【103本目】暗黒街の顔役(1932年・米)
アンタッチャブルの冒頭が髭剃りから始まるのもこの映画のオマージュかな?
【感想】
1920年代アメリカで横行したギャングの中でも、特に強大な権力を持っていたのが、【スカーフェイス】ことアル・カポネでした。1931年に彼は脱税で告発されて有罪判決を受けますが、その直後に大富豪ハワード・ヒューズのプロデュースで上映されたのが、ギャング映画【暗黒街の顔役】でした。
もう90年近く前の映画になりますけれど、王道を突っ走るギャング映画って感じで非常に楽しかったです。
ギャング映画によくある「成り上がり→頂点→破滅」という放物線を描くようなシナリオラインは、元をたどっていくとシェイクスピアの【マクベス】的なピカレスク作品とかに源流を見ることができますけど、この映画ではこのシナリオラインが当時まだ存命だったギャング・アル・カポネをモデルにしたキャラクターで展開される、という点で非常にセンセーショナルだったといえるでしょう。
物語はかつてのギャングのボス・コステロが射殺されて新世代のギャングによる権力闘争が示唆されるところからスタートしますが、主人公のトニー・カモンテが倫理とかモラルとかどうでもいい!!カネ・権力・女!!!!!という観念で動く絵に描いたような若手ギャングなので、映画全体に若者が醸し出すようなギラギラした空気が漂っているのも、ギャング映画の王道って感じの世界観ですね。
僕はBSプレミアムシネマで放送された【リオ・ブラボー】や【エル・ドラド】でハワード・ホークス監督のことを知ったクチなので、それらの映画でジョン・ウェインが演じたような【若者を見守る老練な兄貴分】を撮るのが上手い監督のイメージだったんですけど、まだ若かった当時のホークス監督(30代)が撮ったこの映画は、それらの西部劇とはかなり異なる様相を呈していました。
あと、制作陣(というか、多分ハワード・ヒューズ)は冒頭でこの映画にギャングのみならず、この状況に対処しない政府への批判も込めている、という前書きをしていますけど、本作を見ているとギャング相手にどういう対処もできない政府の無力さみたいなものも感じさせられます(結局ラストでは公権力がトニーを処刑するからまだよかったけど)
劇中で示唆されてる銃の製造がセーフで酒の販売がアウト、なんて異常な法規制環境は正に当時のギャングの蔓延に政府が対処できていなかったことの象徴ですし、当時の組織犯罪への対処に関して、市民が政府に感じた失望は大きかったんだろうなぁと思わされます。
【好きなシーン】
コステロ、ガフニー、ロヴォと、トニーの手にかかった男たちがことごとくカメラの外側で殺されている(銃声で殺害が示唆される)のがニクいですね。自分が特に感動したのは、ボウリング中のガフニーが殺されるシーン。ボウリングのピンが倒れると共に銃声音が響く絵面は、多分あの当時のギャング映画で最もスタイリッシュな殺害シーンの一つだったと思います。
ちなみにガフニーを演じているのはこの映画とほぼ同時期に【フランケンシュタイン】でブレイクしたボリス・カーロフですが、普通にクレジット見るまで気づきませんでした。
あと立ち位置やカメラワークなど(最初ロヴォがフレームの中心にいるけど、後半になるとトニーが、みたいな)で、最初ボスと部下の関係だったロヴォとトニーの権力関係が次第に逆転していくことが示唆されているところや、かつてロヴォが自分にやった命乞いをラストでトニーが公権力に向けて行うところも、ベタな演出ながら好きです。
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