狂愛人間、現る―(18/21)
※~[凛・トロピカル]視点~※
なんとなく流れで五階から飛び降りてみましたが、意外とイケました。
不思議だこと。
そしてやっぱりピーラーさん達の亡骸が消えていました。
不思議だこと。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
∑うぉ! 上から桃が降ってきた!
スカートの中が丸見えです。
やわらかピンクです。
「──っと!! わぁもう死ぬかと思ったっ!!」
前から思っていましたが、ピーチさんって芸人並みのリアクションしますね。
「敵、コッチニ~向カッテ~来テイマ~ス」
「怖っ! あの人の顔、怖っ!!」
ゴリラのようなアントニオ猪木ですからね。
「サァ~副会長サン、イッテラッシャイマ~セ~」
「∑えっ! なんで私が!?」
さっき会長さんの前で超やる気出してたじゃないですか。
「オ手並ミィ、拝見デ~ス」
「わ、私、大したことできませんよ!?」
え?
仮にも正生徒会なのに?
「格闘技ノ経験ハ~?」
「あるような、ないような……」
「タマニ、殺人蹴リ~トカヤリマスヨネ~?」
「あ、あれは……ゲームの技を真似してるだけです!」
なんちゅう人だ。
「デハ~、独学デチョットハ出来ルンデスネ~」
「ま、丸腰じゃ正生徒会は務まらないもん! そういうあなたは何かできるんですか!?」
「ウーン……マア……道場ニ通ッテイマシタカラ~少シナラOK~」
「あなたのほうが本格的じゃないですか!!」
空手のような柔道のような合気道のようなよくわからない、おじいちゃんの我流格闘技ですけどね。
「私ハ~最近鈍ッテイルノデ~無理無理~」
「そんなこと言わないで一緒に──」
∑ドカァァァァーーンッッ!!!!!!!!
「「──!!」」
無視してたらエリザベスさんが怒りの鉄槌を!
やっぱり闘わなきゃダメなんですね。
「……仕方ナイデ~ス。無難ニ挟ミ撃チ~シマショ~」
そう言って私は、エリザベスさんの右側へ向かって走りました。
「∑えっ、ちょっと!!」
うろたえながらも、ピーチさんは左側へ向かいます。
「ブルァァアアァァァ!!!!!!!!」
エリザベスさんが私に向かって五寸釘を数本投げつけてきました。
華麗に避けました。
動体視力バンザイ。
「ヘイヘ~イ、ノロマゴリラ~」
「ヴヴヴヴヴヴヴヴッ!?!?!?!?」
怖っ!!
白目むいたっ!!
こっちに来る来るっ!!
「こんのクソアマァァァ!!!!!!」
エリザベスさんは木槌を降り下ろしてきました。
私は両手で受け止めます。
「重っ……」
どんだけ馬鹿力……。
「副会長サーン!」
「あっ、はい!!」
エリザベスさんの動きが止まっているうちに、ピーチさんが背後から襲いかかります。
「殺人蹴りぃぃ!!!!」
「∑んごっ!!!!」
ピーチさんの足はエリザベスさんの首にクリンヒットし、エリザベスさんはブッ飛びました。
いくら相手が相手でも、首を狙うなんて危ないですね。
生け捕りにするつもりはないのでしょうか。
「や、やった!!」
ピーチさんは嬉しそうにガッツポーズを取っています。
「喜ブノハ、マダデ~ス」
私は持っていた木槌を遠くへ放り投げました。オルァァァッ!!
エリザベスさんはまだ意識があります。
抑え込むには、気絶させるか捕縛しなければならないのですが、あいにく縄は持ち合わせておりません。
さて、どうしましょうか。
手刀で延髄を狙うか……でもミスしたら死んじゃうな。
鳩尾狙うか……でもエリザベスさんの胸板めちゃくちゃ硬そう。
「シュビドゥバァァァッ!!!!!!」
おーおー元気だな。
∑って、オロナミンC飲んでる!!
「オフコォォォース!!!!!!」
何がモチロンだ!!
「そんなっ! 私の蹴りが効いていないなんてっ!!」
回復しちゃいましたね。
あ、ピーチさんをロックオンした!
「1・2・3・ダァァァーー!!!!!」
独りでに気合いを入れ直してる!
ていうかそれマジで猪木だから!
「こここここ来ないで!!!!」
「貴様からブッ潰すっ!!」
ピーチさん危ない!!
早く逃げるんだ!!
「来るな来るな来るなっ!!!!」
「ゲヘヘヘヘっ!!!!」
「やめて来ないで!!!」
「ぶファファファファファ!!!!」
「イヤァァァァァ!!!!!!」
もうダメだっ!!
……………………あ。
「∑えっ!? きゃあぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ピーチさんが消えた!!
いや、穴に落ちた!!
「きゃあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁ……──ゲフッ!!」
…………。
死んじゃったかな?
「アハハハハハハァ!!!!!! もう逃げられないわ!! トドメよ!!」
エリザベスさん飛び込む気だ!!
踏み潰す気だ!!
「げほっげほっ……」
ヤバい、なんとかしないと……!
「ヘイ! コノゲスゴリラ!! カモンカモン!!」
「お前は後回しだ下僕その1!!」
下僕じゃぬぇ!!
ちっ、悪口にも冷静に対応してきやがるっ。
「アンタの命なんかドブ水よりマズイだろうけどいただいてあげるわ!! 怒りの……ダイビィィィィング!!!!」
∑跳んだ!!
もう間に合わない!!
どうする自分!! どうする自分!!!?
よし……一か八か……。
あれを叫ぶしかない!!
さあ!! 叫ぼう!! 叫ぶんだ!!
ピーチさんのハートに届くように!!
「――副会長サン!! ソイツヲ仕留メレバ!! 会長サンガ!! デートシテクレマスヨォォォ!!!!」
「∑!!!?」
さあ!!
どうなる!!
どうなるピーチさん!!
「──はぁぁぁああぁぁぁぁっ!!!!!!!! 殺人アッパァァァァァァァーッ!!!!!!」
「∑ブコォッ!!!?」
∑キターッ!!!!
期待通りキターッ!!!!
エリザベスさんメッチャ打ち上げられてるぅぅぅ!!!!!!
「ユワ、ショォォォーッ!!!!」
ピーチさんが地上に戻ってきた!
でもなんか変だぞ!
「ア……ア……ア……」
エリザベスさんまだ空中にいる!
白目向いてる!
これは予想以上の効果だ!
「……ン?」
もしかして、エリザベスさんはあの猪木アゴが弱点なのでは……?
もしそうだとしたら……。
「副会長サン! トドメノ一発、一緒ニ殺リマショー!」
「∑えっ、桃子神拳の出番は!?」
桃子神拳!?
なんですかそれ!?
北斗神拳の間違いでは!?
「エ、エット…………最終兵器ヲ使ウマデモ、ナイト思イマース!」
意外すぎることをおっしゃるから返す言葉が遅れたじゃないですか!
「それもそうね!! ──それじゃあ、龍の如くいくわよぉ!!」
「ハ、ハーイ!!」
何かのスイッチが入ったんですね、わかります。
私はこぶしに氣を込め、エリザベスさんを待ち構えました。
おじいちゃんに、暴力は断じて許さん! 大切な者を守る時以外はな! とか言われてきましたが、これは一体誰を守るこぶしなのでしょうか……。
──ま、どうでもいっか♪
いきますっ!!!!
「「ダブル・昇龍ケェェェンッ!!!!」」
「∑ンガァッッ──!!!!」
再び打ち上げられたエリザベスさんは、ぐんぐんぐんぐん上昇していきます。
ただ人に好意を抱いているだけなのに、何故殴り飛ばされなければならないのか。
ちょっと可哀想な気もします。
でも、殺人鬼になってしまったのだから仕方がありません。
えぇ、仕方がないのです……。
彼女は風にも煽られ、ぐんぐんぐんぐん……ぐんぐんぐんぐ、ん?
「∑あべしっ!」
「「……あ」」
まあ、なんということでしょう。
思いっきり吹き飛ばされたエリザベスさんは、何故か奇跡的な偶然でなんともイイ具合に校舎の屋上に墜落してしまったのです。
「「…………」」
「くんくんくん……∑ハッ!! こ、これは今田くんの匂い!! すぐ近くから漂ってきているわ!! そこにいるのね愛しのダーリン!! いま私の手でお人形にしてあげる!! フハハハハハァ!! 待っていなさい今ダーリィィィーンッ!!!!」
エリザベスさんは、そのまま校舎内へ走り去っていきました。
「「──オーマイガーッ!!!!!!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます