【80本目】ゴジラVSモスラ(1992年・日)

 社員研修でサバイバル訓練やらされる丸友観光、今だったら何らかの団体が動くレベルの真っ黒企業なんだよな……


【感想】

 【シン・ゴジラ】上映前のゴジラシリーズは、主に三つのシリーズに分かれます【ゴジラ(1954年)】から【メカゴジラの逆襲】までを指す昭和ゴジラシリーズ、【ゴジラ(1984年)】から【ゴジラVSデストロイア】までを指す平成ゴジラシリーズ、そして【ゴジラ2000ミレニアム】から【ゴジラ FINAL WARS】までを指すミレニアムシリーズです。

 僕は90年代に幼少期を過ごしたためこれらのシリーズの中では平成ゴジラシリーズが直撃世代なわけですけど、自分にとってその中でも最も思い出深くて重要な意味を持っているのが、平成ゴジラシリーズ4作目の【ゴジラVSモスラ】です。

 【スターウォーズ・エピソード1】が僕にスターウォーズシリーズの面白さを教えてくれたように、僕にゴジラシリーズの面白さを教えてくれたのはこの映画でした。


 【シン・ゴジラ】が記録を塗り替えるまで平成上映ゴジラでは最高の興行成績を成し遂げた、なんて記録もあったりする映画ですが、映画を観た方なら納得がいくでしょう。

 もうとにかくファミリー向け路線なんですよねこの映画。白目ゴジラの出てくる【大怪獣総攻撃】じゃなくてこっちをハム太郎と一緒に上映してたら違和感なかったくらい。


 ゴジラ!ビオランテ!キングギドラ!!って感じでおぞましい怪獣が出てくるゴジラシリーズは、幼少期の僕にとっては恐怖そのもので、故にスーパー戦隊シリーズやメタルヒーローシリーズなどのヒーローが主役となるシリーズに比べていまいちハマれずにいました。

 そんな僕が小学校低学年くらいになってからたまたま再放送で見たのが、この【ゴジラVSモスラ】でした。


 いやぁ、すごい熱中しましたね。


 まずジ・アイドル怪獣って感じのモスラが主役を担ってるから、ゴジラ(バトラもそうか)みたいな怖いデザインの怪獣がいてもなんとか怖がらずに見れました。今思い返せば、ゴジラよりモスラの方を先に好きになったのもこの映画が理由な気がする。


 そして勢力図も【ゴジラVSビオランテ】ほどには入り組んでおらず、人間とその味方(ちょっと齟齬はあるけど)のモスラ・敵のゴジラ・ツンデレのバトラって感じで子供やゴジラ初心者にもわかりやすい構図。

 さらに掲げるテーマも当時のトレンドである環境破壊・環境保護をテーマにしているうえに、ファミリー向けの作風だから同じ環境テーマのカルト映画【ゴジラ対ヘドラ】とも見事に差別化できています。


 もう間違いなくこの作品がなかったら【ゴジラ(1954年)】の芹澤の死に感動することも【シン・ゴジラ】の内閣総辞職ビームに興奮することも【ゴジラ・キングオブモンスターズ】の怪獣王VS偽怪獣王に脳汁吹き出しまくることもなかったと思うのですが、ファミリー向け路線で大ヒットした映画ですし僕以外にもこの映画に対して同じような思い入れがある方は多いんじゃないでしょうか?

 そういう意味では、平成ウルトラマンや平成仮面ライダーが「初心者におススメなのは?」という問題で答えが割れやすいのに対して、ゴジラシリーズだと僕は自信をもってこの作品を挙げられます。


 そりゃあシリーズ全体で見れば怪獣映画的な緊張感は薄い方ですし、他のゴジラ映画が好きな人からすれば「ぬるい」なんて感想も出てくるかもしれません。まして聞こえよがしに温暖化だの森林伐採だののフレーズが序盤から連発されるから、しゃらくせぇ!!って感じる人もいるかもしれません。

 でも当初ゴジラやキングギドラがマジで怖かった僕がゴジラシリーズにハマれたのはこの映画がきっかけだし、ゴジラと言うシリーズが長年愛されるコンテンツになるようにこう言うファミリー向け映画で敷居を低くしてくれた東宝向けのスタッフは、間違いなく僕にとっての特オタ人生の恩人なんです。


【キャラについて】

 モスラとバトラという二匹の怪獣が、明らかに【モスラ対ゴジラ】の後半で生まれた双子の幼虫モスラのオマージュということからして魅かれます。

 人間に見世物にされかけるコスモス(【モスラ(1961年)】の小美人のオマージュ)といい、新規ファン獲得に集中しているようで、昭和モスラを見た世代のことも決して見捨てていないのがこの映画の魅力です。


 【モスラ対ゴジラ】とかに登場した幼虫モスラがイモムシそのままのデザインでどうしても頼りなさが否めなかった(糸吐きも地味だし)のに対して、バトラが幼虫の時点で強そうだし、実際ゴジラと互角に戦えるくらい強いってのもポイントです。幼虫バトラの名古屋襲撃やゴジラVS幼虫バトラのおかげで、物語的にも絵面的にも前半が地味にならずに済みましたね。

 

 人間サイドはと言うと、自分拓也と雅子さんの距離感すっげぇ好きなんです。

 離婚夫婦なのに気まずくなることもなく大学生カップルみたいなからかいあいができるの羨ましすぎる。

 悪徳企業のサラリーマンなのに、安藤さんに終始いい人臭が漂ってるところも好きです。


【好きなシーン】

 冒頭のインディージョーンズのパロディ(つり橋んとこもそうか)と、モスラとバトラの共闘は言うまでもなく鉄板ですが、やっぱり黄色い血を流しながらゴジラと一緒に封印されてしまうバトラは子供ながらに見てて痛々しかったし辛かったですね……でもだからこそ、命を懸けてでもゴジラを封印したバトラの姿がより深く印象に残っています。

 ファミリー向けでありながら、決してみんなが笑顔で終われるハッピーエンドで終わらなかったところに、東宝スタッフの意地みたいなのが垣間見れる結末だったと思います。


 あとは前半で拓也が「卵持って帰らないと上に示しがつかない!」という安藤さんに対して発した「だから俺はサラリーマンにはなりたくなかったんだよ!」って台詞は、立場にかかわらず日本人なら一回は言ってみたい発言って感じで好きです。

 でも今見たらシチュエーション的にはヤバいことしてるのは拓也の方だなアレw

 

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