狂愛人間、現る―(14/21)


その後、なんとか話し合いで収束させた私達は、一歩前進して作戦を練ることにしました。


「筆跡鑑定の結果が出ました……この殺人予告を送りつけてきたのは、E組のグレートバリアリーフ・エンジェル・エリザベスさんで間違いありません……」


筆跡鑑定とか、もうなんでもありなんですねマッケンさんは。


「グレートバリアリーフ……昨日のあの子か!」


そっちで憶えていたんですね会長さん。


「あいつ超ムカつくわよね!! 超腹立つ!!」


食事を終えたナルシーさんが来てから、会議室の空気はムンムンしています。


「ちなみに彼女は今……グラウンド南の木の上で睡眠をとっています……体力温存中のようです……」


ゴリラだ。


「で、どうすんだよ。どーせ俺は囮なんだろ」


「そうだよ。君には校舎五階の正生徒会室にいてもらう。彼女がグラウンドにいるのなら、まず最初の二人が校舎の前で対峙する形を取ろう」


私達が考えた作戦とは、単純に、敵に向けて二人ずつ出陣させ、捕縛にレッツ☆チャレンジしようというものです。

正生徒会から一人、極悪生徒会(仮)から一人ずつ選出します。


「彼女は、嗅覚でカスさんの居場所を突き止めることができます……。前線がしっかりしていなければすぐにカスさんが殺られてしまいます……」


犬ゴリラなんですね、あの人は。


「全員で一気にかかればいいんじゃねーの?」


ピーラーさん、何故か先ほどと違って発言がテキトーです。


「人は多ければいいというものじゃないよ。多いだけじゃ連帯性が乱れる」


「じゃあ誰が一番危険な初っぱに出陣するんだよ」


「──俺っちが行ってやろうじゃないか!!」


そう申し出たのは、熱血書記さんです。


「一発目にビシバシとやってやるぜぃ!!」


「頼もしいよマサハル君!!」


会長さんは感極まっています。


「富士子も行く! 最初に行っておかないと、お菓子の恨みを晴らすチャンスがなくなるかもしれないし!」


さすがお菓子の恨み!

それがあればナルシーさんに怖いものはないんですね!


「いいぜいいぜナルシー! 俺は嬉しいぜヒャッハァー!!」


カスさんははしゃいでいます。


「一組目は決まりだね。じゃあ、二組目はどうしようか」


「わたくしが参りますわ。あんなじゃじゃ馬、一矢で仕留めてみせます」


おぉ、初心者並みのお嬢様がよくそんなこと言えましたねぇ。


「本当かい!? ありがとう世麗奈くん!」


会長さんは、会計さんの手を強く握ってブンブン振りました。


「!」


それを傍目で見ていた正生徒会副会長のピーチさんは、顔を真っ赤にして勢いよく手を挙げます。


「私!! 三番手で行きます!!」


「桃子くんも行ってくれるのかい!? 嬉しいよ!」


会長さんがピーチさんの手を握りしめると、彼女は頭がのぼせたようにフラついてその場に倒れました。


「も、桃子くん!?!?」


「……し、幸せー……////」


よかったですねピーチさん。いやリンゴさん。


「こっちの二番と三番はどーすんの?」


ナルシーさんはパピプペポテトチップスをバリバリ食しながら聞きます。


「ピーラーサン、偉ソーナコト、言ッテタンデスカラ~、オ先ニド~ゾ」


「∑え゙っ」


私はなるべく後がいいですし。

そしていざというときは逃げるんだ☆


「じゃあこっちの二番手はピーラーな」


「ま、待て! 早まるな!!」


「男なら文句言うな!」


カスさんに怒鳴られ、ピーラーさんはしょぼくれます。


「ぼ、僕は……好きで男に生まれたわけじゃないのにっ……!」


なら厚化粧して出直してきなさい。


「決まったね! 一組目はマサハル君と富士子さん、二組目は世麗奈くんとチンピラ君、三組目は桃子くんと凛・トロピカル君」


チンピラじゃなくてキンピラですよ、マッピラですよ。

あと、私だけフルネームで呼ぶのやめてください。

なんか恥ずかしいです。


「頑張ろうぜふじやん!!」


「ふじやんって誰よ!!」


「足手まといにはならないでくださいまし」


「そ、それはこっちの台詞だ!!」


「私はあなたなんか認めないわ!!」


「左様デスカ~」


ちなみにマッケンさんは後方支援が確定しています。

守護神さんはもとより参戦させないようです(会長さん曰く)。

今この場にもいません。


「……ソーイエバ、会長サンノ~役目ハ?」


「僕は今田くんと一緒にいる。最後の砦を務めさせてもらうよ」


「最後ノ砦?」


「つまり、言葉攻めさ!」


「「「「「「「「!」」」」」」」」


会長さん、それは言葉のチョイス・ミスです。


「最終手段はもうそれしかないと思うんだ。言葉で相手の心をかき乱す!」


「「「「「「「「…………」」」」」」」」


どうも、言葉のチョイ・スミスです。


「会長である僕が適任だと思うんだ! そう思わないかい!?」


ピーチさんが追加で鼻血噴いてる。


というか、それ以前に順番が逆です。


フツー武力行使が後です。


「あー……思う、思うかもな……」


カスさんは呆れたような顔で見ています。


「というわけだよ! 僕達が一丸となって今田くんの命を守る! 守るんだ!!」


「「「「「「「「おー……」」」」」」」」


なんか、一気に意気消沈しちゃった。


──はてさて、どうなることやら……。

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