第10話 火災のあとのアデリンの日記

 死ぬかと思った。

 今さらだけど。


 ルイーザは、避難の間は落ち着き払っていた。

 消防隊の前では脅えたフリまでしてみせた。

 だけどホテルの部屋に戻った途端に大声で笑いだした。

 ニャルロタホプ? が近くに居るって。

 もうすぐだって。


 ルイーザをたしなめた。

 火事で亡くなった人もいるのに、その態度は良くない。


 得体の知れない相手をたしなめるなんてするのは怖ろしかった。

 キャロラインが居れば任せられたのに。

 ルイーザは困惑した様子だったけれど、逆上したりはしなかった。


「そういえば、そういうものだったわね」

「こんなところをサン・ジェルマンに見られたら嫌われてしまう」

「やっぱり叔母さまを連れてきて良かったわ」



 あの火事はニャルラロテプ? が起こしたもの。

 別にアタシたちが狙われたわけではないし、もしもそうならそう簡単には逃れられない。

 ニャルララを追っていれば、こういうことはまだまだ起きる。

 らしい。

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