魚群、現る―(6/13)


※~[盛利桃子]視点~※



どうしよどうしよどうしよう!!

会長達とはぐれちゃった!!;

やっぱり夏休みって人が多い!

さっきまでタコとウツボの戦い観てたのに、いま目の前にラッコしかいないんですけど!!

ここはどこ!?

会長はどこ!?

せっかくのプライベートランデブーが!!


「うぅ……泣きそう……;;」


こうなったら恥を捨てて叫びますか!!


「会長~!!!! 会長~!!!!」


届け!! ラブビート!!


「会長~!!!! 会長~!!!!;;」


寂しいです!!;;

悲しいです!!;;

誰か助けてください!!!!


「──痛っ!!」


誰かに足踏まれたっ!!

これで何回目ですか!!


「ちょっとあんた邪魔よ!! お腹が空いて急いでるのに!!」


「す、すみません……;」


なんで踏まれた側が謝らなきゃいけないの!?

理不尽だ!!


──って……!


「怖っ!!」


なに今の人!?

サングラスにゴスロリファッションってどういう組み合わせ!?

鼻息荒いし汗くさいし体格お相撲さんみたいだったし!!

中身オッサン!?


「変な人……」


変態かもしれない……気をつけないと;


「──あれはラッコ11号ではないか!!」


∑わっ、またスゴい格好の人がいる!

サングラスにオタクファッションって何!?

イカツいオタク!?


「ララララッコラッコ~ラッコラッコ~♪」


バクマン。のラッコ11号の歌を歌いながら去っていった……ああいう人でも水族館に来るんだ……。


「──ラッコのあの動き……勉強になります……」


パシャパシャパシャパシャパシャパシャ。


∑えっ!?

今度はサングラス自衛官!?

むちゃくちゃ写真撮ってるし!


「なかなかキレがありますね……あなどれません……」


パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ。


フラッシュたきすぎ!!

まぶしいっ迷惑っ!! っていうか禁止ですよ!!


「貝割りではなく……頭割りに活用できそうです……フッフッフ」


えっ、今なんか怖いこと言わなかった!?

最近の自衛隊ってあんな人がいるの!?






※~[凛・トロピカル]視点~※



「うわ、ナルシーさんがたくさん……」


よく見たらハリセンボンも混ざってない? このフグの水槽。

そういう仕様なのだろうか。

ま、いいけど。


「えーっと……ここでだいたい半分くらいか」


水族館って意外と広いんだなぁ。

歩くのがめんどくさくなってきたんですけど。

もうイルカショーのところまで行こうかな。

50分前行動ということで。


「……うん、そうしよう」


適当なところに座って待っていよっか。

私はスタッフの方にイルカショーの場所を訊ねて向かうことにしました。


──その途中。


「……あ」


正生徒会の方々を発見しました。

皆さん私服だ。


バレないだろうと思ってすぐ傍まで接近すると、ぼそぼそと会話が聞こえてきました。


「ど、どうしよう! もし桃子くんが誘拐なんてされていたら!;」


誘拐?


「少しはぐれただけですわ。それほど焦らずとも」


はぐれたんだ。


「だが油断テンテキだぜ!! 桃っちゃんはああ見えて抜けたところがあるからな!!」


熱血さんには言われたくないだろう。


「……タイテキ……」


黒ずくめ!?

今日はカラスの仮装ですか守護神さん!?

小さくて視界に入ってなかった!


「最悪の事態も考えるべきだよ! 迷子センターへ行ってアナウンスで呼び出してもらおう!」


ハハハ、迷子だって。


「そんなことをしたら桃子が辱しめを受けますわ」


「僕は桃子くんが心配だ!」


「俺っちも心配だ!!!!」


「……同文……」


1対3か。

大切に思われているんですね副会長さん。

カスさん達だったら絶対無視ですよ。


「…………。もう、仕方ありませんわね。どうなっても知りませんわよ」


「ありがとう世麗奈くん!」


「ありがとう世麗奈っち!!!!」


「……チッ……」


何故舌打ち!?

世麗奈っちの〝ち〟!?


「じゃあ急いで迷子センターに行こう! みんな、はぐれないように気をつけて!」


「おぅ! 任せとけ!!」


「走りますの!?」


「……チッ……」


いや違うな!!






※~[盛利桃子]視点~※



──ピンポンパンポーン──。


あ、館内放送だ。


『本日もKOO-Z水族館にお越しいただき、誠にありがとうございます。ご来館のお客様に、迷子のお知らせをいたします』


迷子かぁ。

こんなに混んでたら家族と離れ離れになっても仕方ないよね。

可哀想だなぁ。


『上下ピンクの洋服をお召しで、髪を二つに結った、16歳くらいの女の子を捜しております。お見かけされた方は、サービスカウンターまでお願いいたします』


…………。


上下ピンクで、


髪を二つに結ってて、


16歳くらいの、


女の子……?




∑──って私!?!?




『──桃子くん!! どこにいるんだ!!』


『お、お客様!?』


『誘拐なんてされていないかい!? 大丈夫かい!?』


『お客様っ困りますっ!!;;』


『俺っちも心配してるぜ桃っちゃん!!』


『僕は心配し過ぎて心臓が痛くて痛くて痛くて痛くて!!』


『俺っちも痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて!!』


『あなた達、おやめなさいっ!!』


────。


な、何してるんですか皆さん!?

そんなことしたら……!!


「──ねぇ、いま放送で言ってたのってあの子じゃない?」


「あ、ホントだ! ピンクの二つ結び!」


「桃っちゃんですって。可愛い名前ね」


「ピーチのお姉ちゃんだぁ~!」


「でも16歳で迷子って……クスッ」


──っ/////!!!


私は無我夢中で走り出しました。


どうして迷子扱いなんですか//!!

普通の呼び出しでもよかったじゃないですか//!!

女の子って歳でもないですし//!!


いやぁぁぁもぉぉぉぉ////!!!!!






※~[凛・トロピカル]視点~※



マジで迷子放送してるし。

ピーチさんは案外、コメディの素材ですね。

私は結構好きです。

会長さん達について迷子センターまで来ちゃいましたし、あなたの登場を今か今かと待ちわびています。


「来ないじゃないか桃子くん!! やっぱり誘拐されたんだっ!!」


「そんなすぐには来ませんわよ」


「桃っちゅあぁぁぁぁん!!!!!!」


「────」


さっきから思っていたんですが、明らかに約一名私に気づいている人がいますね。

視線が痛いです。

でも絶対に目を合わせてはいけません。

いろんな意味でアウトです。


「──あっ!!!!」


会長さんが声を上げました。


見ると、こちらに全力疾走で向かってくる人影があります。


わぁ、本当に上下ピンクだぁ~。


「~~っ////!!!!」


声にならない呻き声を上げながら駆け寄ってきたピーチさんは、会計の江良世麗奈さんの肩を掴んで叫びました。


「私が何をしたって言うんですかぁぁぁ!!!! めちゃくちゃ恥ずかしかったじゃないですかぁぁぁ///!!!!」


そりゃまあ、そうでしょうね。


「わ、わたくしは止めましたのよ。あなたを館内放送で呼び出そうと提案したのは、会長ですわ」


「ほぇっ!!!?」


ほぇって……。


「桃子くん!! 無事でよかったよ!! 僕は誘拐されたんじゃないかと思ってとても心配していたんだ!!」


会長さんはピーチさんの手をギュギュッと握りしめました。


「キャーッ////!!!!」


ピーチさんは顔を真っ赤にしました。


「俺っちも心配したぜ桃っちゅわん!!!!」


熱血さんはピーチさんの体をギュギュッとハグしました。


「イヤーッ!!!!!;;;」


ピーチさんは顔を真っ青にしました。


「本当に無事でよかった……次からははぐれないように、みんな気をつけようね」


「おうよ!!」


「承知の上です」


「は、はい……;;」


「────」


だからいつまでこっち見てるんですか守護神様。


……危なくなりそうなので、私はそろそろ退散しましょうかね。


いい具合に時間も経ちましたし。


ほれほれ、すたこらさっさ~。

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