第12話 映画館の警備員への取材

映画館の警備員への取材メモ


「夜中に小さな女の子が一人で歩いていたんだよ。

 映画館の廊下を。

 館はとっくに閉まってて、オレしか居ないはずだった。

 迷子かと思って追いかけたんだ。

 その子は確かに映写室に入っていったのに、いくら捜しても見つからなかった。

 出入り口は一つしかないのに、だ。


 酒なんか飲んじゃいないよ。

 ちょっとしか、な。

 それでまあ、幻でも見たのかと思っていたら、今度は大人の女が映写室に入っていったんだ。

 母親が捜しにきたってんならやっぱり迷子が居るんだってんで、その女を追いかけてみたら、その女がまた居ない。

 映写室に入った途端に消えちまった。


 おかしいおかしいと思いつつ、オレが映写室の戸口から出ようとしたところで、今度は真っ青な瞳の男がオレを突き飛ばして映写室に入っていきやがった。

 真っ青な顔じゃねーぜ。真っ青な瞳だ。あの瞳は普通じゃねえ。

 そいつもオレが振り返ったときには消えちまってた。

 いよいよ自分がおかしくなっちまったのかと、さすがのオレも思ったぜ。


 だから次の日のアレで、狂ってるのはオレじゃなくて世界のほうだってわかって、正直、ホッとしたね」

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