【114本目】ブルース・ブラザーズ(1980年・米)

 ゾンビが跋扈しても仏頂面を崩さなかったビルマーレイ・アダムドライバー主演の【デッドドントダイ】にこの映画へのリスペクトを感じるのは僕だけだろうか


【感想】

 全国のシネコンでは去年まで、午前中に様々な歴史的名作映画を上映する年間イベントの【午前10時の映画祭】が開催されていました。去年2019年にラストと銘打って(ラストじゃないっぽいけど)開催された【午前10時の映画祭10】でも、【ジョーズ】や【風と共に去りぬ】、【七人の侍】や【バック・トゥ・ザ・フューチャー】3部作など、優れた脚本が評価されている名作が数多く上映されました。

 そんな映画群の中で、【脚本なんてあってないようなもの】という映画が春ごろに一作上映されていました。

 脚本の代わりに音楽とダンス、あとほんの少しのカーチェイスが映画を動かし、結果誰もが楽しめる痛快傑作映画となったのが【ブルース・ブラザーズ】です。ゾンビが歌って踊る【スリラー】の超有名PVを手掛けたジョン・ランディスが、監督を手掛けています。


 劇中の演奏シーンやダンスシーン、そして緩急?何それ?って感じの勢い全振りの脚本が評価されているためか、40年前の映画でありながらいろんな場所で熱いリスペクトを受けている映画になっています。劇中でBGMとなって流れる歌はその多くが現在の日本人にもCMやバラエティで聞き覚えのある音楽です。

 そして【MIB】、そして作風は真逆ですが【マトリックス】のエージェントの服装でも主人公二人の衣装がオマージュされている、といった具合に、後のハリウッド映画からも手厚いリスペクトを受けています。


 全編にわたってブルースやR&Bなどの黒人音楽へのリスペクトにあふれた作品で、主人公兄弟の黒スーツ、グラサン、黒帽子の服装も、もとはと言えばブルースミュージシャンへのオマージュです。

 ジェームス・ブラウンやレイ・チャールズ、そして【映像の世紀】で【マイケル・ジャクソンにも影響を与えた】と紹介されたキャブ・キャロウェイなど、世界的にムーブメントを起こした黒人ミュージシャンが数多くゲスト出演しています。

 そして黒人ミュージシャン以外にも、主人公を追い回す激ヤバ女を演じるのが遠い昔遥か彼方の銀河系の反乱軍を指揮するお姫様だったり、終盤に登場する職員がハリウッドを代表するSF映画監督だったりと、【なんでここにあなたが!?】みたいなゲストがいたりします。


 映画の展開も、ソウルミュージックのごとく頭よりもソウルで考えたような勢い重視の展開が序盤からラストまでひたすら続きます。終盤の車をゴミのように扱うカーチェイスシーンなどが特に見どころですけど、それこそシリアスなストーリーとか歴史や政治をテーマにした重い映画はかたっ苦しくて苦手……という人には全力でオススメしていきたい映画です。


【好きなシーン】

 ひたすら何も考えずに歌って踊る映画でありながら、ラストシーンの刑務所でジェイルハウスロックをノリノリで歌う兄弟の姿は何かこみ上げるものを感じるんですよね。

 犯罪犯して豚箱にぶち込まれるような負け組人生かもしれないけど、それでも持ち前の無敵のポジティブさは決して折れない!というオチで、「この先何が起きても、こいつら一生このままなんだろうな」と思わせてくれるし、特にメッセージ性とかないのになぜかこっちまでポジティブな気持ちにさせてくれる、【リトル・ミス・サンシャイン】に近いものを感じるラストシーンなんです。


 あと楽しい映画ではあるんですが高級レストランの厄介客シーンとかカントリーバーの演奏シーンとか、共感性羞恥を覚えるシーンがそこかしこにあるので、真面目な人には視聴注意かもしれません。

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