第24話

泣いて

泣いて

泣いて

誰も近付かない場所で

ひたすら泣いて

声を圧し殺して泣いて

大声でわめき泣いて

月が太陽を手まねく前に

ぱたりと落ちた

ぱたりと落ちた意識の中で

何が正しいか問う声が続く

鐘の音と仲間の声が

ぼやけた意識をそのままに

「決断の時だ」と揺さぶる

気だるいルアルは

腹が立って叫ぶ

「何が決断だ!何を選んでも恨むのに!」

仲間は黙る

「選べってんなら、何も選ばねぇ!」

世界は黙る

新たなる命と絶望は

死にゆく命と希望は

心一つ

傾く天秤のように

ゆらゆら揺れる


「まだ寝る!」

駄々っ子が仲間を置いて部屋に戻る

呆然と誰も声を出さずに立っていた

森も不可思議な生き物も

黙っていた


太陽は頷きながら駆け足で去り

月が喜び泣きながらやってきた

静かに月は大地を癒し

静かに森が色を変え

果てない望みを抱く者が

光の梯子に誘われて去った


太陽が月につられて

顔を覗かせたときには

世界は過去の願いの通り

“神”も“人”もいなくなっていた

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