めて驚くことになると思います(僕がそうでした)。
上映当時撮影技術に詳しい人がおらず、撮影技術を語り継ぐ人間がいなかったからなのか、プロのカメラマンがどうやって撮影したのか必死で研究したり、現代のCGクリエイターたちが撮影技術に度肝を抜いた、なんて逸話もある映画なんです。そういう意味では、オーパーツというよりはロストテクノロジーに近いかもしれません。
今年(2020年)になってパブリックドメイン化されて一気に見やすくなった映画なので、レトロ映画のみならずアクション映画が好きな人とかには是非見てほしい作品です。
【好きなシーン】
終始「これどうやって撮ったの?」というシーンがてんこ盛りなので、好きなシーンと言われると多すぎてあげられないかもしれないです。
バイク(原付?)のハンドルに乗っかったまま運転手がいない状態で爆走するところとかはわかりやすいアクションシーンって感じで白熱できますけど、自分が特に感動したのはビリヤードのシーンですね。
悪役がキートンを倒すために玉の一つを刺激を与えると爆発する爆弾にすり替えるけど、キートンが何回ショットをしてもその玉に当たらない、という笑いのあるシーンなんですが、ブレイクショットとか直近でのショットとか、絶対その玉に当たるでしょ、という場面でも、キートンはカーブショットやジャンプショットを駆使して決して当たらないように打ってて、笑いよりも先に【かっこいい!!】という感情の方が勝つシーンでした。
キートン自身ビリヤードが大得意だったためあのシーンは一発OKだった、というエピソードを聞いてさらに感動。
また中盤の走る汽車の上を逆走するリアルスーパーマリオなシーンも見どころですけど、あの場面は落下シーンでキートンは首の骨が折れたけど、本人はそのとき「痛っ」と思った程度で、一年後の完治後にようやく骨折が明らかになった、何て人間離れしたエピソードもあります。
ジャッキー・チェンがバスター・キートン含めた当時のコメディ映画から多大な影響を受けている、みたいな話はそこそこ有名ですけど、キートンのそういう話聞いてると、ジャッキーが命知らずなアクションするのは作風のみならず、俳優としての精神すらも彼みたいな俳優から影響受けているからなのかもな、とか思ってしまいますね。
あとそれだけハチャメチャやっておいて、チャップリンのそれに近い、間抜けでさえない男がヒロインと結ばれるというハッピーエンドでさわやかな視聴後感を味わわせてくれるクライマックスシーンも好きです。
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