第25話 三人でご飯(1)

 約束の土曜日。私と姉はファミレスへ向かう。

 ファミレスは種類も豊富で値段も安くて、限度はあるが長居しても大丈夫。要はコスパがいいとの事でそこに決まった。

「お姉ちゃん、なんかいつもよりメイク濃くない?」

「そんなことないわよ。気のせい」

 やだやだ、とぼやきながら歩いている。

「そういえば今日は香水つけてないの?」

「つけてないよ」

「へぇ、意外」

「だってご飯食べるのに匂いキツかったら食欲なくすでしょ。ご飯じゃなくてデートってなったら香水をつけて大人の魅力ってやつを教えてあげられたんだけどねぇ」

 彼女は髪の毛を指に絡めながら言った。

「あー……はい……」

「ま、香水なんて付けなくたって私の魅力を発揮出来るけどね」

「そうですか……」

 彼女は須川とは反対で喋らせると駄目なタイプだ。黙っていると可愛いのに。昔から姉の事は尊敬している。明るくて周りにはいつも友達がいる。周囲に流されず、寧ろそれらを引っ張っていく人だ。

「お姉ちゃんってさ」

「うん?」

「喋ると残念だよね」

「失礼ね! 何よ残念って」

「だって可愛いのに喋ると……ね」

「あのねぇ、私が他の人にまでこんな風に喋ってると思う?」

「え、違うの?」

 そう言うと絢は深いため息をついた。

「そんなわけないじゃない。そうしたらお姉ちゃん、ただの痛い人じゃん」

「だから心配してたんだよ」

「あんたは余計な心配しなくていいの。お姉ちゃんの心配より自分の心配をしなさい。部活に勉強に……って来年受験か。受験にそれに聡君と――」

「大丈夫! もう分かったから! お母さんと同じ事言わないで」

「本当に分かってるの? ……って着いたみたいね。意外と早かったわね」

 私からしたらもの凄く長く感じた。

「聡君はもう来てるの?」

「ちょっと待ってね。今聞いてみる」

 彼に連絡をするすぐに返って来た。

「聡君、中にいるって」

「本当? 早く中に入ろうか」


 店内へ入り須川が座っている席へ向かう。

「お待たせ」

「おう」

「初めまして! 紗綾の姉の絢って言います。よろしくね」

 絢はここぞとばかりにウィンクする。そんなことをされるのは妹として恥ずかしいのでやめて欲しい。

「あ、えっと、彼氏の須川です」

 彼はペコッと会釈した。

「聡君、お腹空いてるでしょ? 遠慮しないで食べて。今日は私の奢りだから」

「そんな。悪いですし大丈夫です」

 彼はそう言って手を振っている。

「いいのいいの。バイト代入ったしね。紗綾も遠慮しなくて良いからね」

「本当? お姉ちゃんありがとう」

「すみません。ありがとうございます」

 それから一通りオーダーしてしばらく待つ事に。隣で彼が緊張しているのが伝わってくる。

「そんなに緊張しないでね。紗綾なんかより優しいから」

「はい」

「ちょっと、私なんかよりって何よ。私の方が優しいっての」

「えぇ。うっそだあ」

 絢は不敵な笑みを浮かべる。

「まあけど、聡君の前だし言わないでおいてあげるけど」

「なにそれ。あ、聡君、私変な事したりしてないからね」

 念の為須川に釘を刺しておく。

「お、おう」

「二人には色々聞きたい事があるんだけど、まずは馴れ初めでも聞こうかな。聡君から告ったの?」

「いえ、告白したのは紗綾の方からです」

「え、マジ!? へぇ、紗綾がねぇ」

 ふてぶてしい笑顔がこちらを向いている。

「ま、まぁね」

「聡君のどこを好きになったの?」

「あ、それ俺も聞いてないです」

「本当? じゃあこの際だから全部聞いちゃおうか」

「嫌だよ。恥ずかしいし……」

「何でよ。お姉ちゃんしかいないでしょ」

 その一番聞かれたくない人が目の前にいるのだが。とは言っても罰ゲームで告白しました――なんてそんな馬鹿正直に言えるはずがない。須川は少し期待しているような様子だ。

「えっと……かっこいいなって思ったから……」

「うんうん。他には?」

「え? うーん……最初はこれぐらいかな。付き合うまで話したことなかったし」

「なるほどね。あ、ごめんね。ちょっと電話出るね」

 もしもし、と絢は早足で店の外へ出ていった。

「ごめんね、うるさいでしょ」

「いやいや、そんなことないよ。お姉さんいい人じゃん」

「えぇ、そう?」

「面白くて美人で……俺もあんな姉ちゃんほしかったな」

 絢さんか――と虚ろな目で呟く。

「ふーん。聡君、お姉ちゃんみたいな人がタイプなんだ」

「べ、別にそんなんじゃねぇよ!」

 彼は慌てて手を振っている。

「お姉ちゃんモテるみたいだし気になるのもしょうがないよ」

「やっぱりそうだよな……ってだからちげぇって」

「ごめんね、お待たせ」

 電話を終えた絢が戻ってきた。

「あ、おかえり」

「で、なに話してたの?」

「聡君が、お姉ちゃんみたいな人いいなって話」

 おい、と横から入る。

「あら嬉しい! 私も聡君みたいな人好きよ」

「えぇ!?」

 彼驚いて顔を赤くしている。

「だから何かあったら相談してね」

「は、はい……」

 何よ聡君デレデレしちゃって。私にあんな顔したことないのに。

「あんまり私達で盛り上がると紗綾がヤキモチ妬いちゃうし、この辺にしとこうか」

「そうですね。ま、そんな妬くなって」 

 はっはっは、とポンポンと私の肩を叩く。

「お、ご飯きたね。時間もあるしゆっくり食べよう」

 頼んだ料理が運ばれてきて私達は食事をした。

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