第11話 映画にまつわる手紙 3

親愛なるオリヴィアへ


 朝、起きたら、サン・ジェルマンおじいちゃまが居なくなっていたの!

 って、なんだかデジャヴみたいな書き出しだけど、ルイーザも前におんなじことをしてたのよね。

 あの二人、血が繋がってないって本当かしら?


 昨日のおじいちゃまの様子からすると、新聞でも買いに行ったのかなとも思うのよ。

 おじいちゃま、新聞を読みながら片眼鏡モノクルを外して目を押さえて「パトリシアも同じ新聞を見ている」って。

 例の『恐怖の吸血ミイラ』の記事よ。

 一昨日の火災に続いて、また別の映画館で事故? 事件? とにかくそういうのがあったんですって。


 水道管が破裂して、客席に水があふれて、大勢の人が溺死したって――

 そんなこと、ありえるのかしら?

 服が濡れるとか床が水びたしになるぐらいまでならわかるけど――

 これもやっぱり“怪異”なのでしょうね――

 悲惨なことが続いて、この映画の上映中止を求める声が各地で上がっているって新聞に書いてあって。

「そのせいでパトリシアはあせってる」っておじいちゃまは言っていたわ。


 今、時計が十時を指したわ。

 もう少し待って、おじいちゃまが戻ってこないようなら――どうしましょう?

 おじいちゃまに何か良くないことがあったのなら、わたしが行ってどうにかできるとは思えないし――

 でもトラブルって、怪異だけとは限らないわよね?

 まさか交通事故とか!

 迷子になってるなんてことはないとは思うけど――

 ああ、でも、何十年も森の奥で眠ってらしたんだから、今の世の中がわからなくて困っているのかも!

 やっぱり今すぐ捜しに行くわ!


キャロラインより


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