【107本目】The Guilty -ギルティ-(2018年・デンマーク)

 島が車で行ける距離に合ったりして向こうの国の地理事情がわかる

 

【感想】

 ちょっとマイナーな映画ですが、先ほどアマゾンビデオで見てバチボコに面白かった映画で行きます。

 アカデミー賞受賞映画でもある【セッション】や新しい切り口でミステリをやりきった映画【search】などを発掘したサンダンス映画祭で上映されて以降、様々な媒体で絶賛され、アカデミー賞外国語映画賞のデンマーク代表にも選ばれたサスペンス映画です。


 さてこの映画の特徴は、映画のほとんどすべてが主人公の務める緊急通報指令室だけで展開される、ということです。

 かつてヒッチコックが【ロープ】や【ダイヤルMを回せ!】などでほとんど一室のセットだけで物語を完結させる実験的な映画を1950年代くらいに製作してたんですけど、この映画はそれらの正当な後継作品、と言えると思います。


 ですがこの【The Guilty】が実験的なのはそこだけじゃないんです。

 なぜなら【ロープ】などのように事件がその室内で起こるのではなく別のどこか遠くの場所で起きており、電話を通じて主人公が事件を解決する構成になっているからです。

 主人公は緊急通報指令室のオペレーターとして働いている警察官ですが、そんな彼の下に寄せられた女性からの悲痛な電話を通じて、事件を解決していくのが筋道になっています。

 バナナマンが昔やってた【ルスデン】というコントが、日村が帰宅した家の固定電話の留守電から、最初平和そうだった友達の設楽がどんどんヤバい状況に陥っていくことがわかる、という構成になっているんですけど、そのコントと似たフォーマットに更にサスペンス・ミステリ要素を加味したのが【The Guilty】と言えるでしょう。


 さて一人の女性からの緊急コールから物語が始まるこの映画ですが、不運な被害者かと思われていた電話の主の女性がとんでもない闇を孕んでいた、ということが後半で明らかになっていきます。

 人間は脳にインプットする情報の8割を視覚情報から得ている、みたいな話をどっかで聞いたことがあるんですが、見えることじゃなくて聞こえてくることをメインに

思考をすると平気で個人的なバイアスが入り込まざるを得なくなるんだな、ということを考えずにはいられない展開でしたね。 


【好きなシーン】

 終盤の説得シーンですかねー。

 既に当直の時間は過ぎているので、仕事で動かなくてもいい、イーベンに対して責任を抱かなくてもいい立場のアスガーが、電話の向こうで陸橋から飛び降りようとするイーベンに対して警察官ではなく個人として説得する展開。

 ここの局面でアスガーはイーベンに対し(観客に対しても)、自分がかつて犯した罪を語り、イーベンと同じ闇を孕むものとして、生きてほしい、という個人の願いを告げます。

 【The Guilty】というタイトルが誰を意味していたのか、という疑問が解消されたことも相まって、ここ数年ではもっとも熱いものがこみ上げてくる説得シーンでした。

 

 またこういうほぼ一室だけで話が展開される映画って構造上ほとんどのカットで主人公の顔が映りこむので、それだけ主演の人たちの腕の見せ所でもあるわけですが、アスガーを演じるヤコブ・セーダーグレンの演技力は、映画の物語に見合う説得力を見事に持ち合わせていました。前半は軽口叩いてて気楽な雰囲気を出しつつ、後半の目まぐるしく変化する状況に応じて多彩な表情で反応するアスガーは、恐らく彼にしか演じることができなかったと思います。

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