核心、現る―(10/19)
※~[盛利桃子]視点~※
「──い、今の話は……すべて本当ですか……!?」
「本当だよ」
「本当に本当ですか!?」
「本当に本当だよ」
「本当に本当に本当ですかっ!?」
「本当に本当に本当だよ」
「……──……」
「……ふふ。そんなに警戒しなくても、絶対に本当だよ。嘘なんか言わない。というより……こんな嘘、恥ずかしくてつけないよ」
う、嘘だ嘘だ嘘だ!!!!
だ、だって……そんなこと……!!
「ごめんね、今までずっと黙っていて。でも、なんとなく……気恥ずかしかったから……」
照れ笑いする会長……。
え、ホントに……!?
ドッキリとかじゃなくて、マジな話……!?
「……え、えっと……。ということはつまり、会長と先生は……」
「もちろん、君が想像してるような関係じゃないよ」
「────」
えっ……えっ……。
そ、そんなっ……!
ということは……全部私の勘違い……!?
私が勝手に勘違いして妄想して落ち込んでただけ……!?
何それっ!!;;
「えっ、あ、あのっ……そのっ……//!!」
うぅぅぅそぉぉぉ///!!!!!!
恥ずかしいぃぃぃぃ////!!!!!!
「ごごごごめんなさいっ!!!! そんなこととは知らず……私ってば……//!!」
「いや、君が謝る必要はないよ。隠していた僕が悪いんだ」
「会長は悪くありませんっ!! 私が……私が全部っ……!!」
私が早とちりしたせいで、会長に恥かかせちゃったんだ……。
もう……穴があったら入りたいっ!!
「本当に、ごめんなさい!!!!」
「あ、頭を上げて桃子くん! 僕は別に怒ってないし、君を責めるつもりもないし、本当に、君のせいじゃないから!」
会長の言葉を聞いて、私は何故か涙が出そうになりました。
私の両肩を掴んで、必死に、だけど優しく説得してくれる会長。
私が泣きそうな顔をしていたからかもしれませんが、それがとても嬉しかったんです。
──そして、そう思った瞬間、私は全身から力が抜けて床にペタリと座り込み、お恥ずかしいことに、わんわんと泣き始めてしまいました。
「も、桃子くん!?」
会長は慌てて私の前にしゃがみ込みました。
「ご、ごめんっ、僕、そんなに強い口調で言ったかな……!?」
「ち、違いますよぉ……!!;; うっうっ……」
どこまでお人好しなんだこの人は!!;;
「なんだかっ……ホッとしたらっ……涙がっ……うっ……」
「えっ……?」
涙が止まらないっ……!;;
会長の前では、絶対に泣いちゃダメだって思ってたのにぃ……!!;;
「ほっとして……安心して……よくわからないけどっ……びっくりしてよくわからないんですバカでごめんなさいわぁぁぁぁん……!!;;」
こんなに泣いたら会長にヒかれちゃうよぉ!!;;
でも止まらないどうしよぉ!!;;
「……──ふふ」
わ、笑われたっ!!
会長に笑われたっ!!
もうやだダメだ誰か助けて!!;;
「そっか、そうなんだ……。ありがとう。なんだか……嬉しいな」
へっ!?
「う、嬉しい……!?」
「うん」
嬉しい……!?
嬉しい……。
嬉しい!?!?
何!?
どういうこと!?
「僕は今まで、〝もっとしっかりしろ〟とか、〝男としてダメなやつだ〟とか、そんなことしか言われたことなかったから……」
だ、誰だそんなことを言ったやつは!!
「女の子にこんなふうに思われたり、しかも泣いてくれるなんて……ちょっと嬉しいんだ」
「えっ//」
そ、そうなんだ……!
そんなこと言われたら、私も嬉しくなっちゃう……//
「僕は、昔から自分に引け目を感じていてね。周りからも、頑張れとか、自信を持てとか、そんなことを言われることが多くて、やっぱり自分はダメな人間なんだなって思ってたんだ」
嘘っ……。
私から見たら、完璧な人なのに……。
「だから、その……君の気持ちは、素直に嬉しいと思うし、そんなふうに僕のことを見ていてくれたことに感謝したい。……ありがとう……//」
「っ……///」
わわわわわわっ///
私にはとてつもなくもったいないお言葉//!!
「君のこと、頼りないとか、迷惑だとか、そんなふうに思ったことは一度もないよ。僕は、君の努力家なところや、頑張っている姿に惹かれて、正生徒会に誘ったんだ」
「えっ……?」
ど、努力家……!?
頑張っている姿……!?
「君なら絶対に、僕の力になってくれると思った。君と一緒なら、この学校に来る人達を変えられると思ったんだ。……実際、僕の思った通りだよ」
「えっ、でも、そんなっ……私……いつも足を引っ張ってるだけで……会長の力になんて……」
絶対なってない!!
何かできたためしがないもん……!
「僕は、君の一生懸命な姿を見ていると元気になれる。僕ももっと頑張らなくちゃって思えるようになるんだ。桃子くんは、一緒にいてくれるだけで僕の力になってくれているんだよ」
「えっ……//」
一緒にいるだけで力になれてる……? 私が……?
ドジでマヌケで大馬鹿者の私が……?
そんなこと言われたの……初めて……。
「だからさっき、君から、正生徒会を辞めるって聞いた時はすごく驚いたし、すごく悲しかったし、すごく寂しいなって思った」
「会長……」
「正直、僕は今、君の気持ちに答えることはできない。僕にはまだ、やらなくちゃいけないことがあるんだ。それを成し遂げるまでは、その……恋愛とかは……できないんだ……」
そ、そうなんだ……。
「でも、その問題を解決することができたら、僕の気持ちもちゃんと伝えるよ。考える時間も含めて、もう少し、時間を与えてほしいんだ」
会長の瞳はとても真剣でした。
私はそれを、自分でも驚くほど真っ直ぐに受け止めることができました。
「君を満足させられる答えが出せるかはわからない……。だけど、待っていてほしい。そして、本当に僕を慕ってくれているのなら、正生徒会を辞めてほしくない。──君には、僕の支えでいてほしいんだ」
「!」
支えでいてほしい……。
会長が……そんなふうに思っていてくれたなんて……。
「……う、嬉しいです……」
会長は、私が思っていたよりも、ずっと、私のこと、見ていてくれてたんだ……。
私は、たとえ会長に恋人がいたとしても……好きな人がいたとしても……逃げちゃいけなかったんだ……。
会長のこと……全然わかってなかった……。
理解不足だったんだ……私……。
「私……中学の頃は、目障りだとか……うるさいとか……そんなことしか言われたことがなかったので、会長に、そんなお優しいお言葉をいただけて、とても嬉しいです」
ごめんなさい……そして、ありがとうございます、会長。
「私、これからも会長のおそばにいたいです。会長のおそばで、自分ができることに全力で取り組みたいです」
「桃子くん……」
そうだ。
私が本当にやりたいことは、この場所にしかない。
会長の隣で、会長のために働きたい。
私にもそれが許されるのなら……選択肢はただ一つ。
「それじゃあ、ここにいてくれるんだね?」
「はい、もちろんです!」
私はここで、正生徒会の副会長として、やるべきことをやり遂げる。
――会長が見てくださっている限り、私に不可能はない!
「良かったぁ……。ありがとう、桃子くん」
「い、いえ、お礼を言うべきなのは私のほうです。本当にありがとうございます。もう辞めるだなんて、絶対に言いません!!」
死んでも言うもんか!!
「ふふ、頼りにしているよ」
「……///」
会長に出会えてよかった。
会長のこと、好きになれてよかった。
きっと、これからもっと会長のことを知って、もっと好きになっていくんだろうな……。
「これで一件落着、だね」
会長はそう言いながら私の手をとって、立ち上がりました。
……こういうの、ズルい//! こんな簡単に手を握っちゃダメですよ//!
「あ、ありがとうございますっ……// ──あの、一つ聞いてもいいですか……?」
「ん? 何かな?」
「会長の〝やらなきゃいけないこと〟って、なんですか?」
まさか会長にそんな壁があるなんて、思ってもみなかった。
一体なんだろう……。
「それはね……――秘密だよ」
「えっ」
秘密……?
生徒達の更生、とかじゃないの?
「実は、僕自身の問題じゃないんだ。僕はただ、お手伝いというか……お節介をしてるだけで……」
お節介……?
「会長のお友達の、ですか?」
「うーん……そうだね……僕は友達だと思っているんだけど、向こうは嫌がってるみたい」
なんと!!
会長がせっかく友好関係を築こうとしているのに、それを振り払う人間がいるというのですかっ!!
信じられません!!
「一応、幼なじみではあるんだけど、もともと僕の家とはライバル関係の御家の人だから……」
幼なじみ……幼なじみ……。
会長の幼なじみといえば……。
──ま、まさか!!
「せ、世麗奈のことですか!?」
「ふふ、違うよ。確かに世麗奈くんも僕の幼なじみだけど、彼女の御家とは共同協定を結んでる仲だから」
「あ、そういえばそうでしたね;;」
危なく、世麗奈に桃子チョップをお見舞いするところだった……;
確か、会長のおウチが大手企業で、世麗奈のおウチがその傘下の準大手企業なんだっけ。
その関係で幼なじみの世麗奈を正生徒会に誘ったって聞いたことがあるけど……。
そういえば、マサハル君と加美さんは会長とどういう関係なんだろ……聞いたことなかったなぁ。
二人も会長の幼なじみ?
そうだったら私だけ仲間外れ……。
「……あ、あの……もしかして、正生徒会のメンバーって、私以外みんな会長の幼なじみなんですか?」
「ううん、幼なじみなのは世麗奈くんだけだよ。あとの二人とは……うーんと……、不思議な出会い方をした仲、かな」
どんな仲だ!!
「不思議な出会い方……ですか?」
「うん。……マサハル君とは、今年の2月14日──バレンタインの日に出会ったんだ」
なんか予想できるかも。
「僕が道を歩いていたら、野球ボール型のチョコボールで一人キャッチボールをしてる、タンクトップ姿のマサハル君を見つけてね」
一人キャッチボール!?
自分で投げて自分で捕るってことだよね!?
しかもチョコで!?
しかも真冬なのにタンクトップで!?
それは予想できなかった!!
てっきり募金箱ならぬ募チョコ箱を持って走り回っていたのかと……!
「その時、マサハル君が僕にこう言ったんだ。〝こうすれば何回もチョコをもらったことになる。うらやましいだろう、少年〟ってね」
いやいや、もらったことにならないし!!
なったとしても、自分からチョコをもらって嬉しい!?
っていうかマサハル君も少年だし!!
「僕は思ったんだ。なんて純粋で画期的な発想なんだろう、って」
いやいやいや!!
そんなこと思っちゃダメですよ!!
私が言うのもなんですが、マサハル君はただバカなだけですから!!
「だから僕は、マサハル君を正生徒会に誘ったんだ。マサハル君なら、この学校に革命を起こしてくれると思ってね」
「そ、そうなんですか……;;」
ごめんなさい、桃子にはよくわかりません……;;
実際、マサハル君ってただ騒がしいだけですし……。
「では、加美さんは……?」
「あぁ、彼女はね……」
会長はそれだけ言うと、しばらく沈黙しました。
……?
どうしたんだろ……言いづらいことなのかな?
それとも忘れちゃったとか……?
「……加美くんはね……」
──ガタガタンッ!!
「「!?」」
な、何!?
いやっ、今のは机の引き出しが開く音……!
ということは……!
「……参上……」
「加美さん!?」
まさかずっと中にいたの!?
話聞かれてた!?
「加美くん! どうしたんだい!? 今は相談室にいる時間じゃ……!」
えっ!?
そんな時間あったんですか!?
桃子は初耳なんですけど!
「……助太刀……依頼……」
「「助太刀依頼?」」
加美さんはてちてちとこちらに歩み寄ってくると、会長の腰の辺りにギュッと抱き着きました。
∑ちょ、何してるんですか!!
ズルいですよぉ!!
「一体何があったんだい……?」
「……敵……来る……」
「「敵??」」
「……参……弐……壱…………」
∑ドカァァァーンッッ!!!!!!
「「──!?」」
扉が吹っ飛んできた!!!?!!!?
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