魚群、現る―(5/13)


※~[盛利桃子]視点~※



「ここですわね」


水族館に到着しました。

私達は受付で学生証を提示します。

学割がつくらしいです。


「5人でお願いします」


「はい、ありがとうございます。えー……∑ハ、ハイ☆ハイテンション高校!?」


えっ、どうしてそんなに驚くんですか、お姉さん。


「どうかされましたか?」


「あ、いえ……大変申し訳ありませんが……H☆H高校の方のご来場は……お断りしておりまして;;」


∑はっ!?

どういう意味!?


「何故ですの!?」


「詳細は明かせませんが、そういう決まりがございまして……」


何それ!?

まさか、H☆H高校は変な子集団だから!?

私達は普通なのに!!


「……あの、僕達はH☆H高校の正生徒会役員でして」


「せ、正生徒会……?」


「はい」


会長がそう微笑むと、受付のお姉さんは会長の顔と学生証を何度も見比べ、驚いたように目を見開きました。

目玉が飛び出そうになってる……。


「し、失礼いたしましたっ!; ようこそいらっしゃいました! 5名様ですねっ、ありがとうございます!!」


えっ!?

なになに!?

〝正生徒会〟で何かが伝わったの!?

急に空気が変わったんですけど!


「こちらがパンフレットになります! 只今、夏期限定のお化け屋敷を実施しておりますので、よろしければお立ち寄りくださいませ!」


本当にやってるんだ!

か、かかか会長にお近づきできるチャンス//!!


「ありがとうございます。暑いなかご苦労様です」


「いえいえっ、ご来場ありがとうございます! どうぞお楽しみください!」


いくらなんでもちょっとリキが入り過ぎてる気が……。

こっちがお客だからかな?


「それじゃあ、行こうか」


会長に誘導されて、私達は入場します。

その時、ふと看板を見ました。


耳で聞いただけだから文字ではどう表すのかわかりませんでしたが、そこには〝KOO-Z水族館〟と書いてありました。


コージ……コオジ……コオージ……コ・オージ……コ・王子……!?


い、いや……いやいやっ、そんなまさか……まさか、ね;;






※~[凛・トロピカル]視点~※



「い、今……正生徒会のやつらが入っていったわ……はぁ……はぁ……;;」


「なんとか追いつけたか……ひぃ……ふぅ……;;」


「ロボビタンAがほしいぜ……んちゃ……ほよよ……;;」


「うっ……ゲホッゲホッ……ゴホッ……あびろべっ……」


マッケンさんが一番危ない!

カスさんが猛ダッシュなんかさせるからですよ!


「へへへ……バスより早く着いてやったぜ……ざまあ見ろあのクソ運転手……!!」


ざまあ見てるのは確実に私達のほうですよ。

全員死にそうじゃないですか。


「カスっ……ジュース奢ってよ……!」


「いや、そうしたいのはやまやまなんだが……この辺自販機なくね?」


んー……確かに見当たらないですね。


「えぇ~信じらんない!! じゃあさっさと中に入りましょ! 中なら飲食できるとこくらいあるわ!」


「そうだな。水も大量にあるし」


ん?

あなたはどこの水のことを言っているんだ?


「じゃあトロ、さっさと行ってこい」


そう言うと、カスさんは私に一万円札を押しつけてきました。


「……ドコヘ?」


「はぁ!? 受付に決まってんだろうが! チケットねぇと入れねぇだろうが!」


いや、お前が行けよ。


「ゴ自分デド~ゾ」


「一番マシな格好のお前が行かねぇと怪しまれるっつーの!」


わかってるんなら着替えなさいな。


「……仕方ナイデ~ス」


面倒ごとは全部私に押しつけるつもりか。

お釣りはもらいますからね。


私はしぶしぶと受付の列に並びました。


「──いらっしゃいませ」


「あ、大人5人でお願いします」


「只今学割を実施しておりますが、学生様ではございませんか?」


「あ、学生です。学生証を見せればいいですか?」


「はい、お願いいたします」


私は懐から財布を取り出し、中から学生証を引き抜いて提示しました。

私の分だけでいいのかな?


「じゃあ、これで」


「ありがとうございます。……──って!! ま、またH☆H高校!?」


えっ!?

なんですか!?


「どうかしましたか……?」


「も、申し訳ございません……当館は、H☆H高校の方のご来場をお断りしておりまして……」


は?

どゆこと?


「詳細は明かせませんが、そういう規則がございまして……」


いやいや、意味不明なんですが。


「ちなみに、生徒会の方ではありませんよね?」


生徒会?

まさか生徒会だったら入れるの?

一応、極悪生徒会とかほざいていますが。


「……ちょっと出直してきます」


私は学生証を取り返し、注目度100%になっているカスさん達のもとへ戻りました。

そして、受付のお姉さんに言われたことを愚痴ります。


「……──ッテユーコトナンデスガ~」


「はぁ!? 何よそれっ、意味わかんない!!」


「差別!! 差別じゃねぇか!!」


「許せないです……」


「……んー……」


あれ?

一番激怒しそうなカスさんが静かだ。


「っていうかトロちゃん!! なんで学生証見せたのよ!! 見せなかったらバレなかったのに!!」


「イヤ~……学割ノ方ガ、安クナルノデ~」


「カスのお金なんだから節制なんかしなくてもいいじゃない!!」


「ン~……ケチナ性分ナンデスヨ~」


「このおケチ!! おケッチトロちゃん!!」


なんかその言葉の響きヤダ!


「──ちっ、しゃーねぇなー……」


あ、カスさんが動き出した。

受付のほうへ向かっている!

武力行使か!?

それともワイロか!?


さあ!

どうやって突破するんだ!


テケテケテケ。ガサガサ。


あ、水中メガネ取った。


ペチャクチャペチャクチャ。


∑ペチャクチャペチャクチャ!?


ん? お姉さんの目玉が飛び出した。


ペチャクチャペチャクチャ。


ペ、ペチャクチャペチャクチャ!!;;


慌ててる……。


ペチャクチャペチャクチャ。


ペチャクチャペチャクチャ!!!!


ガサガサ。テケテケテケ。


あ、戻ってきた。


「おしっ! いくぜ野郎ども!!」


え!? チケット持ってる!!


「ちょっとカス! どうしたのよそれ!」


「どうしたって……ちょっと脅したらくれた」


脅した!?

何やってんだよアンタ!


「さすが極悪生徒会会長!! 僕は一生ついていきやす!!」


「ブッハッハ!!」


ピーラーさんはすぐに破門されそう。


カスさんとピーラーさんが雄叫びを上げている時、私はふと、水族館の看板を見上げました。

KOO-Zって……こーぜっと?

あ、よく見たら〝コージ〟ってフリガナついてる。

コージ水族館かぁ。

KOO-Z……コージ……コウジ……。


コウジといえば……いまd……いやいやいや、まさか、ね……。




――まあ、何はともあれ、無事に館内へ潜入できました。


そういえば、水族館って来たの初めてかも……。


「──うぅ~マンボ!!」


「わぁ~! いきなりでっかい水槽のお出ましね!」


「初っぱなから切り札を出してくるとはな」


「写真に収めておきましょう……」


カメもいるサメもいる……戦闘とか起こらないのかな。


「よし、ここからはしばらく自由行動だ。11時になったらイルカショーの会場前に集合すること!」


「オッケ~。じゃあお小遣いちょうだい♪」


「しゃあねぇなぁ」


お小遣いって……親子じゃあるまいし。

とか思いつつ私ももらってしまった。

みんな一万円ずつ渡されたけど、私はさっきの一万円返してなかったから所持金二万円になっちゃった☆

これでしばらくは飢えに苦しまずにいける……フッフッフ。


「わかってるとは思うが、正生徒会のやつらには絶対に見つかるなよ! 目立つ行動は慎め!」


あなたが一番心配です。

っていうか、正生徒会の邪魔をするって言ってたけど、忘れてない?


「あと、全員これをつけとけ!」


といって渡されたのは、タモさんサングラス。


「それがあれば気づかれることはまずないだろう。何があっても外すな!」


「「「うっす!!」」」


「それじゃあ、解散!!」


「「「アイアイサー!!」」」


皆さん散り散りになりました。

そんな大声出して……っていうかいつからアイアイサーが定着したんだろ。

なんか使いどころがおかしいんですよね。


ま、とりあえずその辺を見て回りましょうか。


グラサン、装☆着!

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