第3話 アーカムからのエアメール 3 − 一枚目の便せん
親愛なるオリヴィアへ
前の手紙で、次の手紙は汽車の中で書くって書いて、投函してから思ったの。
たった一日でそんなに書くようなことが起きるかしら? って。
あったのよ、それが!
それで本当に、この手紙を汽車の中で書いているの!
アデリン叔母さまとルイーザは食堂車に行っているから、今のうちに、ね。
前の手紙を朝一番に投函したあと、ホテルの部屋に戻ったら、ルイーザが机のところに居たの。
ルイーザは、昨日と同じように手紙を出しに行くフリでホテルのフロントを抜けようとして、でもわたしの手紙がなかったから、自分で書こうとしてたのね。
封筒の宛名はパパになってたけれど、便せんは真っ白。
この状況じゃ、パパに心配をかけないような手紙の書きかたなんてできるわけないものね。
わたしだって――
オリヴィア、あなたがオカルト好きで本当に良かったわ。
ほかの友達に送れば正気を疑われてしまうような手紙でも、あなたになら見せられるもの。
ルイーザにはあなたみたいな友達が居なくてかわいそう。
だからってわけじゃないけど、わたし、ルイーザと教会に一緒に行ってあげることにしたの。
あんまり早い時間に押しかけても失礼になるから、ホテルのロビーでコーヒーをいただいて。
「やっぱり紅茶にすれば良かったわね」とか言ってみたりして、これにはルイーザもうなずいて。
アデリン叔母さまはひどくお疲れで、まだ寝ていたいっておっしゃって。
ルイーザと二人だけで先に朝食にして。
わたし、ルイーザとじっくり話そうとしたの。
少しずつでも心を開いてほしくて。
わたしはちゃんとしたお姉ちゃんになろうと努力してみたのよ?
だけど、ね。
ルイーザって本当に変わった子!
どうしてそんなにおじいちゃまに会いたいの? って訊いたら「あなたも大人になればわかるわ」って。
九つも年上の姉に向かってよ?
あー、もう! さっき言われたときは驚いただけだったけど、書いてて思い出したら腹が立ってきちゃったわ!
「まずは恋をしてみることね」って、何よそれ!?
わたしたちは、会ったこともない実の祖父の話をしているのよ!?
書いてたら気持ちが落ち着いたわ。
このまま送っちゃうけど、ごめんね。
冗談を言えるぐらいには仲良くなれたってことなのかしら?
もっと笑ってあげれば良かったのかな?
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