『年越しデリシャス』



――12月31日。



ピ「うぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! うらぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」


――バンッ!! ――バンッ!!


凛「そんなに叩きつけたら、そば生地が可哀想デース……」


隼「ピーラーのやつ、すっげー荒ぶってんな」


ピ「クソがぁぁぁぁぁぁぁ!! クソがぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!!!」


凛「毎年欠かさなかったコミケ全通が夢と散り、自暴自棄になっているようです」


隼「ちゃんと調べなかった自分が悪いんだろ」


凛「いつもは何かあればネトゲ仲間からポケベルに連絡が来ていたそうなんですが、来なかったんですって。ハブられたのもショックだったようです」


隼「ポケベルの一般向けサービスって、今年の9月で終わった気が……。ってか、ケータイ持ってねぇのかよ」


凛「隼人さんは持っているんですか?」


隼「まあ、一応な。親からの連絡がうるせぇから封印してっけど」


凛「五行封印ごぎょうふういん!」


ピ「アータタタタタタタタタタタタタタッ!!!!!!」


ナル「ちょっとピーラー! ラーメンでもうどんでもないんだから! そんな力任せにしないでよ!」


ピ「アタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ!!!!!!」


桃「そういえば……年越しそばはわかるけど、年越しスイーツってどういうことなんだろ……」


世「あのおデブヘンテコ人間が食べたいだけでしょう」


ナル「富士子はグラマー!」


王「今年はみんなと年越しができて嬉しいよ。やっぱり大勢のほうが楽しいね」


凛「いつもは一人なんですか? ぼっちお兄さん」


王「去年は母さんと真理ちゃんとの三人だったかな。僕はまだ父さんと一緒に暮らしてたけど、父さんは仕事の関係でいなかったから、母さんの仮家に泊まって……」


マリ「無理やりおそばを食べさせられて死ぬかと思った……ママ怖い……」


王「あれは……真理ちゃんが栄養失調なのに何も食べようとしなかったから……;;」


凛「へぇ、そうだったんですねぇ。私は安定のおじいちゃんと二人だったなぁ。珍しくおじいちゃんがお酒飲んで、街を徘徊し始めて必死に止めようとしても突き飛ばされて投げ飛ばされて」


桃「それは大変でしたね;;」


熱「俺っちは中学時代、野球部の部員達と歌って踊って警察に補導されたぜい!!」


世「バカはいつでもバカなのですね。想像が容易いですわ」


王「みんな、騒ぎすぎないように気をつけようね。今日だけは夜ふかしをしてもいいって母さんから許可は取ってるけど……」


ピ「アタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ!!!!」


隼「こいつは止められそうにないな」


凛「でも、もう茹でるところまできてますよ。お皿やそばつゆの準備をしましょう!」


ナル「スイーツの用意はできてるわ!」


桃「準備したのは私ですっ!」


世「ちょっと量が多すぎませんこと?」


凛「ナルシーさんがいれば瞬殺」


王「せっかくだから、他のみんなにも食べてもらおうよ。おそばも結構な量があるみたいだから」


ナル「何言ってんのよ! おそばもスイーツも全部富士子のものよ!」


熱「俺っちも食べてくれ富士子すわん!!」


世「バカハルは年が越すまで寝ていなさい!!」


熱「Σグフッ!!」


凛「熱血さん、よいお年を」


マッ「邪魔なので屋上にでも運びますか……お掃除ロボットを再起動させて……」


隼「おい、それはさすがに可哀相だ」


ピ「てめぇら!! そばが茹で上がるぞ!! 冷水を用意しやがれ!!」


その他「「「「「ハイヤッサー!!」」」」」




~・~・~・~・~・~・~・




凛「なんか、予想以上に人が集まりましたね。列が食堂の外まで伸びています」


王「一緒に年を越そうっていうみんなの心が温かいよ」


隼「タダ飯にたかってるだけだろ」


ナル「いやぁぁぁぁぁぁぁ!! 富士子の分がなくなっちゃうぅぅぅぅぅ!!」


世「追加で作っているから大丈夫でしょう」


ピ「アタタタタタタタタタタタタタタタッ!!!!」


桃「モォモモモモモモモモモモモモモモッ!!!!」


凛「二人とも、気合がすご~い」




~・~・~・~・~・~・~・




凛「ふぅ、ようやくさばききりましたね」


ピ「はぁ……はぁ……腕がヤベェ……」


桃「もう小麦粉なんて見たくない……」


王「二人とも、本当にありがとう。これでみんなと幸せな気持ちで年が越せるよ」


桃「か、会長のお役に立てたのなら本望です!!」


ピ「さて、次はおせちの仕込みでもするか……」


隼「おいピーラー、ちょっとは休めよ。あと30分で年が明けるぞ」


ピ「だからこそ急いでやらなきゃいけねぇんだよ!」


凛「ピーラーさんは料理人魂がすごいデース。尊敬しマース」


ピ「うるせぇ!! 黙ってそばでもすすっとけクソが!!」


凛「どして怒鳴るの(泣;」


世「バカは放っておけばいいですわ。早く席にお着きなさい」


凛「このお嬢は一番何もしてないぞ」


ナル「ほら、合唱するわよ! ――大地の恵みとピーラーに感謝を! 心を込めて、いただきます!!」


その他「「「「「いただきます!」」」」」


ズズズズズズズズッ。


ナル「プハ~! やっぱりピーラーの料理は世界一ね!」


桃「す、すごい、一口でお皿が空っぽに……;;」


世「まあ、悪くはないですわね」


王「そばつゆも本格的だね! すごく美味しいよ!」


凛「やっぱり和食が一番デース!」


隼「マッケン、食わねぇのか?」


マッ「僕……麺類食べられないので……」


隼「ああ、そういえばそうだったな」


マリ「真理もおそばは食べたくない! 一緒だね、モルモル!」


マッ「それではこのタルトでも食べていましょうか……」


マリ「うん! 真理が食べさせてあげる! はい、あーん♪」


凛「コラコラコラー!!」


桃「私のタルトでいちゃつかないでください!!」


マッ「嫉妬が醜いですよお二人さん……」


凛「どうせ真理ちゃんに変な薬でも飲ませてるんでしょ! 絶対に許しません! お兄さんからもなんか言ってやってください!」


王「桃子くんも食べたいのなら、僕が食べさせてあげるよ」


桃「Σブッ!!//」


凛「なんだこのクソ兄貴」


世「ほらバカハル、早く起きなさい。麺が伸びてしまいますわよ、このっ」


熱「Σグフッ! ……俺っち幸せぇ~……♪」


ナル「あんたの分は富士子が食べてあげるわ! ジュルジュルジュルジュル」


熱「……極楽浄土ぉぉぉ~……♪」


隼「変なやつばっかだな」


ピ「おい、お前ら! こいつで運試しでもやりな!」


凛「? なんですかこれ。たこ焼き?」


ピ「ロシアンたこ焼きだ!」


隼「すっげー嫌な予感」


ピ「10個あるたこ焼きの中に、一つだけ激辛たこ焼きがある! 当たったやつは来年の運気がドラゴン登りだ!」


桃「当たってラッキーなような最悪なような……;;」


ナル「面白そうじゃない! 当たったらたこ焼き一年分ね!」


凛「新婚さんいらっしゃ~い♪」


世「バカバカしい。やるだけ無駄ですわ」


ナル「そんなこと言って、当たるのが怖いだけでしょ。逃げたければ逃げればいいじゃない」


世「別にそんなことは言っていませんわ! いいでしょう、やって差し上げます!」


熱「俺っちはこういうチャレンジが大好きだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


ピ「全員一つずつ取りな! 地獄のロシアンゲームの始まりだ!! フハハハハ!!」


隼「ピーラーのやつ、やっぱり疲れがキテるな」


マリ「真理、からいのヤダ」


凛「じゃあお姉ちゃんが食べてあげる!」


マリ「はい、あーん♪」


マッ「させません……パクッ」


凛「Σイヤァァァァァァー!!」


ナル「みんなも食べるわよ! せーの!」


マリ以外「「「「「「「「「パクッ」」」」」」」」」


マリ「モルモル、大丈夫!?」


マッ「ええ、問題ないです……」


マリ「お姉ちゃんも大丈夫!?」


凛「うん、精神的にはズタズタだけどね!」


ナル「ちっ、ハズレじゃない!」


桃「よかったぁ……からくない」


世「まあ、当然の結果ですわね」


熱「悔しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


ピ「もうちょっととろみがあったほうがよかったな」


隼「普通だな」


王「普通だね」


凛「……あれ? 当たりは?」


ナル「誰かが嘘をついてるんじゃない!? どっかのエラブスとか!」


世「射抜きますわよこのおデブス!!」


ピ「おかしいな、そんな我慢できるような量じゃないはずだが」


凛「さてはマッケンさんですね!」


マッ「確かに辛味には強いほうですが……僕ではありません……」


隼「ピーラーが入れ忘れたんじゃないのか?」


ピ「そんなはずはない! レイたんに誓って!」


熱「嘘つきピノキオ探しの始まりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


王「…………」


桃「会長? 大丈夫ですか? なんだか顔色が悪いようですが……」


王「え? 大丈夫だよ」


凛「汗びしょりですけど」


王「暑いのかな」


世「目が赤いですわ」


王「夜ふかし中だから」


隼「じゃあその涙はなんだ?」


王「…………」












王「――――(パタッ)」


桃「Σ会長!?!?」


凛「お兄さんが倒れた!!」


隼「ざまあみろだ」


マリ「お兄ちゃあぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」


ピ「ちゃんと飲み込んだことだけは褒めてやろう」


世「水をお持ちしましたわ!」


ナル「余ってるたこ焼きはないの!?」


マッ「弱点をメモメモ……」


熱「会長おめでとぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」





――ゴーン――ゴーン――ゴーン――。





王「……み、みんな、あけましておめでとう……」


凛「あ、うん、おめでとうございます……」


隼「なんかすっきりとしねぇ年明けだな」


世「人生なんてそんなものですわ」


桃「で、でも、会長は10分の1の当たりを引き当てたわけですから! きっと今年は素晴らしい年になりますよ! おめでとうございます!!」


王「うん、ありがとう……今年はもうちょっとしっかりできるといいなぁ……」


凛「私は赤点を取らない年にします!」


隼「言ったな。じゃあ俺は、慎ましく嫌がらせができる年にする」


世「何を言っていますの。今年こそは校内で騒動を起こさせないようにしますわ!」


桃「私も足手まといにならないように、お仕事を頑張ります!!」


マッ「フフフ……今までにない脅威的な発明品を生み出して差し上げますよ……」


マリ「真理も実験のお手伝い頑張るー!」


ピ「とりあえず、料理の腕を三ギアほど上げるか」


ナル「期待してるわよピーラー。富士子が辛口コメントでサポートしてあげるわ!」


熱「俺っちも富士子すわんにサポートされてサポートできる男になるぜぇぇい!!!!」


王「みんな、今年もよろしくね!」


凛「は? お兄さんとは仲良くしませんけど」


隼「反吐が出る」


マッ「マリマリ以外の正生徒会とは永遠に分かち合いません……」


ピ「そば代50万円を払ってもらおうか!!」


ナル「早く追加のスイーツを作りなさいよ!」


桃「なんて勝手な人達……;;」


世「親しくするなどこちらから願い下げですわ!」


熱「みんなでハグハグしようぜぇぇぇぇぇぇぇい!!!!」


マリ「……zzZ……」


王「…………」











王「みんな、今年もよろしくね!」


凛「やり直すな!」



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