再び、取り戻す―(15/26)


「……っ……」


ん……?

あ……寝ちゃってた……。

ヤバいヤバい……こんなところで──って、あれ……?

このやわらかい感触は……布団……?

ああ、そうか……おじいちゃんが運んでくれたのか……。

たまにはいいところもあるじゃないか……ハッハッハ……。




「──って!! どこやねん!!!!」


私は辺りをキョロキョロと見渡しました。


そして、気づきました。

この白い部屋は……もしかしなくても……;;


「──あら、起きたのね。おはよう、凛ちゃん♪」


保健室だぁぁぁっ!!!!!


「Σわぁぁあぁぁぁっ!!!!!!;;」


突然顔の前に現れたママに驚いて、私は大声で叫んでしまいました。


「失礼ね、お化けでも見たような顔しちゃって。でも、それだけ元気なら、もう大丈夫でしょう」


それは……どっちに対してなんだろ……。心? 体?


「これでも心配していたのよ。怒鳴っておいて、今さらかもしれないけど」


「…………。それは……別に気にしていません……」


「あら、そう? そんな簡単に人を許してもいいのかしら」


「だって……迷惑かけた私が悪いんですし……」


人から怒鳴られたことなんてあんまりなかったから、ちょっとビックリしたけど……。


「その様子だと、いっぱい反省したのね。偉い子偉い子♪」


私は頭を撫でられました。


「偉いんですか……?」


「えぇ、素直じゃないとできないもの」


「でも、まだすべてを間違いだと認めたわけではありません……。自分の言動の中には、一つくらい正しいことがあったはずだと思っています」


「それでいいのよ」


「え?」


「周りに注意されたかといって、何もかもが間違いだなんてことはないの。人にはそれぞれの考えがあるのだから、意見の食い違いがあって当然。その中で、〝私はこう思う〟〝私はそう思わない〟っていう自己主張は大切なのよ」


…………。

何が正しくて……何が間違いなのか……。

考え方は人それぞれ……。


「でも……私はみんなから責められていて……」


「それは、凛ちゃんが隠しごとをしていたからでしょう? みんなが誤解をして、理解し合えなかっただけ。ちゃんと話せばわかってくれるわよ、あの子達なら。次からは隠しごとなんてやめましょうね。他人に悩みを打ち明けられるのも強さの一つよ」


強さの種類っていっぱいあるんだなぁ……。

成長って大変だ……。


「ママは、隠しごとってないの?」


「そうね、もうないかしら」


「じゃあ、今いくつ?」


「ひ・み・つ♪」


…………。


人間って難しい……。


「……みんな、謝ったら許してくれるかな……?」


「どうかしら。一人、頑固そうな子がいるから。嘘つきは大っ嫌いなんですって」


それを思い出させないで!

その傷はまだ癒えていない!


「……なんか……急に自信がなくなってきました……」


「頑張って♪ ママは応援してるわよ♪」


ママはハグをしてきました。


ホントに応援してるのかな……;

ちょっと楽しんでないかな……;




「──さて。凛ちゃん、お腹空いてるでしょ? ちょっと遅いけど、お昼ご飯持ってきてあげるわ」


「ありがとうございます。そういえば、おじいちゃんはどこへ?」


「隣で寝てるわよ」


カーテンをめくると、そこには確かにおじいちゃんの姿が。

気持ちよさそうにスヤスヤと寝ています。


「凛ちゃんを運んだ際に腰を痛めたんですって。そっとしておいてあげてね♪」


「は、はい……」


このジジイの体はどうなっているんだか……。

激しく動けても重みには弱いのかなぁ……。





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