【144本目】藁にもすがる獣たち(2020年・韓)
【感想】
洋画不足の日々が続いておりますが、昨日見に行って久々のヒットだったので更新します。
日本の曽根啓介の小説を原作とした本作は、今作が長編デビュー作となるキム・ヨンホンの監督作となります。
しかしながら、デビュー作とは到底信じられない、流れるようで、それでいてこちらの意表を突く、洗練されたストーリーラインには、こちらとしても終始目が離せませんでした。まだ3月ですけど、現時点では本作が2021年に見た映画の暫定ベストです。
ストーリーラインは、一見無関係な人々が、運命の偶然と一つのただならぬアイテムによって時に直接的に、時に間接的に関わり合う、というソダーバーグ映画や成田良悟作品を思わせるつくりになっています。
この映画のポイントはやはりただ関わり合うだけでなく、騙し合い、殺し合うという点でしょう。
登場人物がほとんど騙して殺すワルかクズなので、タランティーノやコーエン兄弟の映画を思わせる作風です。
ただ、多分普段のタランティーノ映画よりも死亡率は多めだと思います。
【好きなシーン】
チョン・ドヨン演じる悪女・ヨンヒの活躍するシーン全般っすね!!
自分がマゾ気質なのが関係してるんでしょうけど、悪人で野心があってその上美人な女性ってのは魅かれます。
DV被害者の部下を利用しては切り捨て、警官を名乗る男も殺し、夫である審査官や借金取りを利用するそのやり口は、SFによくいる下手な世界規模のヴィランよりも数倍カリスマ性がありました。
結局彼女も劇中の大半のキャラに同じく悲惨な末路を遂げますが、それでいてその悲惨さ自体にも絵になっているように見えましたね。
また今作は、血しぶきが飛び交う人が死ぬシーン自体にも、独特の味があります。
ただ血液が飛び交うシーンが多いだけなら韓国映画ではよくある光景ですけど、この映画ではどこか黒い笑いが飛び交う、それこそタランティーノ映画でよく見る光景がウリです。
特に出入国審査官の【ラッキーストライク】を伏線とした不条理さ・悪趣味さMAXの死に方は笑えなさが笑えるというおかしな感情に見舞われましたね。
同様に背中を小突かれた、みたいなモーションで背中をぶっ刺される借金取りの組長の死亡シーンもすきです。
あと家庭ではDVされっぱなしの主婦が自分に惚れてる不法入国者相手には強めに出まくるシーンや、認知症で嫁相手にもいじわるなフリーターの母親が、終盤で息子相手に強さを見せるシーンといったような、相手によって見せる側面を変える、というキャラクター構成もツボです。
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