【95本目】大アマゾンの半魚人(1954年・米)
なんかちょっと前までアマゾンプライムでブラジル産のこれ系の映画配信してたよね?チュパカブラが出てくるやつ……
【感想】
第90回アカデミー賞や第74回ヴェネツィア国際映画祭で栄誉ある賞を受賞したSF映画【シェイプ・オブ・ウォーター】は、言葉を発せない女性と半魚人らしき生き物のロマンスを描いた恋愛ドラマ映画でした。
この映画の舞台となっているのは冷戦期のアメリカですが、実はまさに冷戦期時代のハリウッドで、人間の女性に恋する半魚人の映画が作られていました。
【大アマゾンの半魚人】というタイトルのこの映画は、【シェイプ・オブ・ウォーター】のリスペクト元ともいわれている映画です。
この映画、日本ではレア映画の部類に入る(だってレンタル店にもDVD置いてないし……)んでしょうけど、海外では初代ゴジラと同年に公開された映画ながら様々な分野でリスペクトの対象となっている作品です。
上記のようにアカデミー作品賞受賞映画がリスペクト元にしているほか、本映画と同時期の【七年目の浮気】とかでも主人公とマリリン・モンロー演じるヒロインがこの映画の内容を語るシーンがあります。最近だと、2017年のミステリー映画【アンダー・ザ・シルバーレイク】で主人公がこの映画のTシャツを着ていました。
ちなみに【半魚人の逆襲】というタイトルで続編も制作されていますが、そこでの登場する教授の助手役としての出演がデビュー作となった俳優が、かのクリント・イーストウッドだったりします。
でもこの映画で重要なのは、後のコンテンツに与えた影響が非常に強い映画という点でしょう。とある怪物鑑定家(?)は今作がなければ【エイリアン】も【プレデター】も存在しなかった、と語っているくらいですから。
実際自分も見てて、あ、この演出あの映画で見た!って思うシーンが何回かありましたね。
映画本編の内容はどうかというと映像が白黒で不鮮明な時代特有の、クリーチャーに作り物感がなかった古き良きSF特撮映画って感じでした。
それを抜きにしても、自分を閉じ込める柵からにゅっと顔を出す半魚人、窓から手を伸ばす半魚人など、演出だけで怖いと思わせるシーンも多々あって、古いけどクオリティは高い、という程度の映画だったんです。
でもDVDに収録されていた特典映像を見てると、違う見方もできることに気づいてハッとさせられましたね。
生物学の調査のためにアマゾンの奥地に潜入した調査隊を半魚人が襲う、というのがメインとなるストーリーラインですけど、見方を変えると「平和に暮らしていた半魚人たちの沼に、人間たちが押し入ってきた」物語でもあるんですよね。
(今思ったんですけど【キング・コング】なんかもわりとこの文脈ですね)
それを考えると「調査隊を次々と殺す半魚人」→「沼地に無断で入る人間を追い出そうとしたけど加減がわからず殺してしまった」、「美女を攫って自分のアジトに閉じ込めようとする半魚人」→「女性を前に美や愛に目覚めたけど、コミュニケーションの取り方がわからないからとりあえず自分の住処に連れて行こうとした」といった感じに解釈が変わって、半魚人が単なる悪役に思えなくなってくるわけです。
それを思えば、少年時代この映画が大好きだったギレルモ・デル・トロが、半魚人が人間の女性を結ばれる物語を【シェイプ・オブ・ウォーター】にて描き出したことは必然と言えるのかもしれません。
【好きなシーン】
水中から迫ってくる恐怖、という点で【ジョーズ】に影響を与えた、とも言われてますけど、それ考えるとサメ映画よろしくサービスショットのためだからって水着になってきったねぇ沼(絶対感染症の危険あるでしょ)で泳いでるヒロインを見ると笑いがこみ上げてきますwその結果半魚人に狙われてますし。
(水中視点から見た水面で泳いでる女性のカットは、【ジョーズ】でも似たシーンがありますね)
でもなんといっても手に汗握ったのは、半魚人と男性陣との水中アクションシーンですかね! 上映時期を考えるとオーパーツレベルの緊張感ですよアレ。1970年代に撮影された昭和ライダーでたまにある魚類系怪人との水中戦でも、あそこまで目まぐるしく動き回ることはなかったように思います。
あと半ば無理やり宇宙進出とか別の惑星の環境の話とかが飛び出していて、【宇宙戦争】とかが上映されていた当時のSF映画の潮流みたいなものが垣間見えるのもポイントですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます