魚群、現る―(8/13)
※~[盛利桃子]視点~※
会長が後ろから声をかけると、彼らは心底驚いたように肩を震わせました。
っていうか、この人達が本当にあの問題児達!?
全員サングラスかけてて顔わからないし!
しかもオタクとロリータと自衛官ってどんな組み合わせよ!
……でもどこかで見た気が……。
「ホワット? Mr.イマーダ? ミー達、知ラナーイ」
「「「「知ラナーイ」」」」
しらばっくれてるし!
「嘘はダメだよ今田くん。君の格好を見れば一目瞭然だ」
どう見てもさっきショーに出てた人だよね。
しかも胸のところに〝1-B 今田〟って書いてあるし。
「知ラナーイ知ラナーイ」
「シラを切ってもダメだよ」
「……チッ。退散するぞ野郎ども!!」
「「「「アイアイサー!!」」」」
あっ! 逃げた!!
「ま、待つんだ今田くん!!」
会長も走り出した!
追いかけないと!
「わたくしに任せなさい!」
世麗奈がスカートの下から弓を取り出した!
何故そんなところに!?
「……そちらがその気なら……」
うおっ!?
自衛官がロケットランチャー構えた!!
に、偽物……だよね!?
「いざ……発射」
バフォォォォォーンッ!!!!!!
「「「「え」」」」
ドカァァァァァァァァーンッ!!!!!!
──きゃあぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?!!!?
「うっ、げほっげほっ……!」
「な、なんですのこれはっ……」
「ヒャッホォォーッ!!!! 祭りだぜ祭りだぜい!!!!」
「……チッ……」
え、煙幕!?
視界が真っ白にっ……ゴホッ;;
「今のうちに逃げろ!!」
「「「「アイアイサー!!」」」」
あっ、逃げられちゃう!!
「ま、待ちなさい!」
こんなのただの煙なんだから、怖がる必要なんかない!
私は白煙の中に飛び込みました。
そして走って……走って……走って……走って……走って……走って……。
「──って、長っ!!」
この煙どこまで広がってるの!?
また迷子状態になっちゃったじゃん!!
ありえない!!;;
※~[凛・トロピカル]視点~※
相変わらずマッケンさんはスゴいなぁ。
もうなんか、神みたい。
「──富士子もう走れない~!!」
「出口まであともうちょっとだ!!」
外に出ればこっちのもんですね。
タクシーぶっ飛ばして帰りましょう。
「水が欲しい!! 喉渇いた!!」
それもそのはず。
ナルシーさん汗ボトボトですし、いい感じに痩せてきていますよ。
「後でヒマラヤの水飲ませてやるからもう少し頑張りやがれ!!」
そんなものこの辺に売っているのか?
「レ、レアじゃない!! 富士子頑張るわ!!」
はい、頑張って~。
まあ、ナルシーさんは頑張らなくてもなんとかなりそうですがね。
あの大分後ろのほうで泣きそうになりながらヨロヨロとついてきているピーラーさんを励ましたほうがいいかと。
「──いよし、キタッ! この角を曲がれば……!」
あー疲れた。
なんでこんなところに来てまでヘトヘトにならなきゃいけないんだ。
なんの罰だ。
どんな罰だ。
さっさとここから外に出て──。
「……ン?」
「はぁ……はぁ……。あ、あれ?」
「ぜぇ……ぜぇ……。ちょ、ちょっとカス……」
「ひぃ……ふぅ……。え、えっ……?」
……あのー……。
行き止まりなんですけど?
「…………。────。……てへっ、間違えちゃった☆」
てへっ、じゃねぇよ!
「ちょっとどうすんのよ!! 追いつかれちゃうじゃない!!」
「てへぺろ☆」
可愛くないから!
「……あ。あれを見てください……」
ん?
あれは……お化け屋敷? って書いてあるようですが……。
「〝ジョーズのお化け屋敷〟ですって」
「よし! とりあえずあそこに逃げ込むぞ!!」
「な、なんだと!?」
あ、来た来たピーラーさん。
「なんだピーラー、お化けが怖いのか?」
「ぼ、僕は暗い場所が嫌いだ!!;;」
マッケンさんとは正反対ですね。
「そっかそっか。でも行くからな」
「∑酷い!!」
まあ、正生徒会に捕まったら面倒ですし、今は我慢して行きましょうね。
「うっうっ……なんで僕がこんな目に……;;」
ハッハッハ、今さらですよ。
※~[盛利桃子]視点~※
しばらくうろうろしていたら、やがて白煙が落ち着いて視界が明るくなってきました。
「桃子くんっ、大丈夫かい!?」
会長が駆け寄ってきてくださいました。
「は、はいっ、私は大丈夫です! 申し訳ありません……彼らを見失ってしまいました……」
私ってなんでいつもこう空回りなんだろ……結果的に迷惑しかかけてないよ……。
「いや、君が無事でよかったよ」
「会長……」
くおぉぉ~……!
優しさが逆に痛いってこういうことなんだ;
「あの問題児……やってくれますわね!」
「まさかバズーカ砲を撃ってくるなんてね;」
あんなものどこで手に入れたんだろ……。
「この先は分かれ道ですが……どちらへ向かったのでしょうか」
「んー……どっちだろう……?」
二手に分かれて捜したほうがいいんじゃないかな?
「──ちょいと待つんだ!!」
ぅお、マサハル君が瞳をランランと輝かせてる。
「どうしたんだいマサハル君?」
「ここは俺っちに任せな!!」
そう言うと、マサハル君は床に這いつくばって、そこに落ちていた雫のようなものに顔を近づけました。
……な、何してるんだろ……。
「ちょ、ちょっとバカハル! 汚ならしいですわ!!」
「な、ななな何をしているんだいマサハル君!;;」
世麗奈と会長が慌ててマサハル君を引っ張り起こします。
とうとう本格的におかしくなっちゃったのかな?;
「──やっぱりそうだ!! この匂いはフジコさんのものだ!!☆」
「「「えっ!?」」」
フジコさん!? って、誰!?
「フジコさんって……いつも今田くんと一緒にいるあのフジコさんのことかい?」
「そうだぜい!! あの麗しの富士子さんだぜい!!」
フジコ……フジコ……フジコ……。
──あっ、あの普段着がロリータファッションの人!?
ナルシーって呼ばれてたからそっちで覚えてた!
う、麗しい人……だっけ?;
「何故そんなことがわかりますの?」
「俺っちにはわかる!! この汗の匂いは富士子さんのものだ!! なんていとおしいんだぁぁぁぁ!!」
キャーッ!!
マサハル君っ!!
こんなところで床にすりつくのはやめてぇ!!
「こ、これがあの富士子さんの汗、ということは……」
あ、汗はこの先にも点々と落ちているから……。
「これをたどっていけば、今田くん達の行き先がわかるじゃないか!」
や、やりましたね会長!!
「ありがとうマサハル君! ……マサハル君?」
「し、幸せだぁ~!!♪」
すりすりすり。
「「「…………;;」」」
ごめんねマサハル君。
マサハル君のこと、ちょっと気持ち悪いって思っちゃった;;
「……会長、他人のフリですわ」
「う、うん; マサハル君、僕達は先に行くからね;」
「はぁうぅ~!!♪」
私達は、マサハル君を置いて走り出しました。
途中で振り返ると、マサハル君は汗を自分の体にすり込みながらもちゃんとついてきています。
こ、怖い……;;
マサハル君に好かれると、あんなことされちゃうんだ……;;
「……あ、ここは……;;」
しばらく走り、私達はある看板の前で立ち止まりました。
その看板には、〝ジョーズのお化け屋敷〟と書いてありました。
ここが噂のラブラブ屋敷……!
「どうやら、この中に逃げ込んだようですわね」
「ち、違うんじゃないかな?;」
「違いませんわ。その証拠に、汗が入口から中へ続いています」
今マサハル君が回収しちゃったけどね。
──ってマサハル君っ!!
そのまま中に入っちゃった!!
「あー……そ、そっか……;;」
会長、やっぱり苦手なんだお化け屋敷……。
「わたくし達も行きますわよ」
「み、みんなは、こういうの大丈夫なのかい?;」
「私は……多分大丈夫です」
「本物のお化けなど出るわけありませんわ」
「────」
加美さん、ちゃんとついてきてたんだ……。
真っ黒姿なのに今日も存在感が無い。
「……チッ……」
わわっ、ごめんなさい!!
「みんな強いんだね;;」
「あなたが怖がりなだけですわ」
「ぼ、僕は怖がってなんかいないよ!;; ただ、わざわざ中に入らなくても、出口で待っていればいいんじゃないかなぁと思って……」
「閉館まで中で身を潜めているかもしれませんわ。待つだけ時間の無駄です」
「じゃ、じゃあ、念のために僕は出口で見張りを……」
「男なら飛び込んで捕まえるくらいの度胸はないのですか!! ──行きますわよ!!」
「あっ、あっ、ちょっと待ってよ世麗奈くん!!;;」
会長は世麗奈にズルズルと引きずられながら中へ入っていきました。
……そういえば、世麗奈と会長は昔からの知り合いなんだっけ。
いいなぁ……世麗奈は私の知らない会長も知ってるんだ……。
今度いろいろ聞いてみよっと。
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